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連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第163回

IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 12月7日~12月13日

進まないアプリケーションのモダナイズ/転職で稼げるプログラミング言語は/賃上げに「満足」は半数に満たず、ほか

2024年12月16日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。

 今回(2024年12月7日~12月13日)は、企業をとりまく迷惑メールや攻撃メールの実情、アプリケーションのモダナイズ(最新化)が進まない理由、転職サイトの提示年収から見る“稼げる”プログラミング言語、企業経営者が直面する「判断材料となる経営データの不足」、2024年度上半期の賃上げ実態と労働者の意識についてのデータを紹介します。

[セキュリティ] 企業に届くメールの3通に1通は「迷惑メール」(Vade Japan、12月5日)
・企業が受信した205億件のメールを分析、3分の1超が「迷惑メール」
・迷惑メールのおよそ2%が「悪意のあるコンテンツ」を含む
・依然として「フィッシング」がメール攻撃手法の3分の1を占める

 メールセキュリティベンダーVade(ヴェイド)が、同社サービスを通じて処理した556億通以上のメールを調査。そのうち企業が受信した205億件のメールでは、迷惑メールが3分の1を超える36.9%を占め、その2.3%(4億2780万件)に悪意のあるコンテンツが含まれていた。メール攻撃の手法としては依然として「フィッシング」が最多(33.3%)であり、以下は「悪意のあるURL」(22.7%)、「前払い金詐欺」(6.4%)などが続く。一方で「悪意のある添付ファイル」を用いた攻撃は減少しているという。

 ⇒ 大量に届く迷惑メールの削除から1日が始まる、という人も多いのでは。無駄な時間と電力を費やしてしまうのが歯がゆい。

企業が受信したメールの63.1%が「正常メール」、残る36.9%は「迷惑メール」だった(出典:Vade Japan)

メール攻撃手法としては「フィッシング」が最多(出典:Vade Japan)

[DX] 「アプリケーションのモダナイズ」進捗率は低調、課題は「人材不足」(Tricentis Japan、12月12日)
・アプリケーションのモダナイズ進捗率は全体平均で50%未満、ERPは特に低調
・課題は「質的なIT人材不足」と「量的なIT人材不足」
・アプリケーションテストの7割近くは現在も「手作業」

 「アプリケーションのモダナイズ」の進捗と障壁を探る目的で、国内企業(年商500億円以上)のITリーダーに行った調査より。アプリケーション全体での進捗率は半数以下(平均41%)にとどまり、特にERPアプリケーションについては14%とかなり低い現状が浮き彫りに。その障壁としては、スキルや経験といった「質的なIT人材不足」(80%)、そして「量的な人材不足」(65%)といった回答が多い。

 ⇒ 経産省の“2025年の崖”レポート発表から6年が経過し、来年はいよいよ2025年を迎える。だが、なかなかアクセルはかからないようだ。

[データ] 意思決定の判断材料となるデータが「足りない」が3割超(DIGGLE、12月3日)
・経営意思決定の判断材料になるデータが「足りない」と考える経営者が3割
・DXの優先度も、経営者では「経営管理・経営データ活用」が過半数でトップ
・ただし「DXの優先度が高く、実際に取り組んでいる」は半数に満たない

 経営者419人を対象に、意思決定における経営データの活用実態などについて聞いた。意思決定の判断材料となる経営データが「十分そろっている」とした経営者は21.7%で、「一定程度そろっている」(38.2%)、「足りない」(31.2%)という回答のほうが多い。また、経営者が「DXの優先度が高い」と考えるテーマとしては「経営管理/経営データ活用」(58.3%)が最多だったが、そう答えた経営者のうち、実際に「(DXに)取り組んでいる」としたのは45.1%にとどまった。DXに取り組むうえでの課題には「資金不足」「現状維持の考えが根強い」といった回答があったという。

 ⇒ 「経営を変える」のにもデータやDXは不可欠。まずは経営に直結する領域から第一歩を踏み出してほしいところだ。

意思決定の判断材料となる経営データの充足状況(出典:DIGGLE)

経営者が「DXの優先度が高い」と考えるテーマ(出典:DIGGLE)

「経営管理/経営データ活用」領域についてDXで取り組む優先度が高いと回答した企業における、実際の取り組み状況(出典:DIGGLE)

[開発] 稼ぎたいプログラマーは「Go」を狙え?(paiza、12月10日)
・企業が提示する年収が高い言語、トップ3は「Go」「TypeScript」「Scala」
・求人に対してライバル応募者が少ない“穴場言語”は「Kotlin」「Swift」「Go」
・転職時のプログラミング言語別提示年収が「全言語で平均10万円アップ」

 ITエンジニア向け転職/就職/学習プラットフォームに登録するエンジニアや学習者を対象とした年次調査より(登録者は81.3万人、回答者数は非公開)。企業の求人票に記載された年収に基づく提示年収トップ3は、高い順に「Go」(710.9万円)、「TypeScript」(697.6万円)、「Scala」(679.8万円)。上位6言語は2023年調査と変わらず、需給バランスに大きな変化がないことがうかがえる。ライバルが少ない“穴場言語”の1位は、Androitアプリ開発の推奨言語「Kotlin」(提示年収は679.8万円)。ちなみに、学習者に人気のある言語は、社会人も学生もAI開発やデータ分析に強い「Python」がトップだった。

 ⇒ 転職時の提示年収が全言語平均で「前年比10万円アップ」というデータも出ている。稼げるGo、狙い目Kotlinに限らず、プログラミング学習はキャリアアップに役立つ。

paiza転職に掲載された企業の求人票に基づく、提示年収が高いプログラミング言語トップ10(出典:paiza)

掲載された求人票数を応募者数で割った「スキル需要指数」トップ3(出典:paiza)

社会人の人気言語ランキング(過去5年間)。なお学生編は「Python」「Java」「C」がトップ3だった(出典:paiza)

[働く] 2024年度上半期に「賃上げがあった」人が51.9%、半数以上が不満(Indeed Japan、12月10日)
・2024年度上半期に「賃上げがあった」人は半数を超えた
・ただしその賃上げ率は「平均3.6%」で、「満足」は半数に満たない
・「希望賃上げ率」が最も高いのは40代

 正社員男女2400名(20~59歳)を対象とした「賃上げに関する意識調査」より。2024年の春闘では、物価高、人手不足感から、大企業を中心に「33年ぶりの高水準の賃上げ」と伝えられるが、実態はどうか。2024年度上半期に「賃上げがあった」人は51.9%だったが、賃上げがあった回答者の賃上げ率は「平均3.6%」(回答者全体では平均1.7%)、この賃上げ率に「満足している」人は49.7%にとどまった。賃上げの希望理由は、主にインフレ(物価上昇)に起因している。

 ⇒ 2024年10月は前年同月比2.3%の物価上昇だった。“値上げラッシュ”は今後もまだ続くと予想され、より多くの人が「満足できる」規模の賃上げが求められる。

2024年上半期に「賃金が上がった」人の割合。企業規模による格差は大きい(出典:Indeed)

賃上げを希望する理由は「物価上昇による生活費の負担増」がトップ(出典:Indeed)

「基本給が増えた」回答者に、昨年と比べて物価高の影響がどう変化したかを尋ねた。「影響が大きくなった」「変化なし」が多く、賃上げの実感が物価高に追いついていないことがうかがえる(出典:Indeed)

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