最後にAIを使ったコーディング補助ツールや、ノーコード・ローコードツールを4本紹介しよう。
Cursor
「Cursor」は、AIによるコード補完とチャット機能を統合した、開発者向けの次世代コードエディター。世界で最も人気のある統合開発環境である「VS Code」のすぐれたUI/UXを継承しながら、GPT-4の強力なAI機能を組み込むことで、効率的なコーディング体験を実現している。
Cursorはファイル全体やプロジェクトの構造を理解し、単なる入力補完を超えたコンテキストを理解した高精度なコード補完が魅力。関数やクラスの実装、テストケースの自動生成なども可能だ。
エディター内で直接AIとチャットすることにより、コードの説明や改善案を対話形式で得ることができる。
また、選択したコードブロックに対するリファクタリング提案機能で、より効率的で保守性の高いコードへの改善をサポート。
無料のHobbyプランで基本機能を試せるほか、月額20ドル(およそ3000円)のProプランでは無制限の補完や高速なAI処理が可能。月額40ドル(およそ3000円)のビジネスプランも用意されている。
どんな人におすすめ?
・VS Codeに慣れた開発者
・AIの支援を受けながら効率的に開発したいプログラマー
・コードの品質向上を目指すエンジニア
どんなときに使うのがおすすめ?
・コードの実装やデバッグを効率化したいとき
・AIとの対話でコードの改善案を得たいとき
・リファクタリングのサポートが必要なとき
Replit
「Replit」はウェブブラウザー上で動作する開発プラットフォーム。環境構築やソフトウェアのインストールは不要で、ブラウザを開くだけで開発を始められる。ローカル環境で動作する先述のCursorとは異なり、すべての開発作業をクラウド上で完結できる。
JavaScriptやPythonを含む16の主要プログラミング言語に対応しており、コードの入力から実行、デバッグまでをブラウザ上で作業し、作成したアプリケーションはそのままインターネット上に公開できる。
AIによるコード補完機能を搭載しており、入力中のコードに対して文脈を考慮した候補を表示する。コードの説明機能では、選択した部分を平易な言葉で解説し、改善案も提示する。OpenAIなど、外部のAIサービスと組み合わせた開発も可能だ。
複数人で同時に作業できるコラボレーション機能を備えており、ドキュメントの共同編集のような感覚でコードの作成や編集が可能だ。進捗の共有もワンクリックでできる。
セキュリティー面では、Googleによって強化されたインフラを採用しSOC 2認証を取得。きめ細かなアクセス制御や権限管理も実装されている。
基本機能は無料で利用可能だが、AI機能の制限解除や高度な機能の利用には月額25米ドル(およそ3800円)のReplit Coreへのアップグレードが必要となる。
2024年9月には新機能としてReplit Agentが追加され、自然言語による指示だけでアプリケーションの作成からデプロイまでを自動化できるようになった。これにより、プログラミング未経験者でもアイデアをアプリケーションとして実装できる可能性が広がっている。
どんな人におすすめ?
・環境構築なしですぐにコーディングを始めたい開発者
・チームでの共同開発をするエンジニア
・プログラミング学習者や教育者
どんなときに使うのがおすすめ?
・ブラウザーだけで開発からデプロイまで完結させたいとき
・チームでコードをリアルタイムに共有・編集したいとき
・プログラミングの授業やワークショップを実施するとき
Dify
「Dify」は、プログラミングの知識がなくてもマウス操作で機能を組み合わせることで、チャットボットやコンテンツ生成ツールなどのAIアプリを直感的に構築できるオープンソースプラットフォーム。
OpenAI、Anthropic、Microsoft Azureなど、主要な企業が提供するAIモデルを自由に選択し組み合わせることができるのが特徴。RAG(Retrieval-Augmented Generation)機能を搭載しており、社内文書やナレッジベースと連携したチャットボットの作成も可能だ。Google検索やSlack、画像生成AIなど、外部ツールとの連携機能も備えている。
ウェブブラウザーから直接、または自社のサーバーにインストールして使用できる。
ブラウザーでの利用はGoogleアカウントかGitHubアカウントがあれば基本機能は無料で使える一方、自社サーバーへのインストールは、機密性の高い情報を扱う場合に適している。
一定の条件下で商用利用も可能なので、保険、金融、不動産など、様々な業界でカスタマーサポートの自動化や社内の問い合わせ対応、文書作成の効率化などに活用されている。
どんな人におすすめ?
・ノーコードでAIアプリを作りたい事業者
・社内向けAIチャットボットを構築したいDX担当者
・外部AIサービスを統合したいシステム担当者
どんなときに使うのがおすすめ?
・社内文書と連携したチャットボットを作成するとき
・外部ツール(Slack等)と連携したAIアプリを構築するとき
・複数のAIモデルを組み合わせたアプリケーションを作るとき
bolt
「bolt」は生成AIを活用し、ブラウザから直接フルスタックアプリケーションの作成、実行、編集、デプロイを可能にするWebベースの開発環境。
フルスタックアプリケーションとは、ウェブサイトの見た目や操作画面(フロントエンド)から、データの保存や処理を行うサーバー機能(バックエンド)まで含む、完全なウェブシステムを指す。ECサイトを例にとると、商品一覧や注文フォームといった表の機能から、在庫管理や顧客データの処理といった裏の機能まで全てを含んだものだ。
従来のプログラミングでは複雑な開発環境の準備や専門的な技術知識が必要だったが、boltは自然言語プロンプトを入力するだけで、AIがコードを生成し、必要なライブラリのインストールから実行環境の構築まで自動的にやってくれる。
「Next.js」、「React」、「TypeScript」など、多様な最新技術の中から好みのスタックを選んでプロジェクトを開始できるのも特徴だ。選択した技術スタックに合わせて、AIが最適なコードを生成し、StackBlitzのWebContainers技術により、作成したアプリケーションをブラウザ上で即座に動作させることが可能。
エラーが発生した際もAIが自動的に検出して修正案を提示し、ウェブサイトの公開作業もボタン一つで実行できる。
利用料金はトークン制を採用。最も手軽な「Pro」プランは月額20米ドル(およそ3000円)で1000万トークンが利用可能、年間契約では最大17%の割引が適用される。
現時点ではブラウザの制約上、複雑なバックエンド機能の実装には限界があり、プロトタイプの作成や比較的シンプルな機能を持つウェブサイトの開発が主な用途となる。今後のアップデートでさらなる進化が期待される。
どんな人におすすめ?
・プロトタイプを素早く作りたいフロントエンド開発者
・AIの支援を受けながらWebアプリを作りたいエンジニア
・Next.jsやReactでの開発を行うフロントエンド担当者
どんなときに使うのがおすすめ?
自然言語での指示でWebアプリを開発したいとき
モダンなフロントエンド技術でアプリを構築するとき
シンプルなWebアプリのプロトタイプを作成するとき
AI開発ツールの使い分け
上記4サービスはどれもAIを活用した開発支援ツールだが、それぞれに異なる特徴がある。
Cursorはローカル環境で動作する高機能なコードエディター。VS Codeの使い心地を維持しながらAIによるコード補完や改善提案を受けることができる。主に既存の開発環境を強化したい開発者に適している。
一方、Replitはブラウザベースの開発環境で、環境構築が不要な点が特徴だ。例えば、プログラミングの講師が受講者全員に同じ環境を提供したい場合や、チームでコードを共有しながら即座にフィードバックを得たい場合などに効果的である。
DifyはAIアプリケーションの開発に特化しており、例えば人事部が社内規定に関する問い合わせ用チャットボットを作りたい場合や、カスタマーサポート部門が顧客対応ボットを構築したい場合などに、プログラミング知識がなくてもAIアプリケーションを作れる点が強みだ。
Boltは特にフロントエンド開発とプロトタイピングに焦点を当てており、「ソーシャルメディアのタイムライン風の画面を作って」といった自然な指示だけで、モダンな技術スタックを使用したWebアプリケーションを素早く作成できる。ただし、複雑なバックエンド機能の実装には向いていない。
これらのツールは、開発の目的や規模、必要な機能によって使い分けることで、より効率的な開発が可能となる。
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