カプコンの新作オープンワールドアクション『ドラゴンズドグマ 2』が、いよいよ2024年3月22日に販売開始となる。対応プラットフォームはPlayStation 5/Xbox Series X|S/PC(Steam)で、価格は通常版のパッケージ版が9889円/ダウンロード版が8990円。ダウンロード専売のデラックス エディションが9990円だ。
本作では、オープンワールドの王道ファンタジー世界でポーン(従者)を従えながら自由に旅し、シングルプレイタイトルながら“他の誰かと冒険する楽しさ”が味わえる――そんな独自の魅力は従来のシリーズそのまま。
一方でストーリーは一新されており、主人公となる新たな「覚者」の誕生と宿命が描かれるため、ナンバリングタイトルではあるものの本作からプレイを始めても大丈夫だ。いずれにせよ、この春の注目大作タイトルのひとつと言えるだろう。
この記事では、メーカーから提供を受けたPC(Steam)版をもとに、発売に先駆けてゲーム本編をプレイした先行レビューをお届けする。ストーリーや探索要素のネタバレなどは可能な限り避けているので、興味を持っている人の参考になれば幸いだ。
当時プレイしたかった「ドラゴンズドグマ」はコレです
振り返ってみれば、初代『ドラゴンズドグマ』が発売されたのは2012年5月のこと。その後は拡張版『ドラゴンズドグマ:ダークアリズン』やオンラインゲーム『ドラゴンズドグマ オンライン』などをリリースしてきたわけだが、シングルプレイのナンバリングタイトルとしては、前作から10年以上の長い時間を経ての再登場となる。
当然ながら、この間にゲーム機やPCといったハードウェアの処理能力は大きく向上した。そして『ドラゴンズドグマ 2』と過去作の違いを語ろうとする時、“ハードウェアの進化”は無視できないポイントのひとつであるように思う。そもそも「ドラゴンズドグマ」シリーズが打ち出したユニークなコンセプトの数々は、そのようなハードウェアの性能の恩恵にあずかりやすいものばかりだったからだ。
たとえば、剣と魔法の世界、いわゆるハイファンタジー的な世界設定を存分に味わえる、広大なオープンワールドマップ上での冒険。最大3名のポーンを従えつつ、時には道行く旅人や多くのモンスターを交えての乱戦に発展するようなド派手なアクションバトル。
グラフィックスの質も含め、こうした要素をしっかり実現するにはそれなりのハードウェアパワーが必要になる。最新ゲームハードでも実現するのは大変なのだから、初代『ドラゴンズドグマ』が発売された2012年当時については言うまでもないだろう。
実際、過去に筆者がPlayStation 3でプレイした初代『ドラゴンズドグマ』時代のオープンワールドマップは、広さや本筋以外の遊びが十分でなく、ユーザーの期待に応えられているとは言えないものだったと記憶している。
「バトルはアクション性が高く楽しいが、マップはやや単調で、オートセーブなどのシステム面にもちょっと不便なところが多い。面白いし、やりたいことはわかるんだけど……」。おおむね、そんな感じの印象を抱くようなゲームだった。
では、『ドラゴンズドグマ 2』はどうか。ポーンを従えてあちこちを探索し、現れる多彩なモンスターを打ち倒しながらレベルを上げて装備を揃え、さまざまな人から受けるクエストをこなしたり、マップ上に点在するダンジョンに挑む……いざプレイしてみると、本作の根幹となるゲームの流れは以前のシリーズ作とほとんど変わっていない。
にもかかわらず、「ファンタジー世界で冒険する」という没入感はどの過去作よりも高く、まだ探索していない場所へ足を向けるたびに、多くの新鮮さが感じられた。「当時プレイしたかった『ドラゴンズドグマ』はコレだ」――そのように思えるだけの作品に仕上がっている、というのが本作をプレイした率直な感想だ。
まず、マップのビジュアルは抜群に美麗になったうえ、オープンワールドとしてもグッと広大になっている。本作の描画エンジンは、直近の「モンスターハンター」や「バイオハザード」シリーズでも使用されているカプコンの独自エンジン「RE ENGINE」。
PC版はリアルタイムレイトレーシングなどの高品質設定にも対応するなど、グラフィックスは現代のゲームとして十分な高水準だ(PCの高画質設定では要求するVRAMが大きいこともあり、それなりのGPUは必要になるが……)。
高低差が増したことで印象的なロケーションも増え、「そのあたりをなんとなく歩いているだけでも新しい発見がある」という、オープンワールドゲームらしい楽しみ方がしやすくなった。
ちなみにマップの広さは初代『ドラゴンズドグマ』の4倍程度まで広くなっているそうだ。ヴェルムント国の首都「ヴェルンワース」近くの雄大な自然が臨める丘陵はもちろん、入った途端に辺りが暗くなる鬱蒼とした森、怪しげな寒村や巨大モンスターの巣など、バリエーション豊かな地形が広がっている。
ストーリーの進行に従っているだけでは見つからないような場所もあるため、「自由に探索する」意義が大きいのも、オープンワールドゲームが好きなユーザーにとっては嬉しいポイントかもしれない。
また、ポーン関係のシステムは洗練され、より「ともに冒険する従者」らしい行動を取るように進化している。ポーンは自分で作成する「メインポーン」に加え、他プレイヤーの使用する「サポートポーン」を借りることもでき、メイン・サポートあわせて最大3人まで同行可能だ。
ポーンたちはバトルに貢献してくれるのはもちろん、勝手に会話したり、別のプレイヤーの世界での経験をもとに宝箱の位置を教えてくれたり、時にはクエストで示された次の目的地まで案内してくれるなど、冒険を賑やかに彩ってくれる。
特にポーン同士の会話はバリエーション豊かで、「商人に話しかけたのに何も買わないんですね」とか、「今のパーティー女だらけですね」とか、急に思いもよらぬことを言ってくるので、ポーンごとの性格やシチュエーションの組みあわせなど、つい新たな会話パターンを見つけたくなってしまう面白さがある。
また、今作で新たに実装されたポーンだけが習得する特殊技能「スペシャリティ」が攻略に役立つ場合も。どんなキャラクターを育成するか、その時々でどんなサポートを雇用するかは悩ましい。
また、シーンによってはバトルの規模も過去作を大きく上回るものになりえる。たとえば街道にはプレイヤーやそのポーン以外にも、警備をする兵士や放浪するポーン、牛車で拠点間を行き来する商人などが移動しており、そうしたNPCとともに隠れたゴブリンの大群との戦闘に巻き込まれれば大規模な乱戦に発展する場合もしばしば。
このあたりも向上したハードウェアの性能のなせる業だが、街の外の巨大モンスターから逃げようとしたのにモンスターがそのまま街中まで追ってきたりと、「ゲーム的な制約」に縛られにくくなったことで、遊びの幅ができ、ユニークなシチュエーションが生まれやすくなっている印象だ。
本作のランダムイベントの豊富さも、そういった傾向に拍車をかけている。見つける楽しみがあるので多くは言及しないが、たとえば街中で買い物をしていたら警鐘が鳴り響き、モンスターが街に侵入して戦闘になるようなイベントは代表的なものだろう。
ほかにもNPC同士の行動が喧嘩や殺しあいに発展するなど(本作はNPC一人一人に人物間の好感度が設定されており、プレイヤーへの対応にも影響する)、見慣れた場所でも想定外の出来事が起きることで、プレイヤーを飽きさせないわけだ。
先に「没入感」という話をしたが、ここまで解説した要素が複合的に組みあわさり、「その世界で冒険している」という感覚を強く味わえるのが本作の最大の魅力ではないかと感じる。
コンセプトの壮大さに技術が追い付いたという側面もあるとは思うが、シリーズの強みを残したまま過去作の課題をケアし、何より「求めていたドラゴンズドグマを、時間がかかってもちゃんとリリースしてくれた」ことを、1人のユーザーとしては非常にありがたく思う。
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