環境保護のために、俺たちに何ができる? 「TOKYO GX ACTION BEGINNING~知るから始まる脱炭素~」レポート
吉野家、松屋、すき家……今なら牛丼が300円台で食べられる。 でも、20年後はいくらになっているんだろう
キャンペーン中ではありますが
牛丼が300円台の時代です
牛丼を食べることは、環境問題について考えることでもあるのです。たぶん。
飲食に限らず、何かと値上がりが目立つ昨今。あれも高くなった、これも高くなった……。ところが、牛丼チェーン店が“値下げ”のキャンペーンを軒並み仕掛けているのです。
吉野家は、10月9日から1週間限定で牛丼が100円引き。松屋は、8日からスマホのクーポンで牛めしが50円引き。すき家は、同じく8日からスマホのクーポンで牛丼全品が80円引きとなっています。
これにより、各社の牛丼(松屋は牛めしですが)の価格が軒並み300円台となりました。
かつては、牛丼は「安い外食」の代名詞でした。吉野家では、牛丼並盛が280円の時代もあったことを覚えている人も多いでしょう。
ところが、物価高や円安の影響で、牛丼チェーン店のメニューも値上げが続いているのはご存知の通り。今の吉野家の牛丼は、並盛498円(店内飲食の場合)。ぎりぎりでワンコインという価格ですから、200円台を知っている身からすると隔世の感があります。
もう、牛丼は「安い外食」とは言いにくくなってきているのかもしれません。
そんな時代での、値下げのキャンペーン。値上げで離れてしまった人たちを取り戻しつつ、新たな客層を増やすために有効な戦略の一つではありましょう。
一方で、これから先、この価格で牛肉を食べ続けられるかどうかはわかりません。こんな話をするのも、10月13〜14日の2日間、有楽町の国際フォーラムで開催されている「TOKYO GX ACTION BEGINNING〜知るから始まる脱炭素〜」の取材に行ったからなのです。
持続可能な牛肉の生産か
代替肉の普及か
牛は反芻動物です。反芻とは、食物を口で咀嚼し反芻胃に送って部分的に消化したあと、再び口に戻して咀嚼する……という過程を繰り返すことで食物を擦り潰し、消化する行為です。
反芻を繰り返すことにより、飼料を微生物が分解し、メタンガスが発生。牛のげっぷには、多くのメタンガスが含まれます。これが、地球温暖化の一因と言われています。
食用の家畜として牛を育てることは、環境問題とは切っても切り離せません。げっぷはもちろんのこと、牛を育てるには多くの水や飼料が必要ですし、畜産のための林地開発に伴う森林面積の減少も問題になっています。
もちろん、畜産に関わる人々や企業も、手をこまねいているわけではありません。さまざまな工夫でメタンを減らそうとしたり、環境問題に向き合ったりしています。具体的には、給与飼料の制御などによる牛の栄養管理、メタンを抑制する資材や添加物の活用、牛自体の育種改良や繁殖管理の工夫などが挙げられましょう。
余談ながら、すき家を傘下にもつゼンショーホールディングスは、牛丼を作成する過程で発生する牛脂からバイオマス燃料を精製し、グループ製造会社でボイラー燃料として使用するなどの工夫をしています。「牛丼の作成過程」からもサスティナブルな取り組みは可能なんですね。
ただ、そうなってくると、今の価格で牛肉が手に入らなくなることも考えられます。そうなれば、今はキャンペーン価格で300円台になっている牛丼が、将来は500円台、あるいは1000円を超えるという事態もまったくないとはいえません。
また、温室効果ガスを排出し、多くの水と土地の消費を伴う家畜の生産ではなく、植物由来の「代替肉」の生産を普及させていく未来も考えられます。もちろん、代替肉そのものを大量生産するにはどうしたらよいか、味そのものを食用肉に近づけていくにはどうするか……など、課題は多いのですが。
“持続可能な牛肉の生産”が進むのか、あるいは代替肉の存在がより大きくなるのか。牛丼の価格は、20年後はいくらになっているのでしょう。あるいは、どんな肉が使われているのでしょう。
今は、各チェーンで「300円台」で牛丼が食べられる。しかし、未来はどうでしょうか。吉野家、松屋、すき家……牛丼を看板商品にするチェーンたちは、どのような未来を選んでいくのか。今の価格帯を維持するのでしょうか? もっと高額になっているのでしょうか? それとも、提供されるものが“牛”丼ではなくなっているのでしょうか?
取材帰りに牛丼を食べながら、そんなことを思った筆者でした。今すぐに大きなことができるわけではないかもしれませんが、一人ひとりが問題意識を持ち、日々向き合っていくと、牛丼からでも世界がちょっとずつ変わっていく可能性も生まれるはずです。たぶん。
TOKYO GX ACTION BEGINNING〜知るから始まる脱炭素〜
DAY1:2024年10月13日(日)11:00〜19:00
DAY2:2024年10月14日(月・祝)10:00〜17:00
開催場所:東京国際フォーラム ホールE
入場料:無料
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