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最新パーツ性能チェック 第441回

いまどきのゲーミングPCでマザー側の映像出力に繋ぐのはあり/なし?古の禁忌に踏み込む

2024年05月25日 17時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集● ジサトラユージ/ASCII

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メモリーやVRAM周りの挙動を観察する

 最後に、迂回出力をするとメモリー周りの挙動にどういった変化があるのか調べてみよう。ここではシングルプレイ状態で放置しやすいCyberpunk 2077を使用し、ビデオカード直出し時と迂回出力時でメモリー使用量やメモリーへのリード・ライト帯域、さらにはRTX 4070 Ti側のVRAM使用量(正確にはGPU Memory Allocatedの値)をチェックする。Cyberpunk 2077の画質設定は前掲の検証と同じである。検証はセーブデータを読み込んで約10分間放置。その際の各種データを「HWiNFO Pro」で追跡した。

メモリー使用量の推移:Cyberpunk 2077、1920×1080ドット時のもの

メモリー使用量の推移:Cyberpunk 2077、3840×2160ドット時のもの

 迂回出力をすることにより、物理メモリーの使用量が明らかに増大している。そして解像度がフルHDよりも4Kの方がメモリー使用量が増えているということは、迂回出力をさせるにあたりメインメモリー内に確保された内蔵GPU用のフレームバッファーが大きくなったことを示している。メインメモリー搭載量は16GBがスタートライン、32GB構成がより一般化してきている現状を考えると2GB程度増えたところで誤差のようなものだが……。

メモリーのリード・ライト帯域の推移:Cyberpunk 2077、1920×1080ドット時のもの

メモリーのリード・ライト帯域の推移:Cyberpunk 2077、3840×2160ドット時のもの

 メインメモリー(DRAM)へのリード・ライト帯域を見ると、解像度が低いほうがより多くのデータが読み書きされていることがわかる。そして迂回出力をするとライト帯域が明らかに増大。つまり内蔵GPUのフレームバッファーへ向けてデータが転送されていることを示している。つまり他にメモリーへアクセスしようとしている処理とバッティングする可能性が増大するわけで、状況次第ではカク付きの原因になる、と考えることもできる。

ビデオカード側VRAM使用量の推移:Cyberpunk 2077、1920×1080ドット時のもの

ビデオカード側VRAM使用量の推移:Cyberpunk 2077、3840×2160ドット時のもの

 最後はVRAM使用量だが、メインメモリー使用量とは対照的に迂回出力を行うと明らかに使用量が減る。ビデオカード直出し時よりも1GB程度(解像度4Kの場合)少なくなる感じだ。これもフレームバッファーが内蔵GPU側に移ったことを考えると妥当な結果である。

 つまり迂回出力をすることにより、VRAMにほんの僅かではあるが余裕を持たせることができる。特に生成系AI等でVRAMが足りない、という場合は迂回出力を試すことでVRAM不足を回避できる可能性はある。大容量VRAMを搭載した上位GPUに乗り換える予算はない、という場合に試してみる手もなくはない。

まとめ:デメリットのほうが多いが、理解した上なら使い道もある

 かなり長々と検証してきたが、迂回出力のメリット・デメリットをまとめると以下のようになる。

●メリット
・ビデオカード側のVRAM消費量を抑えられる
・迂回出力をしてもビデオカードの性能は9割以上(ゲームや設定による)は発揮できる
・ビデオカードを頻繁に入れ替える場合に映像出力ケーブルの付け替えが不要になる

●デメリット
・ゲームのE-Eシステムレイテンシーがより増大する
・メインメモリーの使用量が増える
・メモリーアクセスがより頻発するため、そこがカクつきの原因になる可能性がある
・GPUの付加機能の一部が利用できなくなる
・内蔵GPUから迂回させた出力はキャプチャーボックスでは上手く捉えられない可能性がある
・パワーオンからデスクトップが出るまで、時間がかかるようになる

 デメリットの最後2つは実際に筆者が体験したことだ。デメリットのほうが多いので本稿の結論としては「古の教え通り」、つまりビデオカードがある場合はそこから直出しがベストだ。長々読ませてそれか! と思った人もいるだろうが、少し前までは絶対禁忌とされていたものが、技術や設計の進歩により絶対禁忌から非推奨程度になった、という事は知っておいて損はない。

 実際に筆者は複数のビデオカードを交換しながらゲームでの動きを軽くチェックするための検証機では、迂回出力を利用している。デメリットがわかった上で使うなら、迂回出力も使い道はあるのだ。

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