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新清士の「メタバース・プレゼンス」 第74回

AIバブル崩壊をめぐって

2024年08月05日 07時00分更新

文● 新清士 編集●ASCII

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もしAIバブルが崩壊してもネガティブにはならない

 結局、今起きているのは「AIバブル」なのか。

 短期的に言えば、投資額が増えすぎて、収益性とのバランスが悪く、バブルだとも言える余地はあります。現在のAIをめぐる争いは、GAFAMを中心に巨大IT企業が将来のシェア争いを見越した競争になっているため、どこまで投資を続けられるかというチキンレース的な側面も持っており、限界が来るまで止まることはないでしょう。

 しかし、仮にバブル崩壊が起きても、整備されたインフラを利用して様々なスタートアップが出てくるので、結果的にネガティブにはならないという見方もあります。

 ゴールドマン・サックスでネガティブな立場のコヴェロ氏は、「企業の収益性が低下し始めたら、こうした実験への支出は真っ先になくなる」として、バブルが崩れればAIへの投資は止まるとの意見を述べています。しかしその一方で、大手IT企業自体にはドットコムバブル時代に比べて資金力があるために、「かつてに比べて問題にならない可能性もある」(コヴェロ氏)ともしています。

 また、AIの今後の普及に対する予測には、ポジティブとネガティブの両方の立場があり、両方の議論が錯綜していて、AIがどこまで浸透していくのかを予測することは、現時点では難しいと言えます。一方で、AIが新産業の雇用を次々に創出しているという段階にまでは、まだ進んでいないのも実情だとも言えます。

 

筆者紹介:新清士(しんきよし)

1970年生まれ。株式会社AI Frog Interactive代表。デジタルハリウッド大学大学院教授。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲームジャーナリストとして活躍後、VRマルチプレイ剣戟アクションゲーム「ソード・オブ・ガルガンチュア」の開発を主導。現在は、新作のインディゲームの開発をしている。著書に『メタバースビジネス覇権戦争』(NHK出版新書)がある。

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