「ビデオカードがある時にマザーボード側の映像出力に繋ぐ」のは
今でもNGなのか?
PC初心者がデスクトップPCを設置する時にやりがちなミスの1つとして、「ビデオカードがあるのにマザーボード側(オンボード側)にディスプレーを接続する」というものがある。
これをやってしまうとディスプレーに映像が出ない、あるいは映像が出たとしてもゲームのレンダリングがCPU内蔵GPUで行われてしまい、ビデオカードは休んだままになってしまう、というものだ。こういったトラブルを防ぐため、ビデオカードを装着したBTOメーカー製PCではオンボード側の映像出力がシールで封印されていることもある。
しかし、このような古の教えはハードやソフトの発展で乗り越えられるようになってきた。マザーボード側のHDMIやDisplayPort出力にディスプレーを直結しても、ビデオカードの性能は「割と」しっかり出せる。“マザーボード側の映像出力を利用した迂回出力”は完全にダメ、というわけではなくなったのだ。
先に結論を言ってしまうと、迂回出力は昔ほどの禁忌ではなくなったし、迂回出力をしてもゲームの性能はかなり出せる。しかし、迂回出力のデメリットもしっかり存在するため、ビデオカードから直でディスプレーに繋いだほうがメリットがある。では迂回出力に具体的にどんなメリット・デメリットがあるのか、それはどういう理屈で起こるものなのか? その辺の理屈が知りたい方はぜひこの先をお読み頂きたい。
内蔵GPUを経由して迂回出力ができる
まず迂回出力を成立させるには、以下のような要件が必要になる。
①ビデオカード
②内蔵GPUを搭載したCPU
③映像出力端子を搭載したマザーボード
どれもごく当たり前の要件だが、③については映像出力端子があっても迂回出力ができない場合もある。実際接続してみるまではわからないのだ。今回筆者はASUS製のB650マザーボード「ROG STRIX B650-A GAMING WIFI」で検証しているが、同じASUSのZ790マザーボード「ROG MAXIMUS Z790 HERO」でも迂回出力ができることを確認している。
その一方で、ASRock製のZ790マザーボード「Z790 Nova WiFi」ではBIOS設定(iGPU Multi-MonitorやPrimary Graphics Adapter等)に関係無く迂回出力はできなかった。マザーボードやBIOSの設計がこの差を生んでいると思われるが、それを事前に調べる術はない。
たまたま手にしたASUSのマザーボードがそういった運用ができる実装になっているだけ、という可能性もあるが実際にやってみなければわからない、という話にとどめておこう。
迂回出力に成功したとして、ディスプレーのリフレッシュレートはどうなるのだろうか? 今回はAMD「Ryzen 7 8700G」「Ryzen 7 7700X」、インテル「Core i9-14900K」の3種類のCPUを準備。AMDは前述のROG STRIX B650-A GAMING WIFI、インテルはROG MAXIMUS Z790 HEROを使用し、ビデオカードはZOTAC「ZOTAC Gaming GeForce RTX 4070 Ti Trinity OC」を準備した(詳細な環境は後述)。
これをASUS製360Hzディスプレー「ROG Swift 360Hz PG259QNR」に接続した際、ディスプレーのリフレッシュレートがどう変わったかをまとめたのが下表だ。PG259QNRとマザーボード側の映像出力を直結しており、PG259QNR以外のディスプレーは接続していない。
ポイントになるのはRyzen 7 8700GはHDMIもDisplayPortも普通に迂回出力ができた一方で、Ryzen 7 7700Xに関してはHDMI出力経由では映像が得られなかった。しかし、DisplayPort経由で接続したところRyzen 7 7700Xでも普通に迂回出力ができ、PG259QNRの上限であるリフレッシュレート360Hzでの駆動を確認した。
なぜRyzen 7 8700Gでは迂回できて7700Xではできなかったのか、HDMIだけ失敗するのはなぜかは不明だ。一方、Core i9-14900Kに関してはUSB Type-C(Thunderbolt 4)とHDMIの両方で迂回出力ができた。
どのパターンにおいてもディスプレーのリフレッシュレート上限まで使い切るにはDisplayPortが好適である。とはいえ、ディスプレーのリフレッシュレートが240HzまでならHDMIでも十分なパフォーマンスが出せるとも言える。
この連載の記事
-
第456回
デジタル
「Ryzen 7 9800X3D」は高画質設定でも最強ゲーミングCPUであることに間違いはなかった -
第455回
デジタル
「Ryzen 7 9800X3D」が最強ゲーミングCPUであることを証明する -
第454回
デジタル
性能が最大50%引き上げられたSamsung製SSD「990 EVO Plus」は良コスパSSDの新星だ -
第453回
デジタル
性能も上がったが消費電力も増えた「Ryzen 7 9800X3D」最速レビュー、AI推論の処理速度は7800X3Dの約2倍! -
第452回
自作PC
Core Ultra 200Sシリーズのゲーム性能は?Core Ultra 5/7/9を10タイトルで徹底検証 -
第451回
自作PC
Core Ultra 9 285K/Core Ultra 7 265K/Core Ultra 5 245K速報レビュー!第14世代&Ryzen 9000との比較で実力を見る -
第450回
デジタル
AGESA 1.2.0.2でRyzen 9 9950Xのパフォーマンスは改善するか? -
第449回
デジタル
Ryzen 9000シリーズの性能にWindows 11の分岐予測改善コードはどう影響するか? -
第448回
デジタル
TDP 105W動作にするとRyzen 7 9700X/Ryzen 5 9600Xはどの程度化ける? レッドゾーン寸前を攻める絶妙な設定だが、ゲームでの効果は期待薄 -
第447回
デジタル
Zen 5とTDP増でゲーム性能は向上したか?「Ryzen 9 9950X」「Ryzen 9 9900X」の実力チェック -
第446回
デジタル
「Ryzen 9 9950X」「Ryzen 9 9900X」は“約束された”最強のCPUになれたのか? ベンチマークで見えた利点と欠点 - この連載の一覧へ