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問題は、雨より虫だ。異常気象で農家の経験則が通じなくなっている

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雨が続くと、虫の予定も狂う

 2026年は台風の発生が相次ぎ、関東では記録的な長雨となった。東京都心では8月27日から10月2日まで37日連続で雨を観測し、1886年の統計開始以来の最長記録を更新。9月の日照時間も平年の4割程度に落ち込んでいる。

 雨が続けば、農作物への影響も大きい。日照不足や畑が水浸しになるだけでなく、気温や湿度、降雨のパターンが変われば、病気や害虫が発生する時期も変わる。

 農家はこれまで、季節や天候、過去の経験をもとに防除のタイミングを判断してきた。JAも地域ごとに防除暦をつくり、農薬を散布する時期を指導している。しかし、季節外れの高温や長雨などが増えると、例年通りのスケジュールだけでは判断しにくくなる。

虫が出てからなら、AIで調べられる

 病害虫が発生した後なら、スマホで撮影してGoogleレンズのような画像検索にかければ、虫や葉の異変について手掛かりを得られる。

 農業向けにはさらに専門的なサービスがある。日本農薬のスマートフォンアプリ「レイミー」は、写真から病害、害虫、雑草をAIで判別し、生態や防除方法、有効な農薬まで表示する。地域や作物に応じたAI予察情報も提供している。

日本農薬の「レイミー」アプリ。写真からAIで診断し、農薬を提案してくれる

 こうしたサービスによって、「何の病害虫が出ているのか」は以前より調べやすくなった。そこで次に重要になるのが、被害が広がる前に、いつ防除するかを判断することだ。

 実際の農作業は、肥料や農薬、作業員、農機の手配も含め、あらかじめ組んだ年間の予定に沿って進めることが多い。病害虫が出れば追加で対処するが、天候や発生状況に合わせて、その都度予定を組み替えるのは簡単ではない。気象条件が大きく変わるほど、「例年この時期だから」という防除では外れるリスクも高くなる。

「出る前」を予測して、農薬をまく

 名古屋市のアグリテックスタートアップ、株式会社ミライ菜園が開発する「TENRYO」は、病害虫が発生する前のリスクを予測する防除DXアプリだ。

 各地の気象情報と病害虫の発生履歴をAIで解析し、約1週間先までの発生リスクを予測する。リスクが高まればアラートを出し、農家はそれを参考に農薬を散布するタイミングを決められる。固定された防除暦を、実際の発生リスクに合わせて補正するイメージだ。2026年8月時点では、全国の気象情報と70万点以上の病害虫発生履歴を学習に利用している。

 ポイントは、虫を見つけてから対処するのではなく、発生しそうな時期を読んで先回りすること。早すぎる散布を繰り返せば農薬の量や作業の負担が増える。遅ければ被害が広がる。発生リスクに合わせて防除のタイミングを調整できれば、農薬の無駄打ちや対応の遅れを減らせる。

TENRYOのAI予報画面(左)と病害虫発生共有マップ(右:サンプル)

JAの営農指導にもAI予報

 JAの営農指導にも導入されている。JA豊橋では2023年から実証を重ね、2025年にはすべての営農指導員がTENRYOを使った防除指導を開始した。従来、害虫を実際に捕獲して発生状況を調べていたフェロモントラップによる調査も、AI予測へ全面的に切り替えた。関連作業時間は約9割削減したとしている。

 ミライ菜園によると、TENRYOは現在、愛知、愛媛、群馬、北海道、京都のJAや農業法人で導入、または試験運用されている。天候はどうにもできないが、こうした予測技術が広がり、農家の負担を減らしながら、農業生産を少しでも安定させる助けになってほしい。

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