Mr.ウォーカー・玉置泰紀がキーマンに聞く「新しい街づくりのOS」 第7回
【国土交通省・後藤隆昭氏】防災は「共創のOS」である。シン・ゴジラのコミケ本『虚構と防災』が翻訳する、公助の限界を超えた都市のレジリエンス
発信という新たなインターフェース
『虚構と防災』が変えた「官僚」の解像度
玉置: その後、内閣府防災に計9年在籍され、東日本大震災(2011年)や熊本地震(2016年)の最前線で指揮を執られます。東日本の時は東京で被災者支援や復旧・復興の政策を、熊本の時は現地に飛ばれたとか。そのあたりの「泥臭い現実」については後ほど詳しく伺いますが……やはり後藤さんといえば、コミケで頒布された『虚構と防災』の衝撃が大きいです。
後藤: あれも、最初はただの「遊び」だったんですよ。映画『シン・ゴジラ』を観て、「これ、行政用語が多すぎて一般の人には分からないところが多いよな」と。でも、そのマニアックな手続きを理解して観たほうが絶対に面白い。だから最初はネットで解説を書き始めたんです。
玉置: それが、どうしてコミケの同人誌に?
後藤:一緒に作った某省のMさんや編集者のタラレバさんたちがいる飲み会の場で、コミケに出したら面白い、という話になって(笑)。一応、役所の人事には兼業規制との関係で問題ないか確認はしたんですよ。そうしたら「個人の趣味の活動の範囲だから、こちらが関知することではない」と。まさか20万人以上が集まるイベントで、あんなに注目されるとは向こうも思っていなかったんでしょうね。
玉置: 行政の「中の人」が、エンターテインメントという補助線を引いて語り始めた。これは画期的でした。
後藤: 以前は、行政といえば「親方日の丸」とか「護送船団方式」と言われ、バブル崩壊後は「無駄を削れ」と叩かれるだけの対象でした。特に国交省は建設業界との関係で「官製談合」のイメージも強かった。でも、『シン・ゴジラ』では、官僚が目の前の危機に対して必死に、かつ組織的に立ち向かう「プロ」として描かれた。私の本も、そのリアルな裏付けとしてのニーズがあったのかもしれません。
玉置: 樋口真嗣監督の『平成ガメラ』などもそうでしたが、怪獣が現れた時に「人間側も組織として戦っている」という描写にリアリティを持たせる。それが仕事として「面白い」と思わせた。
後藤: 行政をスリム化しすぎて現場が機能不全に陥った東日本大震災の反省もあり、世の中の「行政の見方」が変わってきたタイミングでもあったんでしょうね。官僚が単なる制度運用側ではなく、情報を翻訳して届ける。それによって市民との接続点を作る。遊びの中から、そんな「新しい発信のOS」の可能性が見えてきた、と言ったら言い過ぎかもしれませんが(笑)。
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