サッカーとテクノロジー〔FIFAワールドカップ2026〕 第11回
デジタル化の徹底で観客のストレスゼロへ、FIFAワールドカップ2026 現地レポート
6.4万人の熱狂をAIが導く FIFA W杯全スタジアム「デジタルツイン」化が変えた観戦体験
2026年07月18日 09時00分更新
デジタルチケットのおかげで入場はスムーズ
スタジアムに入場し、自分の座席に着くまでに、チケットアプリは合計3回使うことになった。会場全体の入場ゲートを通過するとき、個別に指定された入場ゲートを通過するとき、そして自分の座席があるブロックに入るときの3回だ。
チケットチェックでは、スマホに表示したQRコードを読み取ってもらうことも、iPhoneのウォレットに保存してNFCでタッチすることもできた。とてもスムーズな体験だった。
チケットチェックがスムーズなせいもあるのか、試合開始2時間前の会場は、すでに多くの観客が来場していたものの混雑は少なく、人の流れは順調だった。こうした入場オペレーションの状況は、前回記事で紹介した「トーナメント・オペレーションセンター(TOC)」がリモートで監視していたはずだ(関連記事:史上最大のワールドカップを支える“オフィスワーク”? TCCとTOCのテクノロジー)。
“超VIP席”用の特別デジタルサービス「Digital Seatbelt」とは?
最後のチケットチェックを終えて、客席に入ると、空気が一気に変わった。視界が一気に開けて、鮮やかな緑の芝生が目に飛び込んでくる。そのピッチを挟んで、こちら側もあちら側も人、人、人。空はまだ明るい時間だったが、強い照明が当たっているせいか、目の前の光景は幻想的ですらあった。
ピッチでは、選手たちが試合前のウォーミングアップを始めていた。それを近くで見ようと、観客席の前方にはスマホを手にしたサポーターたちが集まっている。アメリカのスタジアムらしく、観客を盛り上げるためのBGMが大音量で流れている。
さて、このマイアミ・スタジアムに限らず、今回はすべての会場で「VVIP(Very VIP、超VIP)」と呼ばれるVIP向けの特別シートが用意されている(筆者はもちろん一般席だが……)。
このVVIPシートには「Digital Seatbelt」と呼ばれるデバイスが据え付けられており、特別な観戦体験ができるという。2025年のFIFAクラブワールドカップで一部会場に試験導入され、今大会では全スタジアムのVVIP席に展開された。
ワールドカップというビッグイベントだけあって、1試合につき100人を超えるVVIPが訪れる。誰がどの席に座るのかは、あらかじめFIFAのゲストサービスチームで決めるのだが、ゲストリストが直前まで変わり続けるため、間違えないように案内するのが難しい。
そこでレノボの研究部門が開発したのが、Lenovo Tab K11タブレットをシートの背もたれに取り付けるための専用マウントだった。このタブレットにVVIPの名前を表示させることで、FIFAチームは座席の割り当てをリアルタイムに更新することができる。
また試合中は、VVIP自身で座席にある大型タブレットを操作して、好きなアングルのライブ映像やリプレイ映像を見たり、AIによる分析データを確認したりすることもきるという。
Digital Seatbeltのイメージ。背もたれのアームにはVIPの名前を表示する小型タブレットが、またVVIP自身で操作できる大型タブレットもある(出典:Lenovo)
技術的にはさほど難しそうではないが、意外と大変なのが「現場での運用」だという。タブレットをバッテリ駆動させるため、試合が終わるごとに回収して充電し、次の試合開始に間に合うタイミングで戻す必要がある。戻すのが遅くなるとVVIPの観戦の邪魔になり、早すぎれば試合途中でバッテリ切れになるおそれがある。そのため、運用には細かな気配りが必要だという。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事
-
第10回
ITトピック
史上最大のワールドカップを支える“オフィスワーク”? TCCとTOCのテクノロジー -
第9回
ITトピック
ワールドカップ・優勝トロフィーの数奇な運命 ―FIFAサッカーミュージアム訪問記 -
第8回
ITトピック
選手そっくり! サッカーW杯2026で初登場の3Dアバター、その舞台裏 -
第7回
ITトピック
ワールドカップ2026で実現 より速く、正確なオフサイド判定テクノロジーの裏側 -
第6回
ITトピック
番狂わせ続きのサッカーW杯、その背景に“AI参謀”あり? すべての参加チームが使う「FIFA AI Pro」とは -
第5回
ITトピック
なぜサッカーは国境を越えるのか? スイス・FIFA本部を歩いて考えた -
第4回
ITトピック
FIFAの地下倉庫に潜入! ワールドカップの舞台裏を支える1.7万台のITデバイスはスイスから届く -
第3回
ITトピック
VARへの不信はなぜ消えないのか? 新登場の“審判カメラ映像”の価値を考える -
第2回
ITトピック
サッカーとテクノロジーの16年 ― それはランパードの“幻のゴール”から始まった -
第1回
ITトピック
熱戦支えるテックの進化にも注目! 「史上最大」FIFAワールドカップがまもなく開幕 - この連載の一覧へ













