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小島寛明の「規制とテクノロジー」 ― 第11回

任意で渡した企業、渡さなかった企業:

警察「顧客情報出して」応じていいのはどこまで?

2019年02月25日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 警察当局が、ポイントカードを展開する3社に対して、裁判所の令状なしで顧客の情報を提供するよう要請していたことが明らかになった。

 2019年2月20日に開かれた衆議院の予算委員会の質疑でのことだ。

 最大手で「Tカード」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は、令状なしで「任意」の情報提供に応じていた。

 「任意」の情報提供は、強制力のない、警察から民間企業への「お願いベース」の要請だ。このため、残る2社については具体名が明らかではないが、任意の情報提供には応じていなかったという。

●警察はなぜ、ポイントカードの情報がほしいのか

 ポイントカードをめぐる予算委員会でのやりとりは、政府側の答弁者が山本順三・国家公安委員長で、質問者が野党・立憲民主党の山尾志桜里氏だった。

 「CCCについては、要請をかけた事実はございます」

 山本委員長はこう答弁し、CCC側に対して任意での情報提供を要請した事実を認めている。

 警察はなぜポイントカードの情報がほしいのだろうか。捜査機関の気持ちになって考えてみたい。

 CCCが展開するTSUTAYAといえばDVDのレンタル店や書店を展開している。

 何らかの事件で捜査線上に浮かんだ人物を捜査員は追うのだが、やはり相手のことは可能な限り知りたいと考えるだろう。

 しかし捜査機関はさまざまな情報をあらゆる手段で集めるが個人の心の中までは見えない。署までご同行願って事情を聴くしかないが、多くの場合、重要な人物になればなるほど、捜査がかなり進まない限り直接的な接触はできない。

 そこで登場するのがTカードだろう。具体的にはCCCに対して警察が「捜査関係事項照会書」という文書を送り、任意の情報提供を依頼する。

 「いまどきDVDなんて借りません」という声も聞こえてきそうだが、DVDのレンタル履歴や、書店の購入履歴も、その人物の心の内や、考え方を知るうえでは重要な資料になりうる。

●警察はどんな情報を取れるのか

 Tカードは、日本の人口の5割を超える6788万人(2018年9月末時点)の会員基盤を誇る。昨今だれかの位置情報を得る方法はたくさんありそうだが、捜査線上に浮かんだ人物が事件発生の45分前に現場から500メートル離れた店で買い物をした際にポイントカードを使ったという情報も、役に立つことはあるだろう。

 捜査機関は、今後どういう形で証拠として使えるか分からないから、関係がありそうな情報は集められるだけ集めておこう、という習性ではある。

 CCCがウェブサイトで公開している個人情報の取り扱いについての説明では、次のような質疑がある。

質問:「お店でTカードを提示してお買いものをした情報はCCCに提供されているのですか」

回答:「参加企業の店舗でTカードを提示してお買いものをされた情報は、CCCへ提供されます。その際に提供される情報は、T会員番号、日時、店名、金額、ポイント数、商品コードなどとなり、お客さま個人を特定できる情報は含まれていません」(一部を省略した)

 となると、CCCが警察に提供していた情報から、殺人事件の前の日にスーパーで包丁を買ったという情報も取れるのかもしれない。

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