ASCII Power Review 第213回
星撮りだけではなく新表現のためのレンズなのだ!
世界初の超大口径レンズ = シグマ「14mm F1.4 DG DN Art」実写レビュー
2023年07月08日 10時00分更新
シグマが「世界初」の「14mm F1.4 DG DN Art」を発売した。最高の描写性能を追求した「Artライン」に属する、フルサイズミラーレスに対応した単焦点レンズで、レンズマウントはライカ、シグマ、パナソニックの「ライカL」と「ソニーE」がラインナップされている。
14mmという超広角ながら開放値はF1.4の大口径という世界初の製品で、メーカーがアピールしているように星景写真の撮影をするユーザーには魅力的なレンズだろう。
とはいえ公私ともに余り超広角を使わない(かつ星景写真も撮ったことない)自分としては、これほどのハイスペックが必要かと問われれば正直悩ましいところ。いったい超広角大口径レンズではどのような写真が楽しめるのか、試しに撮ってみることにした。
超広角なのに三脚座付属
レンズキャップも世界初!?
まずは外観だが、最大径は約150mmとかなりのデカさで、手にしてみると135mmF2のレンズくらいのサイズ感がある。
超広角なのに三脚座が用意され、なんとなく往年の学術用レンズのようなたたずまいだ。
三脚座は着脱可能でそれ自体の重さは89g(実測)ほど。手持ちで撮影するのなら軽量化のために取り外してもいいが、持ち歩くときや構えたときに三脚座をつかむと意外と安定したので個人的には付けたままのほうが使い勝手がよいと思う。
三脚座の下部はアルカスイス互換の形状になっているのも気が利いている。ただ装着は縦方向のみなので、欲を言えば横方向にも対応して欲しかった。
側面にはボタンやスイッチ類が並び、星景など長時間撮影時に不用意にピントが移動しないようMFのロック機能も搭載する。
絞りリングはクリック/シームレスの切り換えが可能で静止画と動画どちらのユーザーに向けた配慮だ。
レンズ後部にはカットしたシートフィルターを装着できるホルダーを備え、ホルダーの形状に合わせてカットするためのガイドプレートも付属する。
前玉が巨大なので付属のレンズキャップはかぶせ式になるが、ロック機能があるしっかりとした造りだ。さらにカットしたシートフィルターを収納できる開閉式ポケットも備えるといったこだわりよう。カメラ好きには大好物のギミックだ。ただ別売で購入すると8800円もするので紛失には注意しよう。
初体験14mmF1.4の写りとは!?
まずは遠景の定点撮影で、絞り値の変化による描写の違いをチェックしてみた。使用カメラは6100万画素の「fp L」で、レンズ光学補正は初期設定(歪曲と倍率色収差はユーザー設定不可、回折補正OFF、周辺光量とカラーシェーディングはAUTO)である。JPEGのFINEでホワイトバランスとトーンコントロールはオート、カラーモードはスタンダードで撮影している。
開放F1.4ではさすがに周辺光量低下がみえるが、F2で急激に改善しF2.8でほぼ均一になる。
解像感は中心部では開放F1.4から高く「fp L」のような高画素機でも負けることはない。F2.8程度まで絞ると更に向上しF8あたりまではピークを維持する。
F11あたりから回折の影響を感じられるが最小絞りのF16でも解像感低下はわずか。気になるならレンズ光学補正の回折補正をONにすればピーク時と遜色のないシャープ感が得られる。
周辺部は絞り開き気味では多少像の乱れはあるが、絞るごとに改善しF5.6では超広角とは思えないほど整っている。
描写の傾向としては同じArtラインの「20mm F1.4 DG DN」や「24mm F1.4 DG DN」と同様だが、14mmという超広角(しかもF1.4)でこれほどの画質が得られるのはお見事だ。
星景写真だけじゃない
新表現にトライだ
実際に撮ってみると遠近感が強調された114.2°の画角が印象的。とはいえ広い画角なら普通の14mmレンズでも同じこと。開放F1.4の大口径を活かした写真と撮ってみようと思うとこれが難しく、手前にピントを合わせ背景ボケ、といったワンパターンになりがち。撮り手にも創意工夫が求められそうだ。
光源を直接写し込んでもフレアは目立たず逆光耐性も高い。ただ絞りすぎるとゴーストが目立つ場合があるので、状況に合わせて適切な絞り値を選択するといいだろう。
最短撮影距離は約30cmで、さすがに近接撮影で絞りを開け気味にすると周辺の像は乱れるが、広い画角とボケ感を活かした写真を楽しめる。
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