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渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」 第61回

【後編】興収20億円突破記念! Netflix・ツインエンジンのキーマンに舞台裏を聞く

『超かぐや姫!』大ヒットの裏には日本のネットカルチャー愛が深い宣伝チームの活躍があった

2026年05月03日 15時00分更新

文● 渡辺由美子 編集●村山剛史

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『超かぐや姫!』はクリエイターへのリスペクトも内包している

―― 「広い面」だけを意識するなら、通行人が多い渋谷や新宿になりそうです。一方で、秋葉原はビジネス街に変わりつつありますよね。

N 桒原 「インターネット文化で育ってきた方々に親しまれていた場所」であることに変わりはないので、現在の秋葉原というより、秋葉原が持つ街のイメージや思い出にリーチしたいと思ったんです。

 今回の宣伝チームはツインエンジンさん側も含めていわゆるオタクと言いますか、アニメ・インターネットへの愛が深い人たちが多く、平成のニコニコ動画から令和のVTuberまで、インターネットの楽しかった時間を過ごしてきています。『超かぐや姫!』はそういったものがギュッと詰まっている作品だからこそ、「宣伝ではそれぞれ媒体に違いがあっても、“ネット文化の楽しさ”を全体で包めるといいね」という意識を共有していました。

 秋葉原で流した広告映像の音楽も、元のPV映像とは別にキャラクターごとにチューニングしています。ワイズマの「世界で一番おひめさま」という歌詞が流れた瞬間、頭の中にあの頃の楽しさが湧き出てくるような方々に気づいて喜んでいただけたら良いなという気持ちでした。

―― 広告の映像を流す段階では「広い面」だけれども、映像を通して「気づいた人が喜ぶ」ギミックも入れた。それが「深く点で刺す」なんですね。

N 桒原 はい。劇中の〈ツクヨミ〉空間では「みんなが表現者」という説明もあって、かぐやも配信者になります。インターネット上で何かを作って発信していくクリエイターへのリスペクトを感じました。

 そこで、ネットで活動されているクリエイターや配信者の方々に、特別な冊子をプレゼントとしてお送りしました。こう……パカッと表紙を開くと映像が流れる作りなんです(笑) 少しでも興味を持っていただけたらという動機だったんですが、届いた冊子をご自身のSNSや動画で紹介してくださった結果、予想以上の応援をいただきました。

 結果として、Netflixのアニメ映画ラインナップでも類を見ないぐらい「同時視聴」(配信者がファンと一緒に作品を観て感想を実況する)が多発する作品になりました。これで広い面だけでなく、「深く点で刺していく」コミュニケーションも実現できたのがうれしかったです。

クリエイターに配られた『超かぐや姫!』の映像入り冊子。開くと右ページ上段でPVが再生されるつくり

―― 「広く」と「深く」、両方が必要なんですね。

N 桒原 屋外広告も冊子キットも、届ける対象に違いはありつつも、「作品をまだ知らない方に向ける」という意味では共通しています。そこで今回は「映像を届ける」ことにこだわりました。

 ぱっと目にしたときに、一枚絵だけよりも「絵と曲が一度に飛び込んでくる」ほうが、音楽やライブ演出が印象的な『超かぐや姫!』の魅力が伝わるはずだと。秋葉原で屋外広告の場所を探す際も「音が出る媒体」にこだわって、各所にご相談させていただきました。

T 長坂 Netflixさんと役割分担することで、それぞれの宣伝の強みや個性を出せたと思います。ツインエンジンではYouTubeやTikTok、SNSなどオウンドのウェブメディア全般を担当しました。ファンに寄り添った宣伝は自分たちの持ち味だと思っています。

―― 「ファンに寄り添った宣伝」には、具体的にどんな手段がありますか?

T 長坂 たとえば動画を公開する際はSNSで前日から少し「匂わせ」をすることで、事前に動画が上がることをアナウンスできますし、期待感を高めていただけます。そして翌日の動画で期待にお応えする、と。

―― ウェブでの宣伝は、お客様との距離が近いのですね。とは言え、ほかのアニメ作品もウェブで宣伝をしています。『超かぐや姫!』ならではの持ち味や工夫というのはありますか?

T 長坂 SNSでの投稿は「楽しそうに見える」ことを意識してます。いわゆる告知のような堅い文章だけではスルーされます。投稿1つ1つがコンテンツとして楽しめるように作っています。

 SNSはファンだけではないので、作品を知らない方々に投稿が回っても楽しめるところは大事です。

N 山野 Xのアカウントで「何万再生突破!」とかぐやたちが伝える画像も可愛いですよね。

T 長坂 文章で「何万再生突破!」と書くよりも、かぐやたちが喜んでいるほうが、回ってきたときに見てくれやすいかなと。

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