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風速15メートルで傘はアウト。数秒先の風を予知する「Wind Guardian」

特集
未来を変える科学技術を追え!大学発の地味推しテック

異常気象で「一雨一傘」

 先日、SNSで「男子小学生がすぐ傘を壊す問題」がバズっていた。水を入れて遊んだり、棒代わりに振り回したり、傘はあっという間に犠牲になる。だが最近のゲリラ豪雨や暴風雨では、大人の傘もすぐに壊れる。華奢な折り畳み傘などひとたまりもなく、もはや「一雨一傘」って感じだ。

侮れない風の力

 実際、風速10メートルで人は傘をさすのに苦労し始め、15メートルを超えるとほとんど差せなくなるという。20メートル以上では、立っていることすら難しい。そして、この“見えない”風の力は、これからの空のモビリティにも大きな壁となる。

航空機より繊細なドローン

 飛行機は雨の日でも意外と運航する。それは、高度1万メートル付近を飛ぶため、風は強くても比較的安定しているからだ。だが、ドローンや将来の空飛ぶクルマが飛ぶのは地上から100〜200メートル程度で、ビルや地形の影響をもろに受ける。突風や渦が発生しやすく、航空機以上に繊細に風の影響を受けるのだ。

京大発、風を“見える化”する技術

 そこで登場するのが、京都大学発のスタートアップ、メトロウェザー株式会社だ。彼らが開発するのは、レーザーで風を“見える化”する超小型ドップラー・ライダー「Wind Guardian」。レーザー光を空に打ち上げると、大気中のちりや水滴に反射してごくわずかに戻ってくる。この戻り光の「ドップラー効果(救急車のサイレンが近づくと高く、遠ざかると低く聞こえる現象)」を解析することで、風の速さや向きを割り出すのだ。

小型ドップラー・ライダー「Wind Guardian」。観測距離は最大約15km(大気条件による)、サイズは65cm立方、風速分解能0.1m/s、距離分解能10m〜(観測モードにより可変)

 これにより、地上から上空まで高さごとの風の流れを3次元の地図のように描く。例えば「地上50メートルでは東風、100メートルでは突風が渦を巻いている」といった情報をリアルタイムで可視化できる。数秒先の風の乱れがわかれば、ドローンがルートを変えたり待機したりすることで事故を防げる可能性がある。

防災や暮らしにも広がる応用

 さらに、この技術は防災にも役立つ。集中豪雨や突風は従来の気象レーダーでは捉えきれないこともあるが、風の動きを先読みできれば、突然のゲリラ豪雨の兆しをいち早く察知でき、命の危険も防げるかもしれない。

 傘がひっくり返る小さなトラブルから、未来の空の交通、そして日常の安全まで。風の“見える化”は、これからの暮らしを守る未来のインフラ科学なのだ。

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