このページの本文へ

科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第70回

【JSTnews2月号掲載】NEWS&TOPICS 戦略的創造研究推進事業さきがけ/研究領域「持続可能な材料設計に向けた確実な結合とやさしい分解」 研究課題「強固な結合をやさしく光分解する複合ナノ材料の創出」

有機フッ素化合物を分解する新たな技術を開発

2026年02月12日 12時00分更新

文● 中條将典

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 炭素-フッ素結合(C-F結合)を多数含み、極めて高い安定性を示す有機フッ素化合物(PFAS)は、幅広い産業分野で利用されてきました。しかし、環境中で分解されにくく、環境残留や生体蓄積を引き起こすことから、世界的に規制や管理が強化されています。従来のPFAS分解法は、高温処理や強力な酸化剤、深紫外光といった過酷な条件を必要とすることから、新たな分解技術の開発が急務となっています。

 立命館大学生命科学部の小林洋一教授らの研究グループは、低毒性で安価かつ大量合成が可能な酸化亜鉛(ZnO)ナノ結晶の光触媒特性を活用することで、持続可能で実用化に直結するPFAS分解技術を開発しました。研究グループは、PFASの中でも特に分解が困難なペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)を溶かした水溶液に、酢酸イオンで表面を修飾したZnOナノ結晶と正孔捕捉剤としてトリエタノールアミンを加え、その懸濁液に波長365ナノ(ナノは10億分の1)メートルの近紫外LED光を照射しました。その結果、室温・大気圧下でPFOSが効率的に分解されてC-F結合がフッ化物イオン(F-)まで還元され、10時間の照射でPFOSの残存率を0.5パーセントまで減らせることがわかりました。

 今回の技術は、水処理施設や産業排水処理、PFASを吸着したフィルターの再生など、幅広い応用が考えられます。生成したフッ化物イオンはカルシウムイオンを添加することで原料鉱石であるホタル石として容易に分離・回収できるため、環境浄化と資源循環を両立させる技術としても活用できそうです。

有機分子を配位結合したZnOナノ結晶に近紫外LED光を当てると、光エネルギーを吸収して有機分子が分解・脱離することで電子と正孔が発生。この電子がPFASに移動してC-F結合を切断し、フッ化物イオン(F-)へと分解する。

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事

アクセスランキング

  1. 1位

    ITトピック

    IT技術者の4割が「5年後のスキル陳腐化」に危機感/働くシニアは多いが「長く働きやすい」環境ではない日本/トークンコストの成果証明は難しい、ほか

  2. 2位

    データセンター

    AIデータセンターの「電力・冷却課題」打破へ シュナイダーが営業・設計・現場を直結する新組織立ち上げ

  3. 3位

    TECH

    二酸化炭素を資源に変える新触媒、新しい合金を電気で合成

  4. 4位

    デジタル

    ヤマハ、RTX1300の「ひかり電話アダプターモード」を解説する無料ウェビナーを10月15日に開催

  5. 5位

    サーバー・ストレージ

    「身代金を払えば復元できる」は過去の幻想――約束を守らない攻撃者と変容するランサムエコシステム

  6. 6位

    ソフトウェア・仮想化

    Microsoft IQとは? AIエージェントが必要とする理由は? マイクロソフトの担当幹部が解説

  7. 7位

    クラウド

    NTTドコビジが「GPUaaS」提供へ 1分単位で利用でき、ハイブリッド構成も可能

  8. 8位

    sponsored

    乱立する文書管理をBoxに統合へ、オークネットは基盤整備で「AIをビジネスの武器にする」

  9. 9位

    sponsored

    ルールは作ったが… 現場の「勝手にAI利用」が止まらない! どうやったら防げた?

  10. 10位

    IoT

    フィジカルAI時代を見据え、NTTドコビジがNaaS基盤を強化 数万台のIoTデバイスをセキュアに管理

集計期間:
2026年09月23日~2026年09月29日
  • 角川アスキー総合研究所