このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

サッカーとテクノロジー〔FIFAワールドカップ2026〕 第10回

30以上に及ぶ大会運営アプリのインフラ監視から、3カ国/16スタジアムの運営支援まで

史上最大のワールドカップを支える“オフィスワーク”? TCCとTOCのテクノロジー

2026年07月11日 09時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

(写真提供:FIFA)

 いよいよベスト8のチームが決まり、決勝トーナメントも佳境に入ったFIFAワールドカップ2026。3カ国共同開催という“史上最大のワールドカップ”の運営の中心となる“司令塔”と言えるのが、フロリダ州マイアミにある2つの拠点、「テクノロジー・コマンドセンター(TCC)」と「トーナメント・オペレーションセンター(TOC)」である。

 ワールドカップ開催中の7月、このTCCとTOCを訪問する機会を得たのでレポートしよう。

W杯の全テクノロジーを管理する「テクノロジー・コマンドセンター(TCC)」

 今年のワールドカップは、3カ国/16スタジアムで104試合が行われる史上最大規模の大会だ(関連記事:熱戦支えるテックの進化にも注目! 「史上最大」FIFAワールドカップがまもなく開幕)。もちろん、その運営は大きなチャレンジである。TCCとTOCは、大会全体を陰で支える重要な拠点であり、同大会のテクノロジーとオペレーションにおけるバックボーンと言える。

マイアミ郊外にある、TCCとTOCが入る建物のロビー。内部は厳しい取材制限があり、筆者のカメラやスマートフォンが使えたのはここまでだった

 まずはTCCの見学からだ。ここは、大会に関わるテクノロジーすべてを管理する場所である。60人体制の技術スタッフが、3交代制でTCCの運用にあたる。ちなみに、大会全体では1200~1300人の技術スタッフが携わっており、スイスのFIFA本部から遠隔で技術支援をするチームもある。

 TCCの役割について、FIFAでテクノロジー部門を統括するナチョ・フレスコ(Nacho Fresco)氏は、「センサーを内蔵するピッチ上のボールから、スタジアム内外のカメラ、大会運営に使う各種アプリケーション、サイバーセキュリティ、データの流れまで、あらゆるテクノロジーを管理している」と説明する。

 TCCに入り、まず目にとまるのが14面の大きなスクリーンだ。それぞれに役割がある。たとえば3つのスクリーンを使って表示されているのは、3カ国/16スタジアムをつなぐネットワークの状況。使用中の帯域幅や使用率、VLANなどの状態をリアルタイムで把握し、異常があれば即座に対応する。別の画面では、各スタジアムのカメラ映像を、テキサス州ダラスにある国際放送センター(IBC)に送信する「放送コントリビューションネットワーク(BCN)」のモニタリングを行っている。

 TCCの立ち上げや運用を担うステファン・ティマーマンス(Stefan Timmermans)氏によると、BCNの回線は複数のキャリアを使って冗長化されており、1つの経路が落ちても放送映像が止まらない仕組みを構築している。「この種のネットワークは、ファイブナイン(稼働率99.999%)の信頼性が求められる、とても重要なインフラだ」(フレスコ氏)。

 われわれ一般視聴者が見る中継映像と、TCC内部で使う内部確認用の中継映像には違いがあるという。通常のテレビ放送の場合、現地の様子が20~50秒ほど遅れて視聴者に届く。これに対して、TCCの映像は、Lenovoと共同開発した仕組みで、その遅延を2秒程度まで短縮しているという。

TCCのモニターでは、システムの稼働状況やセキュリティの状況がひとまとめに監視できる(写真提供:FIFA)

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事

アクセスランキング

  1. 1位

    ITトピック

    Webサイトのデータベースを狙う攻撃が顕著に増加/情シス担当の半数が転職意向、背後にある変化/AI業務活用、実態は“AIオペレーター”?、ほか

  2. 2位

    デジタル

    ヤマハのRTX1300/RTX840に新ファームウェア、DNSスヌーピングとHTTPS対応で利便性向上

  3. 3位

    デジタル

    ヤマハのWi-Fi 7対応「WLX333」「WLX232」がグッドデザイン賞を受賞

  4. 4位

    sponsored

    国内バックボーンNWを大幅増強したColt 東京-大阪間の低遅延サービスも提供へ

  5. 5位

    TECH

    「手作業での脆弱性管理はやがて破綻する」 日本IBMが示すフロンティアAI時代の自律型セキュリティ

  6. 6位

    ITトピック

    AI利用が多い技術者ほど「自分でコードを書ける能力」も重視/世界の6割近くが「技術進歩が生活を破壊」と回答、ほか

  7. 7位

    sponsored

    kintoneデータを最強のAIコンテキストに MCP活用で変わるAIエージェント開発とデータアクセスレイヤーの重要性

  8. 8位

    sponsored

    販促企画のための“AI壁打ち”で、7万人の会員情報が外部に流出… どうやったら防げた?

  9. 9位

    デジタル

    kintoneで変わったのは業務ではなく「当たり前」―― 超保守的な営業部隊がDX先進組織になるまで

  10. 10位

    ITトピック

    “月面でAI実験”から“スマート養蜂”まで、HPEが技術の広がりを披露

集計期間:
2026年10月14日~2026年10月20日
  • 角川アスキー総合研究所