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科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第103回

【JSTnews6月号掲載】未来社会創造事業 大規模プロジェクト型 研究課題「界面マルチスケール4次元解析による革新的接着技術の構築」

異なる材料同士をつなぐ接着剤の高性能化を見据え、界面分子鎖の運動の観察に成功

2026年06月12日 12時00分更新

文● 中條将典

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 世界的な課題であるモビリティー輸送の低燃費化の達成には構造部材の軽量化が不可欠です。金属や高分子材料などの異種材料を適材適所で組み合わせる高性能で新たな接着技術は、その有効な解決策となり得ます。革新的な接着技術を設計するためには、接着剤と被着材が接する「接着界面」で起こる現象を分子レベルで理解する必要があります。しかし、1本の高分子鎖が固体表面でどのように振る舞うのかを直接捉えることは困難でした。

 九州大学大学院工学研究院の田中敬二主幹教授らの研究チームは、試料表面の形状や動きを直接観察できる原子間力顕微鏡を用いて、固体表面上に存在する高分子鎖の運動を直接観察。0.3~26秒の高い時間分解能と、面内分解能約0.4ナノ(ナノは10億分の1)メートル、高さ分解能0.1ナノメートル以下で、部位ごとに異なる分子運動を定量的に可視化することに成功しました。さらに、同一分子鎖を異なる温度条件で観察することで、各位置における分子運動の温度依存性を詳細に評価。1本の界面高分子鎖の中に、温度上昇とともに分子運動が活発化する熱活性セグメントと、固体表面への一時的な吸着によって運動が抑制される熱抑制セグメントが共存し、多くの部位では、吸着と脱離をランダムに繰り返していることがわかりました。

 これらの結果は、界面高分子鎖が一様な運動性を示すという従来の理解とは大きく異なります。異種材料接着剤の分子設計における新たな技術基盤を与え、これまでの発想では作ることができなかった高性能な接着剤の開発につながりそうです。

固体表面の高分子鎖の分子運動の原子間力顕微鏡像と模式図。1は熱活性セグメント、2は熱抑制セグメント、3は吸脱着を伴うランダムな挙動。

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