このページの本文へ

最新パーツ性能チェック 第441回

いまどきのゲーミングPCでマザー側の映像出力に繋ぐのはあり/なし?古の禁忌に踏み込む

2024年05月25日 17時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集● ジサトラユージ/ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

入力遅延という罠もある

 さらに迂回出力時の画面出力は、一度ビデオカード上のGPUでディスプレーに表示する画面データを計算したら、それをCPU内蔵GPUが管理するフレームバッファーに移動させるという一手間が必要になる。

 迂回出力時にフレームレートが下がるのは、この画面データの転送処理が入るためでもあるが、この処理時間はゲーマーから見れば入力遅延、もっと正確にいえばEnd-to-Endシステムレイテンシー(E-Eシステムレイテンシーと略)増加に繋がる。

 そこでここではOverwatch 2とCall of Dutyについて、ビデオカード直出し時と迂回出力時でE-Eシステムレイテンシーがどう変化するかを検証する。E-Eシステムレイテンシーとは、マウスボタン押下から画面にその操作(例:FPSにおける発砲)が表示されるまでの時間を指す。詳しくは何ぞやという方はNVIDIA Reflexの記事(https://ascii.jp/elem/000/004/031/4031107/)をご一読いただきたい。

 本稿ではOverwatch 2/Counter-Strike 2/Call of Dutyの3ゲームにおけるE-EシステムレイテンシーをNVIDA「LDAT2」を利用し計測した。ディスプレーを360Hz駆動(PG259QNR)にする関係で解像度はフルHDのみ、E-Eシステムレイテンシーが増大する要素を排除するために画質はいずれのゲームも低設定とした。500回の射撃(やそれに準じる操作)を通じてサンプルを取得している。

 まずOverwatch 2だが、訓練場においてブリギッテ(肉弾系なので弾薬制限がないキャラ)を使用し、500回メイン武器を振り回した際のE-Eシステムレイテンシーを取得した。まず計測環境におけるフレームレートは以下の通りだ。

Overwatch 2:E-Eシステムレイテンシー計測条件下におけるフレームレート

 迂回出力にすることで平均フレームレートが下がるのは先の検証とまったく同じである。では実際観測されたE-Eシステムレイテンシーはどの程度の頻度で登場するかをヒストグラム化してみよう。

Overwatch 2:dGPU出力時におけるE-Eシステムレイテンシーの頻度分布

Overwatch 2:iGPU出力時におけるE-Eシステムレイテンシーの頻度分布

Overwatch 2のE-Eシステムレイテンシーから算出された基本統計量
dGPU出力 iGPU出力
Min 7.14ms 9.64ms
Avg 11.45ms 14.01ms
Max 17.58ms 18.95ms
σ 2.05 2.11
σ2 4.20 4.45

 ヒストグラムの山の出方を見れば一目瞭然だが、迂回出力をすることでE-Eシステムレイテンシーは2.5ms程度長くなる。60fps時の1フレームが16.67msだとすると僅かな差ではあるが、この2.5msは標的の追尾から射撃、回避といったあらゆる操作に対してかかるマイナス要因であることを忘れてはいけない。さらに迂回出力をすることでよりE-Eシステムレイテンシーがバラつくようになっている点も注目に値する。

 続いてはCounter-Strike 2のフレームレートだ。テストはマップ「Dust 2」のカウンターテロリスト側スポーン地点で実施した。画質はプリセットにおける最低とし、FSR 2に関してはそのまま利用している。

Counter-Strike 2:E-Eシステムレイテンシー計測条件下におけるフレームレート

 Overwatch 2よりも迂回出力時のフレームレート低下が小さい点は先の検証と同じである。ではE-Eシステムレイテンシーの頻度分布や基本統計量を見てみよう。

Counter-Strike 2:dGPU出力時におけるE-Eシステムレイテンシーの頻度分布

Counter-Strike 2:iGPU出力時におけるE-Eシステムレイテンシーの頻度分布

Counter-Strike 2のE-Eシステムレイテンシーから算出された基本統計量
dGPU出力 iGPU出力
Min 7.23ms 10.01ms
Avg 12.13ms 14.66ms
Max 17.52ms 19.74ms
σ 2.26 2.26
σ2 5.13 5.11

 Counter-Strike 2では迂回出力をしてもフレームレート的なインパクトは小さいものの、E-Eシステムレイテンシーの観点ではOverwatch 2と同程度の遅延が発生している。

 最後に検証するCall of Dutyだが、これは先のDLSS FGとAFMF二度づけ検証時と同じ設定・条件であるため、フレームレートのデータは前掲のものと同一だ。

Call of Duty:E-Eシステムレイテンシー計測条件かにおけるフレームレート(再掲)

Call of Duty:dGPU出力時におけるE-Eシステムレイテンシーの頻度分布

Call of Duty:dGPU出力、かつDLSS“バランス”&DLSS FG併用時におけるE-Eシステムレイテンシーの頻度分布

Call of Duty:iGPU出力、かつDLSS“バランス”&DLSS FG併用時におけるE-Eシステムレイテンシーの頻度分布

Call of Duty:iGPU出力、かつDLSS“バランス”&DLSS FGにAFMFも併用した条件でのE-Eシステムレイテンシーの頻度分布

Call of DutyのE-Eシステムレイテンシーから算出された基本統計量
dGPU出力 - Native dGPU出力 - DLSS FG iGPU出力 - DLSS FG iGPU出力 - DLSS FG&AFMF
Min 12.02ms 10.25ms 11.54ms 45.32ms
Avg 16.70ms 18.01ms 18.90ms 55.91ms
Max 23.07ms 25.67ms 26.52ms 67.57ms
σ 2.28 3.13 3.09 3.76
σ2 5.21 9.77 9.53 14.14

 DLSS系を一切利用せず、ネイティブ解像度でレンダリングし、ビデオカードから直で出力した時のE-Eシステムレイテンシーは非常にバラツキが小さく、遅延量も最も小さい。DLSS“バランス”とDLSS FGを付ければ当然E-Eシステムレイテンシーは若干長くなるが、 迂回出力をしても1ms未満の差にとどまる。

 しかし、DLSS FGとAFMFを併用するとE-Eシステムレイテンシーが著しく増大する。平均55msのE-Eシステムレイテンシーは60fpsの世界で考えると常に4フレームは遅れている計算になるため、eスポーツの世界ではかなりの不利となる。DLSS FGとAFMFを併用することでフレームレートも劇的に上がるため、ゲームの世界を動画に残したいがフレームレートが物足らない、という時には使えるかもしれない。

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

ピックアップ

ASCII.jpメール アキバマガジン

ASCII.jp RSS2.0 配信中