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スピーディー末岡のMobile&Mobility最速最前線 第10回

ジャパンモビリティショー、“走りの未来”が見えないクルマが多くて一抹の寂しさを覚えた

2023年11月01日 12時00分更新

文● スピーディー末岡

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 速いもの大好き、スピーディー末岡です。東京ビッグサイトで11月5日まで開催中の「ジャパンモビリティショー」(以下JMS)に、初日の25日に行ってきたので、その内容から筆者が感じたことをお伝えしたいと思います。

モビリティショー

◆海外勢はBMW、メルセデス、BYDのみ

 JMSの前身は言うまでもなく、2019年まで開催されていた「東京モーターショー」です。今年から自工会(一般社団法人 日本自動車工業会)の豊田章男会長が音頭を取り、モーターショーとして自動車に限定するよりは、モビリティーとすることで様々な産業も一緒になって、来場者に「未来の日本」を体験してもらう場として開催されることになりました。

 東京モーターショーといえば、ドイツのフランクフルトショー、アメリカのデトロイトモーターショと並び、世界三大モーターショーのひとつとされていました。長らく日本は世界の自動車メーカーから注目されるマーケットとして、モーターショーでは様々なメーカーが出展していました。しかし、2008年のリーマンショックの影響から、海外メーカーの出展数はどんどん減っていき、日本の経済成長も止まった結果、コロナ前の2019年はメルセデス・ベンツ、ルノー、アルピナの3社だけになっていました。

モビリティショー

メルセデス・ベンツのコンセプトカー「EQG」。GクラスのEV版で、来年にはグローバルで発売予定とのこと

 そして今年のJMSです。日本のメーカーは豊田章男会長の大号令のもと、全メーカーが参加していますが、海外勢はBMW、メルセデス・ベンツ、そして初出展の中国・BYDのみでした。何度も出展していたアルピナはBMWのブランドになったせいか今回は欠席。ルノーも展示自体はあったのですが、JAIA(日本自動車輸入組合)のブースでというカタチでした。フォルクスワーゲングループ(アウディ、ベントレー、ポルシェ、ランボルギーニ、フォルクスワーゲンなど)も、ステランティス(プジョー、シトロエン、アルファロメオ、クライスラー、フィアットなど)も出展ナシ! だったのです。

 JMSと名称を変更して、475社(サプライヤーやスタートアップ含む)という過去最大の出展社が集まったそうですが、輸入車は3メーカーのみ(海外メーカー全体では19社)。クルマ好きとしてはこれほど寂しいものはありません。かなり前になりますが、フェラーリを始めとするスーパーカーや、韓国のメーカーがこぞって出展していた頃が懐かしく……。ちなみに、ほかの海外メーカーは上海モーターショーには出展しているので、日本は優先的なマーケットではなくなっているのでしょう。ここまで日本市場は魅力がなくなってしまったのかと、クルマ好きとしては気分が落ち込みました。これが現実なのだと。

モビリティショー

トヨタの新社長、佐藤恒治氏も登壇してプレゼン。スポーツカーやSUVのEVを発表した

◆コンセプトカーに心がときめかなくなった

 そしてもうひとつ、ガッカリポイントがあります。好みの問題もあるでしょうが、心ときめくコンセプトカーがなかったこと。たしかに昔から「俺の考えた未来のクルマ」みたいな、どう考えても市販する気ないだろというコンセプトカーはありましたが、それでもいずれ公道を走るであろうクルマが展示されていたものでした。とくにワールドプレミアとしてアンベールされるクルマはその傾向が強かったのですが、JMSでは奇抜なコンセプトカーばかりで、「どうせハリボテなんでしょ?」と、見ながら醒めていました。

 今年のJMSでいえば、日産のGT-Rコンセプトもどきも、マツダのロータリーエンジン搭載のコンセプトも、「どうせ出ないんだろうなあ」というデザインで、夢のクルマではあるけれど、昔のように「うおおおお! 走ってるトコ、早く見たいぜ!」と興奮できないのは、年のせいもあるかもしれません。でも、日産「R35 GT-R」のように、コンセプトモデルから大きく変更せずに発売されたり、いすゞの「ビークロス」のようにモーターショーで好評だったからデザインそのままで出した、みたいなクルマがもっと見たいんですよね。

モビリティショー

出す気ないだろ! と思わず突っ込んでしまった日産のコンセプトカー「Nissan Hyper Force」。タケヤリデッパみたいって、昭和の人しかわかりませんね

モビリティショー

こちらはスバルのコンセプトカー「SPORT MOBILITY CONCEPT」。なんでEVはみんな細長い目になるのだろうか

 クルマの展示会が難しいのはわかります。クルマは走ってなんぼなので、置いてあるだけのクルマを見ても外装と内装しかチェックできないので、肝心の「走り」が見せられないのです。だからこそ、趣向を凝らしたコンセプトカーや展示で見せているのでしょう。

 また、コンセプトカーはあくまでコンセプトなのでメーカーの技術力を見せるためのものだから、発売を前提にしていないのは理解できるのですが、たとえば1000馬力出るクルマなら1000馬力で走っている姿を想像したいじゃないですか。今回見たコンセプトカーからは、それらが想像できなかったのです。

◆イベント自体はテーマがぼやけたが洗練されていた

 これまでネガティブな印象を書いてきましたが、イベント自体は2019年以前と比べても遜色のない、むしろ洗練された感のある展示で、来場者は楽しめるでしょう。とくに今回の目玉である「TOKYO FUTURE TOUR」は次世代モビリティへのイメージを抱かせてくれる演出で、クルマに興味がない人でも楽しめるようになっていました。

モビリティショー

TOKYO FUTURE TOURでの演出。ちょっと東京オリンピックの開会式を思い出してしまった

 また今回は、モーターショーではなくモビリティショーとしたため、やや風呂敷を広げすぎた感もあり、テーマがぼやっとしてしまうのでは、という心配もありましたが、二輪と四輪を一緒に展示したり、巨大ドローンが登場したり、電車が置いてあったり、とくにHondaブースではHondaJetの飛行機のモックが置かれていて操縦席に座れるなど、これまでのモーターショーでは体験できなかったこともできるようになったことは最大のメリットでしょう。

モビリティショー

こちらはKDDIも協力している、災害時のモビリティの動きを見せるショー

 それに平日にも関わらず、連日たくさんのお客さんが来場しているらしく、筆者が行ったプレスデーより多いとの話も聞きます。そう、筆者の好みに合わなかっただけで、この方向転換は間違いではなかったのです。EVのコンセプトカーでワクワクできないのは、筆者の価値観が時代遅れだからでしょうね。アップデートしないと……。

 また、各所で開催されているイベント(トークショーやライブなど)も多く、1日で回りきれないのは間違いありません。全部見るにはそれこそ毎日通うくらいしないと無理です。過去最大の出展社数は伊達ではありません。

 筆者のようなちょっと偏ったクルマ好きには物足りないかもしれませんが、単純にクルマが好き、乗り物が好き、なにより未来の日本に興味があるという人は、11月5日までに足を運んでみてはいかがでしょうか。

筆者紹介───スピーディー末岡

 アスキースマホ総研主席研究部員。速いものが好きなスペック厨で、スマホ選びはスペックの数字が優先。なので使うスマホは基本的にハイエンドメイン。クルマはスポーツカーが大好き、音楽はヘビーメタルが大好きと、全方位で速いものを好む傾向にある。スマホ以外では乗り物記事全般を担当している。

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