電線もソーラーパネルも不要。“空中送電”がつくる新しい電力インフラ
せっかくの風景に、電線が写っていた
旅先でいい感じの写真を撮ったのに、写真の端に電線が写っていた。SNSに上げる前に、編集アプリでチマチマと消していく作業は、正直めんどくさい。街には電柱に絡むケーブル、屋根にびっしり敷かれたソーラーパネル、郊外にそびえる巨大な風車。どれも電力のためだけど、「ちょっと景観が……」と思ってしまう。
この“電力の景観問題”を根本から解決できる、送電の仕組みそのものを変えてしまおうという技術がある。それが、電気を“空中で飛ばす”という発想だ。
電気が“空中を飛ぶ”ってどういうこと?
仕組みはこうだ。「マイクロ波」と呼ばれる電波を使い、空中に向けて電力をビームのように飛ばす。受信側のアンテナがそれをキャッチして電気に戻す。ケーブルもソーラーパネルも不要で、空間そのものが「電力の道」になる。
「電子レンジのビームみたいなのがそこら中に流れて大丈夫なの?」と心配になるかもしれないが、もちろん安全面もちゃんと考慮されていて、人体には影響ないよう制御されている。
“空を飛ぶ電気”に挑む、日本のスタートアップたち
この分野で注目されているのが、京都大学発の株式会社Space Power Technologies(SPT)とスタンフォード大学発のエイターリンク株式会社の2社。
SPTは、宇宙に巨大なソーラーパネルを配置し、発電した電力をマイクロ波で地上に送る「宇宙太陽光発電」に挑戦している。現在は、まず地上での倉庫内給電などから実用化を進めており、将来的な「宇宙からの送電」に向けて技術を磨いている。
一方のエイターリンクは、すでに実用段階にある。Wi-Fiルーターのような装置「AirPlug」を使い、オフィスや工場内でIoT機器にワイヤレス給電を行っている。ケーブル配線が不要になることで、設備更新やレイアウト変更の自由度が高まり、省施工・省管理にも貢献する。
スケールの大きさではSPT、実装の早さではエイターリンク。アプローチは異なるが、「電気をもっと自由に届ける未来」に向かって進んでいる。
ケーブルが消えれば、街の見え方も変わる
空中から電気を受け取れるようになれば、電柱は姿を消し、屋根にソーラーパネルを敷き詰める必要もなくなる。屋内のケーブル配線もスッキリして、モバイル機器やEVの充電方法も徐々にワイヤレスが主流になるはずだ。
雲をつかむような話かもしれないが、電話線のいらない携帯電話だって、あっという間に当たり前になった。電気が空を飛ぶ未来も、そう遠くないのかも。














































