F1のリモートプロダクション、FIFA W杯の「Football AI Pro」などの裏側を披露
今年のサッカーW杯には「3Dアバター判定」「試合分析AI」も登場 FIFA・F1がレノボと取り組む技術革新を語る
2026年04月14日 09時00分更新
AIが変えるサッカーの試合分析、平等な技術アクセスの必要性
2026年のFIFAワールドカップでは、Lenovoが開発した試合分析ツール「Football AI Pro」が導入される。このツールは、参加する48チームすべてに提供される試合分析プラットフォームで、AIに質問をすれば試合データや映像分析が即座に提供される。
ホルツミュラー氏は「現在では、光学トラッキングシステムで1試合あたり数百万データポイントを収集することができる。フィールドを取り囲む60台のカメラが、選手の身体の29カ所を毎秒50回、ボールを毎秒500回トラッキングしている」と説明する。この膨大なデータに加えて、およそ10本のビデオフィードや試合に関する追加情報も提供される予定だ。
従来は、こうした膨大な試合データから50~60ページに及ぶレポートを作成し、各チームに提供していた。だが、Football AI Proを使えば、AIに質問するだけで有益な分析結果や映像が即座に得られる。
「重要な点は、このテクノロジーがすべてのチームに対して平等に提供されることだ」「史上最大規模の2026年大会には、潤沢な予算を持つビッグチームだけでなく、初出場のチームも参加する。予算の大小に関わらず、すべてのチームが同じ技術にアクセスできるべきだ」(ホルツミュラー氏)
AIの活用は、F1でも急速に進んでいるという。ロバーツ氏が紹介したのが、カメラの色調補正作業の自動化だ。「レースに参戦する22台のマシンには、それぞれ最大9台のカメラが搭載されている。走行中のマシンから映像を届けるために、これらのカメラには色調補正が必要だ」とロバーツ氏は説明する。
従来は8人のスタッフが、最大12時間をかけて手作業で色調補正の作業を行っていた。だが、そうした作業はスタッフにとって重荷であり、人によって色の基準が違うという問題もある。ここにLenovoのAIインフラを活用することで、AIが毎秒何度もカメラの色補正を実行し、一貫した映像品質を維持できるようになったという。「品質、出力、スピードのすべてが劇的に向上した。まさにゲームチェンジャーだ」とロバーツ氏は語った。
2026年のワールドカップで導入される「3Dアバター技術」とは
このセッションでは、2026年のFIFAワールドカップにおいて、オフサイド判定の精度向上のために「3Dアバター技術」が導入されることも発表された。
FIFAでは、2022年大会で「半自動(セミオートメイテッド)オフサイド判定技術」を導入したが、そこからは「審判をサポートするだけでなく、ファンにも判定の正しさを分かりやすく伝えることが重要」だという学びがあったと、ホルツミュラー氏は明かす。現在、オフサイドの状況を映像で示す際には灰色のアバターが使われているが、よりリアルな表現にすることで、ファンの理解が深まることが分かってきた。
今年導入する新システムでは、わずか1秒の3Dスキャンで各選手の正確な体形データを取得し、そこから精密な3Dアバターを作成する。これにより、オフサイド判定の精度が大幅に向上するだけでなく、システム判定の信頼度が高い場合には、副審に直接信号を送ることも可能になった。
この3Dアバターの作成から、最終的なオフサイド判定システムへの統合まで、エンドツーエンドのプロセスをLenovoがサポートしている。
テクノロジーの進化は“スポーツの本質的な魅力”を奪うか?
結果が予測できないこと(予測不可能性)もスポーツの魅力のひとつである。膨大なデータと高度な予測分析が可能になったいま、そうしたスポーツの魅力は失われてしまうのだろうか。
会場から出たこの質問に対して、FIFAのホルツミュラー氏は明確に「ノー」と否定した。明らかに一方のチームが優勢に試合を進めていても、最後の1分間の反撃により、劣勢だったチームが逆転勝利を収めることがある。
「サッカーの美しさは“計画できないこと”が起こる点にある。たしかに、テクノロジーはチームの計画を最善の形でサポートする。しかし、実際にゴールを決めること、試合に勝つことには、計画できない多くの要素がからみ合う。それがサッカーの美しさであり、結果を予測できるものにはならない」(ホルツミュラー氏)
F1のロバーツ氏も同じように、レースの魅力は失われないと断言した。
「データポイントはいくらでも追加できるが、ある時点を超えると、レースのドラマや興奮を奪ってしまう可能性がある。データは製品やチームに価値を加えるために存在するのであり、それ自体が目的ではない」(ロバーツ氏)
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