10カ国調査、チャット/メール/会議……集中力を途切れさせる原因や解決策を提示
仕事中の“集中力の途切れ”で日本は25.8兆円の損失、Dropbox調査
改善策:「ツール」と「職場戦略」、そして「柔軟な選択肢」
今回の調査では、一般社員よりも管理職のほうが、より多く集中力の途切れの影響を受けていることも明らかになっている。一般社員の553時間(69日分)に対して管理職は683時間(85日分)と、年間で130時間も多く時間を損失しているという結果だ。岡崎氏は「管理職の広範にわたる業務の中で、一般社員よりも集中力の途切れが発生しやすい状況ができている」と分析する。
そうした状況の中で現在、高い期待が集まるのがAI/生成AIツールだ。今回の調査でも「ルーチンワークの自動化」(41%)、「書類やレポートの要約」(30%)、「情報の検索や整理」(28%)を上位として、AI関連ツールを利用したいという声が挙がっている。
今回の調査結果から得られた「学び」として、岡崎氏は「集中力の維持につながる改善策」3つを提示した。
「まず、すべての従業員が勤務場所にかかわらず、仕事に成功するために必要なツールとインフラにアクセスできること。これは絶対の前提条件となる。ただし、ツールを揃えるだけでは業務はなかなか改善しない。先ほどいろいろな割り込み(中断)が発生すると説明したが、それを防ぐために、たとえばミーティングの時間を工夫する、ミーティングの準備のやり方を変えてみるなど、『職場戦略』と言うと大げさだが工夫の積み重ねを行う。そして、従業員が最適な場所を選択できる柔軟性を提供する。勤務場所を問わず働けるツールをすでに持っているので、集中したいとき、あまり集中しなくてもいいときなど、業務の性質に合わせて、オフィスだけでなく在宅勤務、ハイブリッド、あるいはサテライトオフィスなどを選択できるようにすればよい」(岡崎氏)
Dropboxもさまざまな新ツールを投入、生成AI活用への投資も
Dropboxでは「スマートな働き方をデザインする」をミッションに掲げ、特にコロナ禍以後は「バーチャル・ファーストな働き方」を提唱するなど、働き方のデザインという問題に取り組んできた。
そうした取り組みのひとつとして、製品に新しい働き方のデザインを組み込むことも行っている。たとえば、短いプレゼンテーションや操作説明の動画を簡単に収録、共有することで非同期コミュニケーションを円滑化する「Dropbox Capture」、ドキュメントや動画の共有に加えて閲覧状況の追跡が行える「Dropbox DocSend」などを提供しているほか、最近ではDropboxのWeb UIを強化して、ユーザーがいくつものツールを切り替えて作業する無駄を減らそうとしている。
そうしたツールの中でも、岡崎氏が特に強調したのが最新の「Dropbox Dash」と「Dropbox AI」だ。
Dropbox Dashは、Dropbox上に保存されているファイルだけでなく、複数のクラウドアプリケーション(SaaS)にある情報を一括して検索できるユニバーサル検索ツールだ(現在一部の国で英語版を提供中、日本語対応は未定)。AIによって検索結果の最適化が行われるほか、将来的には生成AIを使った質問応答機能も搭載予定だという。岡崎氏は、いつでもショートカットキーひとつで検索ウィンドウが立ち上がり、接続されたすべての情報ソースから関連情報を収集してくれるため、集中力を維持したままで作業を継続できると説明した。
「皆さんが日々仕事をされる中では、ローカルやDropboxに保存されているファイルだけで必要な情報が完結するということはほとんどない。たとえばSalesforceであったり、Googleドキュメントであったり、また別のタスク管理ツールだったりに情報が分散している。『今日の打ち合わせに必要な資料はどれか』というときに、これらのツールで横断検索ができることで、必要な情報が瞬時に検索できる」(岡崎氏)
Dropbox AIは、生成AIとDropbox上のコンテンツを使って質問応答をしたり、契約書や会議記録などの概要を要約して見せたりする機能を提供する(現在一部の国でアルファ版を提供中、日本での展開は未定)。
「Dropboxに格納しているたくさんのファイルから、たとえば『今年の経営目標は何か』と聞くと、それに関連するドキュメントを探し出し、概要として『この部分に書いてあります』といったことを回答してくれる。さらにはDropboxだけでなく、Salesforceなど(の接続したクラウドツール)の情報も集めていく。そういう賢いアシスタントとして使えるツールだ」(岡崎氏)
なおDropboxでは、AI/生成AIをプロダクトに組み込むにあたって、責任あるAI活用のための「原則」の公開、NVIDIAとの提携によるDropbox独自のカスタムモデル構築、トラフィック増大に備える400Gbpsネットワークへのアップグレードといった投資を行っていると説明した。
Dropboxのこうした取り組みを総括して、岡崎氏は次のように語った。
「Dropboxの考えている世界観は、皆さんのクラウドを整理することで、集中力の途切れを最小化していこうということ。先ほど、会議の間に資料が見つからずにそれが後を引く――という例を挙げたが、Dropbox Dashを使ってすぐに検索ができれば、そうした問題がなくなる。こういうかたちで少しずつ、皆さんの積み残しの作業を減らし、集中力の途切れを最小化していくことができればいいと考えて、製品化を進めている」(岡崎氏)
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