静粛性も高く、セダンらしい上質な走りが楽しめる
マツダのラインアップがSUVだらけなのは誰もが知るところ。セダンはMAZDA6のみ。唯さんも「MAZDA6を選ぶなら、CX-5とかCX-60を選びますね」と語ります。でも、どうして唯さんのお父さんはアテンザを選ばれたのでしょう。その謎を解くべく、ステアリングを握ることにしましょう。
事前に「ハンドリングが向上し、エンジンもパワーアップして、上まで回る」という話を聞いていたので「スポーツテイストが強いのかな」と思ったのですが、これがまったく逆。実にまったりとしたクルマだったりします。よってスポーツカー好きの唯さん的にどうかなと思い尋ねたところ「最近、静かなクルマとか乗り心地のよいクルマもイイなって思うようになりました。オトナになったんですよ自分」と、このフィーリングには満足気。
エンジンの出力アップ云々、という点に関しては、今までとの差というのは3000回転より上の領域の話。普通に走っている時に3000回転を超えることはそうそうなく、高速道路の追い越しなどで「おぉ! さすが200馬力」と思ったり。
貼り合わせガラスを用いていることもあってか、静粛性は見事なもの。もちろんディーゼルらしい音は聴こえてくるわけですが、他社に比べて断然静かです。それゆえ「ディーゼルならこんなモノ」という評価軸が「イマドキのハイブリッド車との比較」になってしまいがち。そうなると、アイドリングストップからの復帰に振動を感じたり、超低速走行時にガクガクとした動きに「もう少し滑らかだといいのに」と思ってしまったりするのです。
ディーゼルエンジンは燃費がよい、と言われています。今回街乗りと高速道路を使っての走行では14.4km/Lという結果になりました。この数字だけをみると、同じマツダでもCX-60が高速道路の120km区間で20km/hを超えましたし、他社のガソリン・ハイブリッド車と比べると悪いイメージです。でも一昔前のガソリン車の同格セダンだと10km/Lを切っているわけで。
そこで以前、唯さんとアウディA5を取材した時はいくらだったかと確認してみると12km/L。となると「ディーゼルとしては燃費がよい方」といえそうです。
「運転しやすいクルマだと思います。乗り心地もよくて不満はないですね」と笑顔の唯さん。不満がないことが不満で、原稿に困るというもの。ですが、この完成度の高さが20年の重みなのです。ワインディングをかっ飛ばすようなスポーツ走行を楽しみたいかというと、そういうクルマではありません。むしろそれは、このクルマの良さをスポイルしてしまうような気がします。
このクルマが活きるのは、高速道路。運転支援のテストも兼ねて乗ってみました。
この読みがドンピシャリで、長距離クルーズがとても快適! ディーゼルエンジンだから云々というのはまったく気になりませんし、やや柔らかめの足にもかかわらず、つなぎ目を乗り越えた後の振動収束は早いので、フラットライドに近いではありませんか。
運転支援は、ややキツいコーナーだと車線をはみ出しますが、基本的には問題ナシ! 「なるほど、唯パパは高速道路を快適に走りたいから、このクルマを選ばれたのかな」と感じた次第です。
MAZDA6を一言で語るなら「ゆったりと乗り味を楽しむクルマ」。このゆったりと、というのは、昨今のクルマでは得られないフィーリングで、現代では大変貴重な存在だったりします。この良さは、ちょっと乗っただけでは「特徴がなく、おもしろくないクルマだなぁ」と判断しがちですが、ひととおりクルマに乗って、ある程度わかっている人だからこそ気づく良さであり、唯パパはそんな方なのでしょう。
とにかく味わい深い1台。まるでブルゴーニュワインを、ゆっくり味わう至福のひと時と似ていて、いつまでも乗っていたくなる、そんなクルマ。そのクルマで家族で旅行に行っていたというから、家族の時間を大切にされて、お嬢様を育てられたのですねと、唯パパに感謝しても感謝しきれません。
走り屋だった唯さんのお父さんが家族のクルマを選ぶ際に、SUVやミニバンではなくセダンのMAZDA6を選ばれたことに納得。いつか唯さんのお父さんと、このクルマの良さをワインを飲みながら語り合いたい、そんな気持ちになりながら、唯さんを次の現場へと送り届けたのでした。
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