【犬の再生医療】人より先にiPS細胞治療が実用化するかもしれない
犬は人よりも早く年を取る
筆者もかつて愛犬を病気で失い、しばらくペットロスに陥った。「人間ならもっと高度な医療で治療できたかも」と今でも考えてしまう。
そんな「もう少し一緒にいたかった」という想いに動物医療界も応えようとしている。慶應大学・日本大学発スタートアップの株式会社Vetanicは、犬や猫のiPS細胞をつくり出す技術を開発している。
iPS細胞は、ノーベル賞を受賞した山中伸弥教授が発見した、体のあらゆる細胞に変化できる万能細胞のこと。関節や骨、皮膚、神経といった損傷部位を再生する治療法の実用化が期待されている。
世界初、犬専用の高品質iPS細胞
同社の特徴は、動物専用に最適化された「高品質なiPS細胞」を量産できる点だ。犬や猫のような動物では、ヒトやマウスと違い、細胞をリプログラミングしても不安定になりやすく、長期培養や安全性の確保が難しいとされてきた。
Vetanicは、独自の培地条件や品質管理システムを確立し、臨床応用に耐えうるレベルの犬iPS細胞の作製に成功しているという。
先にペットが再生医療を受けるかも?
興味深いのは、人間よりもペットのほうが先に再生医療を受ける可能性があることだ。人間の医療では、保険認可や審査などのプロセスが複雑で、ひとつの治療法が承認されるまでに10年以上かかることもある。一方で、動物医療は規制が異なり、飼い主の同意があれば臨床応用へ進めるスピードが速い。
もちろん、再生医療が“永遠の命”を与えるわけではない。実際に施術できる獣医師も限られるし、保険がきかないぶん、治療費はかなり高額になるだろう。それでも、愛犬の痛みを和らげ、少しでも長く一緒にいられる可能性があるなら――。早期の実用化を願うばかりだ。







































