消え去ったI/F史の3回目はGPIBを取り上げたい。これに関しては、自宅でパソコンを使っていた「だけ」の方はあまりおなじみではないと思うが、職場や学校などでも使っていた方の中にはなじみがあったかもしれない。筆者の場合、大学で研究室に入った時にずいぶん使う羽目になった。
画像はWikipediaより抜粋
GPIBの原点は測定器を接続するために誕生したHP-IB
GPIB(General Purpose Interface Bus)は、もともと1965年9月にHPで開発された。それもあって当初はHP-IB(Hewlett-Packard Interface Bus)と呼ばれていた。このHP-IBの主な目的は測定器の接続である。連載509回でHPの歴史を紹介したが、HPは計測器関連から大きくなった会社であり、1960年代後半に初めてコンピュータビジネスに参入する。
計測器とコンピューターがそろうとどうなるか? と言えば、「測定したデータをコンピューターで取り込んで処理したい」というニーズが出るのは当然である。例えばデータの変動を連続的に測定したい、という場合にこれまでは目で測定値を読み取って、それを記録するという苦行を強いられていたわけだ。
もちろん測定間隔が1分ならこれも可能だが、毎秒では絶対に人手では間に合わない。ではどうするか? というと、プリンターなりプロッターなりに結果を記録し、測定後にその出力を人手で拾うという、これはこれで苦行が続いたわけだ。
ところが測定結果をそのままコンピューターに送り出せるなら、もっと測定間隔が短くできるし、そのデータの集計もずっと簡単である。間に人手が入らないので、データを書き写す際のミスなどもなくなるのでいいことづくめである。
先にプリンターなりプロッターなりに出力と書いたが、初期の場合は計測器にプリンターなりプロッターが内蔵(というか内蔵しきれないので外付けで、計測器のサイズが2~3倍になった)されていたが、個々の計測器にいちいちプリンターなりプロッターなりを付けるのはコスト的にも無駄が多い。
連載759回で紹介したセントロニクスは1970年に入ってからの規格なので、まだ1960年代後半は汎用的なI/Fもなかった。そこでHPは、こうした計測器やプリンター/プロッター、さらにはその他の周辺機器もまとめてコンピューターと接続できるようなI/Fを開発した。これがHP-IBというわけだ。
HP-IBの特徴は以下のとおり。
8bitのパラレルバスでデータ転送。最大転送速度は1MB/秒(つまり信号速度は1MHz)だが、実効転送速度は250~500KB/秒程度。
共有バス方式。後述するがアドレスそのものは31(2Byteアドレスでは961)個設定可能だが、実際に1本のバスに接続できるデバイスは15台まで(うち1台はホストになるので周辺機器や測定器などは最大14台という計算に)。共有バスなので通信は当然半二重方式。
Controller/Talker/Listenerの3種類のデバイスがある。Listenerはデータを受け取るデバイスであり、最大14個のListenerが1本のバス上で同時に受信待機できる。一方Talkerはデータを送信するデバイスで、1本のバス上では同時に1台だけがTalkerになれる。このTalker/Listenerの動作を制御するのがControllerで、複数台のControllerが1本のバス上に存在することは可能だが、バスの制御をできるのは一度に1台のControllerのみである(このバス制御を行なうものをSystem Controllerと称する)。ControllerはTalker/Listenerの機能を持つことも可能である。
信号線は合計16本。うち8本がData(DIO 1~8)、3本(DAV/NRFD/NDAC)が転送のハンドシェイク用、5本(IFC/ATN/SRQ/REN/EOI)が管理用となっている。
コネクターは24ピンのRibbon Type。HP-IBが標準規格化されていく中で、25ピンのD-Subも追加されたが、24ピンのRibbon Typeの方が一般的だった。ちなみに信号線は16本だけで、余った8なり9本のピンは全部GNDになっている。
複数台接続の場合、複数のコネクターを重ねる形になる。下の画像のように、もともとそれぞれのコネクターは両面に端子が出ており、またネジ穴も重ねてねじ留めできるようになっている。
ちなみにケーブル長の制限としては、「全部あわせて20m」となっている。上の画像の構成なら4本のケーブルが出ているので、最大でも5mまでということになる。もっとも実際は4mが普通に購入できる最長で、これを超える場合は(非標準の)エクステンダーを挟む必要がある。以上が、HP-IBの特徴だ。
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