この連載は江渡浩一郎、きゅんくん、青木俊介が週替わりでそれぞれの領域について語っていく。今回は江渡浩一郎が、Webについての独自解説を掲載する。
すでに公開されているように、2016年度のチューリング賞はティム・バーナーズ・リー(以下TBL)が受賞した。言うまでなく、TBLはWorld Wide Web(以下Web)を作り上げたことでよく知られている。
今回、TBLのチューチング賞受賞にあたって、情報処理学会から依頼を受け特別解説「信念の受賞 ~Tim Berners-Lee氏のチューリング賞受賞に寄せて~」を執筆した。TBLの受賞に関する記事はたくさん出ているが、私の記事はその中でも異色のものだろう。
私は、1991年のWebの誕生から、NCSA Mosaicの登場によって爆発的に普及する過程を含めてリアルタイムで体験している。その体験から感じたことを元に、考えを解説として書いている。ぜひ読んでほしい。
本記事は、そこに書き足りなかったことを書いており、その補遺にあたる。
まずは、チューリング賞の説明だが、これは簡単には「情報科学のノーベル賞」だ。ノーベル賞は、物理学賞、化学賞、生理学・医学賞などの分野にわかれているが、情報科学に対応する賞はない。数学にはフィールズ賞という同じく「数学のノーベル賞」と呼ばれる賞がある。
要するに、情報科学分野における最高の賞ということだ。チューリング賞は、情報理論といった基礎的な理論に関わる受賞が多い。応用分野における受賞はほとんどなかった。あるとしたら、2003年のアラン・ケイの受賞だろう。今回、TBLがWebを作り上げた業績で受賞したことは、大変珍しい受賞だといえる。
Webはなにがすごかったのか。前述の解説では、Webのすごいところは「特別に普通」であるところだと表現している。
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