このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

2030年に医療・教育・農業の分野で520万人の雇用創出

国内中堅中小企業のクラウド活用が1.9兆円の生産性向上を生む ― AWS調査レポート

2023年10月23日 07時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 アマゾン ウェブ サービス ジャパンは、2023年10月19日、アクセンチュアと共同で実施した調査レポートに関する記者説明会を開催した。

 「日本においてクラウド主導経済が現実のものに:中堅中小企業(MSME)を通じてクラウドが経済と社会に与えるインパクトとは」と題する本レポートは、日本に加えて、オーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、インドネシア、インド、韓国、ニュージーランド、シンガポール、英国、米国の12か国を対象としたグローバル調査に基づくもの。

 なお本レポートでいう「中堅中小企業(MSME:Micro Small & Medium Enterprises)」とは、従業員数1~250人の企業やスタートアップと定義される。現在日本において、全企業の99%以上を占め、民間の労働力の69%を担い、国内総生産の約50%を支える、まさに経済活動の担い手だ。

 アマゾン ウェブ サービス ジャパンの執行役員 パブリックセクター技術統括本部 統括本部長である瀧澤与一氏は、「中堅中小企業は、創造的破壊を生み出す源泉となっており、新旧の技術を駆使して、国内経済のギャップを埋め、新しい製品やサービスを世の中に輩出する企業体。彼らをクラウド技術で支援することは、大きな経済利益を生み出し、社会課題を対処するイノベーションの創出を促す」と、その存在の重要性を強調する。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 執行役員 パブリックセクター技術統括本部 統括本部長 瀧澤与一氏

クラウド活用で1.9兆億円の生産性向上、520万人の雇用を創出

 レポートを実施した背景について、「中堅中小企業は、OECD加盟国全体でも国内総生産を支え、社会問題に取り組む上で重要な役割を担うが、イノベーションの担い手としては注目されていない。そこで中堅中小企業がクラウドに移行することで得られる潜在的なメリットを検証し、経済的、社会的恩恵を最大限に引き出すための知見を導き出すべく調査に着手した」とAccentureのStrategy and Consulting Managing Director and Economic Insights LeadであるAaron Hill氏は説明する。

Accenture Strategy and Consulting Managing Director and Economic Insights Lead Aaron Hill氏

 調査では、主要な社会的分野である「医療」「教育」「農業」の各分野において、中堅中小企業がクラウドを活用することで、いかに経済活動に貢献し、社会的成果をあげるかに着目した。「医療、教育、農業は、社会に大きなインパクトを与える分野で、テクノロジーの進歩の恩恵を受ける。これらの分野における生産性向上が、世界のより広範な社会目標となっている」とHill氏は補足する。

 2030年には、医療、教育、農業の分野全体において、クラウド技術を導入する日本の中堅中小企業は、年間最大1兆9000億円相当の生産性向上効果を創出すると予測された。さらにこれらの中堅中小企業により、2030年に520万人の雇用が生み出される予測で、この数は日本の総雇用者数の7%に相当する。

医療、教育、農業の分野全体で創出する生産性向上効果は1兆9000億円に

520万人の雇用が生み出される

 特にインパクトが大きいのが、2030年に1兆2000億相当の生産性向上効果が見込まれる医療分野だ。クラウド技術を活用した中堅中小企業は、複雑さや距離といった医療へのアクセスを克服し、医療のイノベーションの最前線に立って、将来にわたり社会に貢献するという。さらに2030年には国内で6000万件のオンライン医療相談が促進されると予測し、「中堅中小企業はクラウドを活用し、充分なサービスが届きにくい地域社会に必要となる医療を提供する重要な役割を果たすだろう」とHill氏は説明する。

2030年には国内で6000万件のオンライン医療相談が促進

 同様に、中堅中小企業がクラウドを活用することで、教育分野では2030年に国内の400万人の学生がeラーニングを受け、農業分野では2030年に国内の農業従事者の3軒に1軒が精密農業ソリューションを使用するようになると予測する。

 中堅中小企業自身が考える、2030年に最も大きな社会的インパクトを与えるテクノロジーについても触れられた。調査対象の世界の中堅中小企業の78%が、「生成系AI」や「自然言語処理を含むAIおよび機械学習」を挙げた。その他の28%には「量子コンピューティング」や「メタバース」「ブロックチェーン」「エッジコンピューティング」などが含まれる。Hill氏は、「クラウドインフラストラクチャは、さまざまなツールやビジネスモデル、テクノロジーを実現するが、AIと機械学習による変革の可能性は際立っている」とコメントする。

2030年に最も大きな社会的インパクトを与えるテクノロジーはAIと機械学習

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード