【月面開拓】溶接ロボが「月の砂」でサバイバル建築する話
延期続きでも進んでいる「アルテミス計画」
NASAが進める月面有人探査『アルテミス計画』。2025年に有人月面着陸を目指すはずが延期を重ね、現在は2027年ごろといわれている。NASAの予算不足も報じられているが、むしろ「課題が出ている=計画が具体化している」証しとも言えなくもない。予算不足を補うために世界中の民間企業に協力を募り、さらにコストを抑えるために、材料を現地で調達して建築しようという試みも動き出している。
月の砂は危険な建材だった
ただ、その建築素材と目されている「月の砂(レゴリス)」には落とし穴がある。有害な成分を含んでおり、花粉症のようなアレルギー反応を引き起こす危険があるとされている。もちろん、作業は宇宙服を着て行なうが、宇宙船に戻るときに持ち込んでしまうので扱いが難しい。そもそも空気がない場所で肉体労働はキツイ。そこで、ロボットが月面で建設を担う技術が求められている。
ロボットが電子ビームで基地を組み立て
東北大発の株式会社Space Quartersが開発しているのは、宇宙空間で資材を溶接し、構造物を組み立てるロボットシステムだ。その核となるのが、電子ビーム(electron-beam)溶接を活用した技術。電子ビーム溶接は真空環境に適しており、地上では扱いにくいが、空気が存在しない宇宙ではむしろ有効に機能する。これを利用して金属資材を自律的に接合し、軌道上や月面で構造物を組み立てることを目指している。
2028年、宇宙で実証ミッションの可能性
現在は地上での概念実証(POC)を経て、次のステップとして2027〜2028年に軌道上あるいは月面での実証ミッションが予定されている。将来的には「月の砂」を固めて建築素材とし、月面に人類の拠点を築くビジョンを描いている。ちなみに、月の砂はセメントのように固めて建材化すると有害性は失われるとされている。人間が到着するよりも前に、ロボットたちが淡々と作業を続け、宇宙飛行士が生活できる環境を整える、というわけだ。
「餅つきの月」から「建築の月」へ
月面での生活拠点建設は、宇宙探査を現実にするための最重要ステップ。Space Quartersの技術は、そのサバイバル感とロマンを背負いながら、人類のフロンティアを押し広げようとしている。我々の孫世代には、月といえば「餅をつくうさぎ」から、「家を建てるロボット」のイメージに変わるかもしれない。








































