テスターではeMarkerが反応しない、このケーブルは……
と思ったら、相性があったのはテスターの方だった
さて、ここからがガジェット趣味の醍醐味である。国内メーカーが企画し、大手ECが太鼓判を押して販売する製品ゆえ、そのスペックに嘘偽りがあるはずはない……そう確信しつつも、筆者はお約束のルーティンとして、手元にあった安価なUSBテスター「TREEDIX」にケーブルを接続し、eMarker(電力制御チップ)の診断をしてみた。
すると画面には冷酷にも「Please Connect TypeC Cable」の文字が表示されたまま、チップをまったく感知しないではないか。基本機能テストでも、240W給電に必須である「PD 3.1」の項目に無情な赤×が点灯した。
「これは一大事、世紀のスペック表記詐欺か!?」と色めき立った筆者は、すぐさまITPROTECHのサポート窓口へと確認の連絡を入れた。当然ながら、サポート側からは「社内の測定環境において、240W(PD3.1)の正常な通電とeMarkerの稼働は検証済みです」との至極真っ当な回答が返ってきた。そこで念のために、先方が検証に使用しているテスターの型番を尋ねてみたところ、幸いにもガジェット仲間の友人が所有しているものと同機種であることが判明した。
さっそくその友人のところにケーブルを持ち込み、業界定番の高度なテスター「POWER-Z」に繋いでもらったところ、画面には鮮やかに「50V 5A 240W EPR」の文字と、 Injoinic製eMarkerチップ「IP2133」の存在を示す完璧なホワイト判定が浮き上がったのである。つまり、原因は筆者の手元にあったテスター側の相性、あるいは読み取りプロトコルの限界による“冤罪”だったわけだ。
今回の一件で、ケーブルの実力を疑う前に、それを測定する道具の真贋をも問わねばならないという、現代ガジェット界の奥深い教訓をダイレクトに叩き込まれることとなった。筆者も今回のドタバタを経て、結局はこの友人が使っていたものと同じ高度なUSBテスターをその場で「戦略的衝動買い」する羽目になってしまったので、その詳細なレビューはいずれあらためて本連載にてご紹介したいと考えている。
さらに混迷深めるUSBケーブルワールド だからこそ楽しめる
今や地球上に流通するUSBケーブルのほぼ100%が中国国内で製造されており、そしてそれらを厳密にテストするためのデジタル機器もまた、その大半が中華製という歪められない現実がある。あらゆるテクノロジーデバイスの生態系が特定のエリアに依存しきったこの地球上で、製品の「真偽」や「正確性」をどう捉え、どう検証していくべきか。
それは、公的な機関の誰もが絶対的なお墨付きを与えられない令和の現代において、我々ユーザーにとってもきわめて重要かつ、最高にエキサイティングな問題だ。お気に入りのキャラクターポーチに、この「実は潔白だった」愛おしい極太やわらかケーブルたちを放り込みながら、筆者は今日もこの混沌としたデジタルワールドの波打ち際を楽しんでいる。

今回の衝動買い
・アイテム:ITPROTECH「ハイグレードUSBケーブル4本セット」
・購入:JustMyShop
・価格:3299円
T教授
日本IBMでThinkPadのブランド戦略や製品企画を担当。国立大芸術文化学部教授に転職するも1年で迷走。現在はパートタイマーで、熱中小学校 用務員。「他力創発」をエンジンとする「Thinking Power Project」の商品企画員であり、衝動買いの達人。
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