3D都市モデルの開発環境を構築した「PlateauKit + PlateauLab」がPLATEAU AWARD 2023グランプリ獲得
「PLATEAU AWARD 2023 最終審査会・表彰式」レポート
提供: PLATEAU/国土交通省
この記事は、国土交通省が進める「まちづくりのデジタルトランスフォーメーション」についてのウェブサイト「Project PLATEAU by MLIT」に掲載されている記事の転載です。
2024年2月24日、東京・竹芝のポートスタジオにて「PLATEAU AWARD 2023」最終審査会が行われ、最終審査に残った12組がプレゼンテーションを行った。
ファイナリスト・12チームがPLATEAU作品をプレゼン
2022年度に続き、第2回目となるPLATEAU AWARD。ハッカソンやライトニングトーク、ハンズオンほかさまざまなイベントを行ってきたPLATEAU NEXT 2023の集大成であり、約半年という募集期間が設けられていた。今回の最終審査会には、2023年12月の一次審査を通過してファイナリストとなった12チームが集結した。
審査は、各チーム5分のプレゼンテーションと質疑3分を行い、6名の審査員が評価を行う。審査員は齋藤精一氏(パノラマティクス主宰)、川田十夢氏(開発者 / AR三兄弟 長男)、千代田まどか:ちょまど氏(IT エンジニア兼漫画家)、小林巌生氏(Code for YOKOHAMA 共同代表)、松田聖大氏(Takram Japan 株式会社 デザインエンジニア/ディレクター)、内山裕弥氏(国土交通省 総合政策局 情報政策課 IT戦略企画調整官 / 都市局 都市政策課 デジタル情報活用推進室)。審査委員長は齋藤氏が務めた。
当日は、地域に新たな視点をもたらす各種ゲームアプリ、交通事故防止やドローンの利活用など社会課題に対するソリューション、PLATEAUをより便利に活用するためのユーティリティといった、さまざまな作品がグランプリを競った。
評価の基準は次の5点。
(1)3D都市モデルの活用
(2)アイデア
(3)UI/UX/デザイン
(4)技術力
(5)実用性
司会は、Project PLATEAUにも関わりの深い伴野智樹氏(一般社団法人MA 理事)、加茂春菜氏(株式会社ホロラボ/すまのべ!)が務めた。
グランプリはPLATEAUを誰もが使える未来へつなぐ「PlateauKit + PlateauLab」
栄えあるグランプリは、小関健太郎氏の「PlateauKit + PlateauLab」が受賞。トロフィーと賞状、賞金100万円が贈られた。
本業は哲学分野の研究者であり、デジタルツインの思想と技術にも関心があるという小関氏が目指したのは、誰もが気軽に触れられる都市空間プログラミング環境の実現だ。3D都市モデルの持つジオメトリ(形状を示す幾何情報)とセマンティクス(意味を示す属性情報)の双方をPythonで扱うためのライブラリやコーディング環境を開発した。
PLATEAUのデータフォーマットであるCityGML形式のファイルを変換して扱うための手段としては、ゲームエンジン用のSDKやGISソフト向けのコンバータが提供されている。しかし小関氏は、3D都市モデルのジオメトリ情報とセマンティクス情報をPythonで統合的に扱うことで、新たなユーザー体験の実現や潜在的なユーザー層へのリーチ、より広い領域での活用ができるのではないかと考えた。
体験のイメージはプレゼンでのデモ動画を参照するとわかりやすい。「PlateauKit + PlateauLab」では非常にシンプルかつインタラクティブなプログラミング体験を実現している。3D都市モデルのダウンロードから表示までは数行のコードで即時に完結する。また、コードによる解析にも対応しており、JupyterLabやJupyter Notebook(Pythonのコーディング環境)向けに実装したウィジェット上で、3D都市モデルの解析結果を即時に反映し表示できる。
PLATEAUのデータを内部にどう持たせるのかという点では、1つの建物に関する情報を1個のレコードとして持ち、Pythonから直接、その表を操作する。階層構造を持つ情報についてはJSON形式に変換する形になっているが、元の構造が使いやすいとは限らないケースもあるため、そのあたりはバランスを考えているという。
汎用的なプログラミング言語であるPythonのプログラミング環境にPLATEAUを統合することで、Pythonのさまざまなライブラリはもちろん、外部のAPIとの連携が容易となる。すでにPlateauKitとしてMITライセンスで公開されており、ドキュメント類も整備済みだ。
グランプリ授賞の理由を、審査委員長・齋藤氏は次のように述べた。
齋藤氏:デジタルの領域がフィジカルな領域にどうつながるかというところ、それがこれからのデジタルツイン時代に重要になると思っています。審査員の川田さんからは「プロンプトとプログラミングがバランスされた状態が、これから生成AIをどう活用していくかというところですごく重要になるだろう」という話があり、またちょまどさんからも「PythonでPLATEAUを使う上でのチュートリアルとして重要になる」という話もあり、審査会では満場一致でこの作品がグランプリになりました。
小関氏は次のようにグランプリ受賞の喜びを語った。
小関氏:昨年もファイナリストとしてここに来ていたので、今回の受賞は喜びも2倍という感じでとてもうれしいです。本当におもしろいからやっていることなので、そういったことを評価してもらえてすごくありがたいです。いつも新しいことをしよう、PLATEAUの本質を見ようということを思っているのですが、そこもいろいろ見ていただいた上での評価だと考えています。やはりコミュニティが非常に重要だと思うので、こういった形でこれからも貢献していけたらと思っています。