【軽さvs寿命】バッテリーのトレードオフに東大の“仕込み技術”が効く
スマホ必須の万博で、最大の敵は「バッテリー切れ」
大阪・関西万博では、パビリオンの予約も、決済も、情報チェックも、なにかとスマホが必須らしい。中でも一番のトラブルが「バッテリー切れ」だという。会場のあちこちで、モバイルバッテリーを貸してくれとスマホ片手に探し回る人が続出しているとか。……うん、それは確かに困る。自分が現地にいたらと思うと、ちょっとゾッとした。
電池が切れたら、すべてが止まる
実際、ライブ会場で電子チケットが表示できず入場できなかったり、キャッシュレスの店でスマホが死んで支払いに詰まったり、充電切れによる悲劇は日常茶飯事だ。便利な世の中になればなるほど、電池のもち=ライフラインという図式が成り立つ。万博の混乱も、未来っぽいテクノロジーの祭典でありながら「電池」という超基本の課題を突きつけられるのが興味深い。
電池に“ひと手間”加えるだけで、寿命が倍に?
そんな中、「電池の寿命を延ばす」という地味だけど超大事なテーマに、東京大学発スタートアップ・ORLIB株式会社が挑んでいる。彼らの目標は、今ある二次電池(繰り返し使える充電池)よりも、もっと長持ちでパワフルな「高エネルギー二次電池」をつくること。そのカギは、電池の中身――つまり電極の素材と、組み立て前のちょっとした“ひと手間”にあるようだ。
「先に染み込ませる」ことで安定&長寿命に
具体的には、電極の材料に、マイナス極には電気をたっぷり溜められる「シリコン(Si)」、プラス極には独自の「有機チオアミン化合物」を使う。この組み合わせは、理論上は高性能なのだが、充放電を繰り返すと性能が劣化しやすいという問題があった。そこでORLIBが編み出したのが、電池を組み立てる前にリチウムを電極に先に染み込ませておく“プレドープ”という技術だ。この“下ごしらえ”をしておくことで、電極が安定し、容量も増えて、しかも長持ちするという。いわば「料理の下味付けで全然違う」みたいな世界観だろうか。
予定通りにいかないのが未来。だからこそ必要な“足元の技術”
ちなみに万博では、「行列ができないはずの予約に行列」「乗れるはずの空飛ぶクルマがデモだけ」など、予定通りにいかないことも多いようだ。でも、そうしたトラブルは、テクノロジーを現場に落とし込もうとするプロセスそのものとも言える。失敗も含めて前進していくのが技術革新というものだろう。
ORLIBの挑戦も、今はまだ実証段階だが、近いうちにスマホのバッテリー不安を解消して、未来のイベントをもっと快適にしてくれるかもしれない。電池が切れるだけで、情報も支払いも移動も全部止まる今の世の中。そんな“電池恐怖社会”から抜け出すための、一歩先の技術に注目したい。




































