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攻めも守りも知財から スタートアップ経営者こそ高めたい「知財マインド」のポイント

「特許がビジネスの武器になる スタートアップ、中小企業向け知財セミナー by IP BASE in 豊田市」レポート

特集
STARTUP×知財戦略

提供: IP BASE/特許庁

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誰もが知っておきたい特許の基礎知識 ~特許を武器にしたビジネスの立ち上げ~

 さくら国際特許法律事務所 パートナー弁理士 森岡智昭氏による講演では、「誰もが知っておきたい特許の基礎知識 ~特許を武器にしたビジネスの立ち上げ~」と題し、スタートアップの経営者が知っておくべき知財の基礎知識を、(1)なぜ特許なのか?、(2)パラダイムシフト/エコシステム、(3)身近な事例――の3つのトピックで解説した。

さくら国際特許法律事務所 パートナー弁理士 森岡 智昭氏

(1)なぜ特許なのか?

 最初のトピック「なぜ特許なのか?」では、ビジネスにおける知財の重要性と、スタートアップの経営者が知財マインドを高めるためのポイントを解説した。

 知的財産には、特許庁が所管する特許権、実用新案権、意匠権、商標権のほか、営業秘密、著作権、限定提供データなどさまざまなものがある。企業の価値には有形資産と無形資産があり、無形資産を構成するのがこうした知財だ。米国では大手企業の企業価値の9割以上を無形資産が占めており、これから企業が成長していくには無形資産の質を高めていくことが重要になる。

 特にスタートアップのように、まだ売上や人材が少ない時期ほど、「アイデア」という無形資産の経営に対する相対的重要性は高い。オープンイノベーションなど他社との連携では知財が交渉力に影響する。また他社の知財を侵害してトラブルになるケースもある。

 知的財産を持つことは、企業価値を高める強力な「武器」になると同時に、事業で生じるさまざまなリスクに備える「防具」になる。経営者は、事業のなかに知財に関する「リスクとチャンスが隠れている」ことに気付けるかどうか、「知財マインド」を持っておくことが重要だと森岡氏は指摘する。

 知財マインドを高めるには、知財専門家との付き合い方がポイントだと森岡氏は話す。知財専門家の支援の形として、スポット型と伴走型がある。スポット型は、商標や特許出願するときだけ弁理士や事務所に手続きを依頼する形だ。この場合、普段は知財について相談できず、知財マインドが育ちにくい。一方、伴走型では知財の使い方から専門家に相談ができ、知財戦略を考えていくことで知財マインドの獲得につながる。

(2)パラダイムシフト/エコシステム

 次のトピック「パラダイムシフト/エコシステム」では、社会の価値観や環境の変化に応じた知財戦略の考え方について解説した。

 ここ10年で、サブスクリプションサービスやチャットボット、電子決済、動画配信サービス、Web会議が普及し、ライフスタイルや考え方は大きく変わった。世の中が劇的に変化するときは、ビジネスの価値観、スピード感、需要と供給の関係も大きく変わる。

 需要と供給の関係では、20世紀は需要のほうが供給よりも大きかったが、現代は技術や製品が優れていても、消費者に選ばれなければ売れない時代になっている。従来型のビジネスモデルは通用せず、知財戦略に関しても、新しい価値を生み出す仕組みを構想することが必要となる。

 そこで最近は新しい価値創造の手法として「デザイン思考」が提唱されている。自分たちの「使える資源」として有形、無形の資源だけでなく他社の資源も活用しながら(オープンイノベーション)、ユーザーが求める価値と自分たちの資源を結びつけて「ビジネスモデル」を構築し、人々の潜在的な欲求や目的、本音が満たされる体験を提供する――こうした全体像をデザインすることが大事だ。

 パラダイムシフトが起こると知財活動も大きく変わってくる。従来型の伝統的な知財活動では、自社の事業領域全般について権利取得して特許網を築くことが重要だ。この手法はいまでももちろん有効である。これに加えて、新しい知財活動では、自社事業だけでなく周辺領域にも目を配り、事業のエコシステム全体を見て幅広く情報収集や分析を行ない、自社の強みに集中して権利を強化することが重要になるのだという。

(3)身近な事例

 最後に、愛知県で話題になった知財に関する事件として、YouTuberによるアニメやゲーム動画の無許可公開や、飲食店のロゴが有名店のロゴに類似して炎上したケースを紹介した。この2例は、いずれも本人には悪意がなく、知財の知識がなかったために起こっている。無用なトラブルを防ぐためにも経営者は知財意識を持っておくことが欠かせない。

 特許庁のスタートアップ向けポータルサイト「IP BASE」には、スタートアップが知っておくべき知財の基礎知識や事例集が公開されているので、ぜひ参考にしていただきたい。

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