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生成AI開発を加速するAmazon Bedrockがいよいよ東京リージョンへ

「デジタル棟梁」の実現に向け、竹中工務店がAmazon Bedrockを試用

2023年10月03日 16時30分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真提供●AWS

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建設業界の課題にデジタル化で挑む竹中工務店から見た生成AI

 Amazon Bedrcockを利用するゲストのスピーカーとして登壇したのは、竹中工務店 執行役員 デジタル室長 博士(工学)の岩下敬三氏。創業1610年、創立1899年という長い歴史を持つ竹中工務店は、一貫して建設事業を手がけており、現在では建築物のみならず、広くまちづくりの企画・計画、建設、維持・運営まで行なっている。

竹中工務店 執行役員 デジタル室長 博士(工学)の岩下敬三氏

 建設資材の高騰、カーボンニュートラルとともに、建設業界の大きな課題になっているのは生産性の向上だ。IT・自動化を進めてる他業界に比べ、建設業界は1990年代から生産性が横ばいのまま。少子高齢化の影響で労働力が不足しているのに加え、来年からは改正労働基準法の適用により、年間の総労働時間に上限が設けられる。「他産業と同じように、建築業界もデジタルの力を借りて、生産性を高める必要がある」と岩下氏は指摘する。

建設業界では生産性が大きな課題

 こうした中、竹中工務店は建築事業のデジタル化に取り組んでおり、定型業務の自動化やBIM(Building Information Modeling)を用いたプロジェクトデータの活用、蓄積されたデータの可視化、分析、予測などを進めている。たとえば、AIの事例では作業所の成功管理に必要な人員を予測し、BIでは各工事現場の建設技能労働者の見える化を行なっているという。

 生成AIの活用においては、デジタルによるベテランの知識や経験の継承を推進しており、社内のルールや標準のみならず、ベテランのナレッジをAIに集約した「デジタル棟梁」で全社員への育成を行なっていくという。「一般常識を持っていて、情報をわかりやすく整理し、解説してくれることに加え、社内の膨大な情報をナレッジとして抱え、専門的なアドバイスができることを目指している」と岩下氏は語る。

社内のナレッジを蓄えたデジタル棟梁の取り組み

 これを実現するに必要な要件として、岩下氏は、「セキュリティや著作権を気にせず、安心して使えること」「用途に応じたカスタマイズしやすいこと」「今後の進化に対応できる持続的な基盤であること」の3つを挙げる。そして、この要件を満たす可能性が高いということで、同社では6月からAmazon Bedrockを試行してきたという。

基盤モデルのみと専門知識追加で回答を比較したら?

 Amazon Bedrockでは「Playground」と呼ばれるGUI画面から、基盤モデルを選択し、評価することが可能になっている。たとえば、1300文字のプレスリリースを要約するという事例の場合、Anthropic Claude v2とAI21 Lab Jurassic-2という2つの基盤モデルで成果物を比較することができる。

 さらに前述したデジタル棟梁を実現するため、一般常識に加え、自社の業務ルール、専門知識を生成AIに持たせて、質問に答えさせるRAG(Retrieval Augmented Generation)構成を実装したという。社内ルール、技術標準、ノウハウなどの専門知識をナレッジDBに追加。機械学習を利用することで、自然言語で検索できるKendraで検索させた結果をAnthropicを用いたBedrockを生成AIに取り込み、回答が生成されるという仕組みだ。

企業固有の情報を追加したRAG構成でのBedrockの試用

 試しに「暑中にコンクリートを打設するにあたっての留意点」を聞いたところ、基盤モデルのみでは具体的な説明が不足していたが、国土交通省から提供されている「公共建築工事標準仕様書(令和4年版)」を専門知識として追加したRAGプロトタイプでは、数値などで具体的な説明が行なわれ、回答を生成するのに用いた参考ドキュメントも明示できるという。

 岩下氏は、「企業内の情報を知識として持った生成系AIは、多くの企業が求めていると思います。Bedrockは複数のモデルを使えること、サーバーレスで環境の立ち上げが早いこと、AWSのマネージドサービスの1つなので、既存のAWSのサービスと連携させ、目的にあったシステムを作りやすいところにメリットを感じました」とまとめる。その上で、Amazon Bedrockに対するリクエストとして、日本語や長文対応など特徴ある基盤モデルの拡充による多様化、音声や映像、3Dデータなどのマルチモーダル対応などを求め、持続性の高い生成AIサービスとしての成長に期待を示した。

 続いて、9月1日に生成AIの社会実装に向けて提携を発表したKDDIが登壇。基盤モデルに関しては協調領域としてパートナーシップを推進し、分野型モデルは競争領域として自社開発やスタートアップの連携を推進していくという大規模言語モデルの開発スタンスについて説明。その上で、スタートアップの生成AI開発や企業・自治体での生成AI活用を支援する取り組みや体制、またKDDI自身でのAmazon Bedrockの取り組みなどを披露した。

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