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Mr.ウォーカー・玉置泰紀がキーマンに聞く「新しい街づくりのOS」 第7回

【国土交通省・後藤隆昭氏】防災は「共創のOS」である。シン・ゴジラのコミケ本『虚構と防災』が翻訳する、公助の限界を超えた都市のレジリエンス

文●玉置泰紀(エリアLOVEウォーカー総編集長)

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北海道というフィールドでの実装
「四つの島に閉じ込められた我が国は」――開拓のDNAが刻む国家戦略のOS

玉置: 後藤さんは現在、国土交通省の「北海道局」で総務課長という重職を担われています。正直なところ、一般の方からすると「北海道局って、北海道庁とはどう違うの?」とか「具体的に何をしている組織なの?」という疑問もあるかと思うのですが。広大な土地、そして冬の厳しさを含めた過酷な気象リスクに向き合う北海道で、いまどのようなビジョンを描かれているのでしょうか。

後藤: 北海道局の仕事というのは、実は非常に特殊で、ある種「国家の根幹」に関わる面白い歴史があるんです。これを話すと長くなりますが、北海道局というのは、省庁再編前の「北海道開発庁」の流れを汲んでいます。戦後の昭和25年、特別な法律(北海道開発法)に基づいて、当時の総理府の外局として作られた「特別な役所」なんです。

玉置: 戦後復興の鍵として、国が直接コミットするための、ある種「特区」のような組織だったわけですね。

後藤: まさにそうです。特に面白いのが、昭和26年に作られた「第1次北海道総合開発計画」です。その書き出しがすごいんですよ。「戦後、四つの島に閉じ込められた我が国は……」という一文から始まるんです。

玉置: 本州、北海道、九州、四国。それ以外の、大陸や外地の利権をすべて失ったという……。

後藤: そう。満蒙権益も失い、朝鮮半島との繋がりも断たれた。失ったものへの未練が滲み出ているような、非常に切実な書き出しなんです。要は「もう我々には、開拓できるフロンティアは北海道しか残されていないんだ」という、文字通りの背水の陣。1億人の国民を食わせていくための「食料」と、産業を支える「資源」、そして溢れる人口の「受け皿」をどうするか。その答えがすべて北海道に託されたんです。

玉置: まさにアメリカの西部開拓のような、国家の命運をかけた「フロンティア・スピリット」の拠点だったと。

後藤: はい。北海道は単なる「47都道府県の一つ」ではなく、国全体を支えるための特別な役割を持った場所として位置づけられた。だからこそ、国が直接動かす「北海道開発庁」という役所が必要だったわけです。それが2001年の再編で国交省の一局となりましたが、今でも私たちがやっているのは、単なるローカルな地域政策ではありません。「国家戦略として北海道をどう位置づけるか」という視点なんです。

玉置: 現代におけるその「国家戦略」とは、具体的にどのような形にアップデートされているのでしょうか。

後藤: 時代は変わりましたが、根幹は同じです。一つは「食料安全保障」。そして「観光立国」の大きな柱としての期待。さらに最近では、次世代半導体の「ラピダス(Rapidus)」の工場進出や、宇宙産業、ロケット開発といった、日本の次世代を担う先端産業のフロンティアとしての役割です。

玉置: 防災のスペシャリストである後藤さんが、その「国家戦略のエンジン」である北海道局にいる。これは、これからの日本全体の街づくりOSを考える上で、非常に象徴的なことのように思えます。

後藤: 北海道という広大なフィールドで、先端産業を誘致し、かつ気象リスクや広域災害に対応できる強靭な基盤をどう作るか。これまでの災害現場で見てきた「公助の限界」や「民間のクリエイティビティ」といった知見を、この北の大地でどう具体的に実装していくか。北海道が提示する「新しい街づくりのモデル」は、そのまま日本全体の、次の10年のOSになると確信しています。

後藤氏(右)と筆者

【編集後記:玉置の眼】

 「役所の中の人」が、その専門知識を武器にコミケという民間の海へ飛び込む。一見型破りなその軽やかさの裏には、阪神・淡路から東日本、西日本豪雨まで、既存の行政OSが厳しい現場に直面した様子を凝視してきた圧倒的なリアリティがある。

 映画『シン・ゴジラ』が描いた、巨大不明生物を前に不眠不休で理を尽くす「働く官僚」たちの姿。後藤氏が『虚構と防災』でその手続きのリアルをテキストにしたことで、僕らの官僚観は「硬直した組織」から「プロフェッショナルな知性」に書き換えられたのかもしれない。

 「公助には限界がある」――。この言葉は突き放しではなく、市民への信頼と共創への切実な願いだ。行政がすべてを担う「昭和のOS」を脱し、一人ひとりがリスクを計算し主体的に動く。そのための「翻訳」として、彼はあえて表現の場を選んだ。

 この透明性こそが、硬直化した都市をアップデートするパッチ(修正プログラム)になる。北海道というフロンティアから彼が実装しようとするのは、我々が「守られる客体」から「創る主体」へとシフトするための、確かな希望の光だ。

●玉置泰紀プロフィール 1961年大阪府生まれの編集者、プロデューサー。同志社大学卒業後、産経新聞記者、福武書店(現ベネッセ)を経て角川書店に入社。「関西ウォーカー」など4誌の編集長や総編集長を歴任した。現在は角川アスキー総合研究所に所属し、「エリアLOVEウォーカー」総編集長を務める傍ら、国際大学GLOCOM客員研究員や京都市埋蔵文化財研究所理事、東京文化資源会議幹事、国際文化都市整備機構理事など、地域の文化・観光振興に幅広く携わっている。

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