“ゴッサマー構造”とは何か。IKAROSにも使われた超薄膜技術がテントに?
宇宙旅行は、もう絵空事じゃない
宇宙往還機の実現が見えてきた今、数十年後には火星で一泊する日が来るかもしれない。とはいえ、最初はきっと未開拓の地でのサバイバルキャンプのようなもの。荷物は、とにかく軽いに越したことはない。そんな“宇宙キャンプ”の未来を支えるかもしれない技術開発が、実はいま日本で進んでいる。
テントのプロと宇宙ベンチャーが手を組んだ
宇宙空間における軽量・展開型構造を研究している日大発スタートアップ、株式会社cosmobloomは、2025年7月に膜構造建築の大手太陽工業から出資を受けた。太陽工業といえば、東京ドームの屋根や大阪万博のパビリオンなど、大型テント構造を多数手がけてきた老舗企業だ。今回の提携によって、宇宙と地上の「テント技術」が交差し始めている。
軽くて大きく広がる「ゴッサマー構造」とは?
cosmobloomの中核技術は、「ゴッサマー構造」と呼ばれる膜・ケーブルなど柔軟な素材を使った超軽量構造体の設計と解析だ。ゴッサマー構造のポイントは、軽くて、折りたためて、広げると大きいこと。まさにアウトドア用のテントや、災害時の簡易シェルターに求められる要素そのものだ。
中でも象徴的なのが、2010年に打ち上げられたJAXAのソーラーセイル実証機「IKAROS(イカロス)」だろう。打ち上げ時は小さく折り畳まれていた極薄の帆が、宇宙空間でふわりと、くしゃくしゃした状態から開いていく姿を記憶している人もいるかもしれない。あの帆こそ、まさにゴッサマー構造そのものだ。
そして、cosmobloomが開発するソフトウェア「NEDA(非線形弾性動解析コード)」は、IKAROSプロジェクトでも活用された。膜がたわんだり、振動したり、予測しにくい複雑な動きを高精度にシミュレーションできるのが特長だ。
地上のテントも、宇宙仕様になるかもしれない
cosmobloomと太陽工業の提携では、宇宙向け構造物の製造や販売を視野に入れた共同研究開発を進める予定だ。また、こうした宇宙テックとして開発された構造解析技術が地上でも生かされる。軽量・高強度な新素材や、風や振動への耐性を計算しつくしたフレーム設計といった技術が、地球上のテントを進化させそうだ。
宇宙でテントを張るのは、まだ少し先の話。でも、次にあなたが買う最新のテントは、実は“ゴッサマー構造”かもしれない。















































