このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

Mr.ウォーカー玉置泰紀が厳選! おすすめスポット/アイテムベスト5 第8回

【決定版・東京の百低山&超低山ベスト5】こんなに低いのに、“山”!? 都会のド真ん中から離島まで、GWに行きたい東京の低山巡りスポット

2026年05月03日 12時00分更新

文● 玉置泰紀(エリアLOVEウォーカー総編集長)

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

東京都内で歩いてみたい!
「百低山&超低山」おすすめランキング

第5位:江戸の奇祭と放送の聖地 港区「愛宕山(標高25.7m)」

 23区内で最も高い「天然の山」である。人工の山を含めれば後述する箱根山(44.6m)に譲るが、自然の地形としては23区最高峰。ビジネス街のド真ん中にありながら江戸の空気が漂う不思議な空間だ。

【歴史・風俗】

 徳川家康の命で創建された愛宕神社が鎮座する。江戸時代から「防火の神」として信仰を集め、茶屋が並ぶ絶好の展望スポットだった。ここで行われる「ほおずき市」は浅草よりも歴史が古く、薬効を信じた神託が始まりとされる江戸の夏の風物詩だ。

【メタ観光トリビア】

 名物は傾斜約40度、86段に及ぶ「出世の石段」。講談に伝わる丸亀藩の家臣(※高松藩という説もある)である曲垣平九郎が、馬で駆け上がった武勇伝の舞台だ。現代でも馬術家やスタントマンが挑戦した記録が残っており、日常的に近隣のサラリーマンが出世祈願に訪れるパワースポットでもある。さらに、1925年(大正14年)3月の芝浦での仮放送を経て、同年7月に愛宕山から日本初のラジオ本放送が開始された地(NHK放送博物館が隣接)でもある。江戸の武勇伝と近代メディアの幕開けが同居する、超濃密なレイヤーを持つ山なのだ。

【アクセス】

 東京メトロ日比谷線「神谷町駅」から徒歩約5分

【行きやすさ・上りやすさ】

★★★★★

 アクセスは最高。石段は急だが数分で登頂できる。エレベーターもあるが、ぜひ石段に挑戦してほしい。

愛宕神社

愛宕神社 出世の石段

第4位:将軍も楽しんだ"ミニ東海道"の跡 新宿区「箱根山(標高44.6m)」

 新宿区の都立戸山公園内にある箱根山。実は江戸時代に造られた人工の山(築山)なのだが、天然・人工を含めた「山手線内にある山の中で最も高い山」である。

【歴史・風俗】

 江戸時代、尾張徳川家の下屋敷「戸山荘」にあった広大な大名庭園の一部で、池を掘った際の土を積み上げて築かれた。庭園内には東海道の小田原宿を模した町並みが再現されており、将軍が「ミニ東海道」の旅気分を楽しむための壮大なアミューズメント施設の一部だったのだ。

【メタ観光トリビア】

 明治以降は陸軍戸山学校となり、現在は都民の憩いの場。周辺の早稲田エリアは多くの文豪を輩出した地であり、文学の香りが漂う。山頂には立派な水準点があり、これが標高の根拠となっている。新宿のビル群を一望でき、公園サービスセンターで「登頂証明書」がもらえるのもマニア心をくすぐる。都心のど真ん中で「登山記録」を作れるメタな遊びを楽しんでほしい。

【アクセス】

 東京メトロ東西線「早稲田駅」から徒歩約10分

【行きやすさ・上りやすさ】

★★★★★

 公園内の散策路で、普段着・スニーカーで全く問題なし。子供連れでも安心して楽しめる。

桜満開の都立戸山公園の箱根山(東京都新宿区)

第3位:修験の道と温泉のゴールデンルート 日の出町「日の出山(標高902m)」

 『日本百低山』に選ばれている名峰。関東平野を一望できる山頂の眺望は、低山とは思えない開放感がある。

【歴史・風俗】

 古くから御岳山とセットで歩かれてきた信仰の道。江戸時代には炭焼きが盛んな里山として江戸の生活を支えてきた。御岳山(929m)からの縦走コースは、杉やヒノキの美林を抜ける古来の修験ルートでもあり、凛とした空気が心地よい。

【メタ観光トリビア】

 この山の最大の魅力は下山後の「ご褒美」だ。麓には高アルカリ性で美肌の湯として名高い「生涯青春の湯 つるつる温泉」が待っている。まさに「生涯青春」の名にふさわしい名湯だ。かつてはレトロな機関車バス「青春号」が運行され鉄道ファンを楽しませた(惜しまれつつ運行終了したが、その歴史は今も語り継がれている)。絶景を堪能し、歴史ある道を歩き、温泉で汗を流してビールを飲む。大人にとっての完成された休日がここにある。

【アクセス】

 JR青梅線「御嶽駅」からケーブルカー経由で御岳山から縦走

【行きやすさ・上りやすさ】

★★★☆☆

 本格的なハイキングコース。スニーカーでも可能だが、歩きやすい靴と十分な飲み物は必須だ。

日の出山山頂、日の出町。2006年4月24日 撮影者:っ

第2位:神々の伝説と天空の砂漠 神津島村「天上山(標高572m)」

 伊豆諸島・神津島にそびえる『日本百低山』の一つ。船旅を経て辿り着くその先には、東京とは思えない異世界が広がっている。

【歴史・風俗】

 伊豆諸島の神々が集まり、命の源である「水」をどう配分するか話し合ったという「水配り伝説」の舞台。かつては女人禁制の霊山とされた神聖な山であり、今も火気厳禁などの厳しいルールがこの山の清浄さを守っている。

【メタ観光トリビア】

 新海誠監督のアニメ映画『天気の子』。主人公の帆高が家出をしてきた島がこの神津島であり、島全体の風景やフェリー、そして天上山周辺の空気感が作品のバックボーンとなっている。強い海風の影響で森林限界が低いため、山頂付近には白い砂礫が広がる「裏砂漠」や「表砂漠」が現れ、高山植物の群生と相まって別世界のような「天空の砂漠」の絶景が拝めるぞ。

【アクセス】

 竹芝客船ターミナルから大型客船または高速ジェット船で神津島へ

【行きやすさ・上りやすさ】

★★☆☆☆

 船旅というハードルがあるが、登山道はよく整備されている。時間をかけて登る価値は十二分にある。

天上山 裏砂漠(神津島)

多幸湾 天上山と三浦漁港(神津島)

第1位:天狗が守る世界一の信仰の山 八王子市「高尾山(標高599m)」

 言わずと知れた低山の王様。NHK『にっぽん百低山』でも記念すべき100座目として取り上げられ、年間登山者数世界一クラスを誇る、世界的にも有名な名山だ。

【歴史・風俗】

 中腹の薬王院は修験道の霊場。江戸時代には「高尾詣で」が庶民の間で大流行し、信仰と行楽がセットになったレジャーの先駆けとなった。北条氏の保護を受けたため、照葉樹林帯と落葉広葉樹林帯が交差する豊かな植生が奇跡的に残り、約1300〜1600種もの植物が息づいている。これはイギリス全土の自生種に匹敵するほどの生物多様性の宝庫なのだ。

【メタ観光トリビア】

 ミシュラン三つ星の観光地である一方、アニメ『ヤマノススメ』で主人公たちが初日の出を見た聖地としてファンにはおなじみ。随所に伝わる天狗伝説は落語や講談の題材にもなり、江戸の文化と密接にリンクしている。山頂で味わう名物の「とろろそば」は、かつての参拝客の滋養強壮のために供されたのが始まり。天狗の伝説、修験の歴史、アニメ、そして食文化が重なり合う、メタ観光の最高峰だ。

【アクセス】

 京王線「高尾山口駅」から徒歩すぐ、ケーブルカー・リフト利用可能

【行きやすさ・上りやすさ】

★★★★★

 ケーブルカーで一気に中腹までワープできるうえ、景色も絶景。1号路は山頂まで舗装されており、初心者やファミリーでも安心して楽しめる圧倒的な親切設計だ。ただしGWは大変混雑するため、早朝の到着を強く推奨する。

高尾山頂

高尾山の吊り橋

編集後記:山が低いからこそ「物語」は濃くなる

 東京の低山を5つ案内した。港区のビル影から、太平洋に浮かぶ離島まで。これほど多様な「山」を抱える東京という街の凄さを改めて感じる。

 「低山」の魅力は、標高の低さゆえに人々の暮らしや歴史、そして現代のポップカルチャーと分かちがたく結びついている点にある。過酷な挑戦ではなく、日常の延長線上で、自然と文化の「境界線」をひらりと飛び越えることができるのだ。

 今年のGW、ぜひスニーカーの紐を固く結び、東京の「低山」を旅してみてほしい。出世の石段で江戸の武勇に思いを馳せ、あるいはケーブルカーで天狗に会いに行く。そこには、ただ山頂を目指すだけでは見えてこない、立体的で知的な東京の姿が待っているはずだ。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

  • 角川アスキー総合研究所

クルマ情報byASCII

ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中