国は自治体システムの「ガバメントクラウド」への移行を進めているが、少しずつ遅れが目につきはじめた。
自治体やIT業界で働く人を除くと、このガバメントクラウドという言葉が耳慣れないものかもしれない。全国の自治体がさまざまな業務に使うシステムを保有・運用しているが、このシステムを国が提供するクラウドに移行し、2026年3月末までにシステム改修などにかかる経費を3割削減することを目指す政策だ。
しかし、2023年10月時点でデジタル庁が全国の1741自治体と47都道府県、計1788団体の状況を調べたところ、全体の約1割弱にあたる171団体が「移行困難」とされた。つまり、1割弱の自治体で、2026年3月末までのガバメントクラウドへの移行は間に合わないということになる。さらに、経費削減効果についても、すぐには効果が出ないケースもあるようだ。
人口の減少を踏まえると、地方自治体の業務のデジタル化を進め、効率化を図ることは避けて通れない課題だ。しかし、こうした大規模なシステムの移行は通常、時間がかかればかかるほど経費が積み重なっていく。こうしたコスト増に見合った、国と自治体のコスト削減効果が出せるのだろうか。
米国のIT大手への依存
国、自治体を中心とした公共部門に限った話ではなく、クラウドサービスについて日本の産業界と各レベルの政府は、米国のIT大手に大きく依存している。ガバメントクラウドについても、この依存体質が顕著に現れた。2022年度にデジタル庁がガバメントクラウドの対象サービスを募集したところ、以下の4サービスが選定された。
Amazon Web Services
Google Cloud
Microsoft Azure
Oracle Cloud Infrastructure
会社としては、アマゾン、グーグル、マイクロソフト、オラクルの4社ということになるが、いずれも米国の企業だ。この時点では、海外のサービスに過度に依存せざるを得ない状況を受け入れた形になるが、当時から経済安全保障の観点で、日本企業の育成と参入促進の必要性が議論されることになった。この結果、翌2023年度にはこの4社に加え、さくらインターネットが提供する「さくらのクラウド」が対象サービスに加わることになった。2024年度も別の企業が加わる可能性がある。
ガバメントクラウドをめぐっては、「海外の事業者が個人情報を保有することになる」との懸念も根強いが、デジタル庁は、サービスを提供する事業者は自治体が保有する個人の情報にはアクセスできないと説明している。
大都市で目立つ遅れ
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