レノボ・ジャパン 檜山社長、LES ロボトム社長が出席、サステナビリティの取り組みも紹介
レノボの法人事業戦略、「デジタル活用の二極化」解消もミッション
2023年06月01日 07時00分更新
レノボ・ジャパンとレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ(LES)は2023年5月30日、2023年度の法人向け事業戦略説明会を開催した。各社社長の檜山太郎氏、ジョン・ロボトム氏が出席し、「今後の成長領域」と位置づけるPC以外の領域(サーバーなど)を含む事業戦略を語った。企業の注目が高まるサステナビリティについて、レノボの取り組みや目標についても紹介している。
二極化が進む日本のデジタル活用、レノボができることを「真剣に考える」
昨年10月からレノボ・ジャパン 社長を務める檜山氏は、レノボのミッションは創業以来変わらず「Smarter technology for All(すべての人にテクノロジーの恩恵を届ける)」というものだが、コロナ禍の体験を通じて、その意味合いが少し変わってきたと切り出した。
「コロナ禍を通してわれわれが切実に考えるようになったのは、単に『すべての人にテクノロジーを届ける』だけでなく、それをユーザーの皆さんがどう活用しているのか、本当にユーザーのためになっているのかということ。レノボ製品を通じてどうやったら効率をもっと上げられるのか、どう新しい働き方を実現し、成功していくことができるのか。そうしたことを真剣に考えるようになった」(檜山氏)
日本の法人市場で顕在化している課題として、檜山氏は「デジタル活用の二極化」というキーワードを挙げた。たとえばテレワーク実施率は「首都圏/それ以外」で1.8倍もの格差がある。DXに取り組んでいる企業の割合は「従業員1000人以上/100人以下」で2.4倍もの差だ。またレガシーシステムが残る企業も69%に達する。
そう説明したうえで、檜山氏は2023年度の法人ビジネスにおける注力領域として「カスタマーサクセスへのコミット」「新たなコンピューティング活用領域」「デジタル活用格差の解消」の3点を挙げた。
「これまでは『製品を届ける、販売する』にとどまっていたものをさらに踏み込んで、お客様のサクセス(成功)を支援する。またPCやタブレット、スマートフォンだけでなく、AR/VRのようなウェアラブルやエッジコンピューティング、IoTもポートフォリオに含めていく。そして先ほどお話しした“二極化”をどう解消していくのかも、日本のIT市場にとってはとても重要だ。地方やSMB層にまでコンピューティングのパワーを届け、日本のDX、ITSかを進めていかなければならない」(檜山氏)
こうした目標を実現するために、檜山氏は「顧客と伴走するためのカバレッジ強化」が必要だと説明する。そのための具体的施策として、業界随一の幅広いポートフォリオを展開する「From Pocket to the Cloud」、パートナーとの伴走体制を強化する「Lenovo 360」、ファイナンスから廃棄までライフサイクル全体をカバーする「Service & Solution」、持続可能な社会実現や顧客の環境負荷低減を支援する「Sustainability」の4つを挙げた。
昨年スタートしたパートナープログラム「Lenovo 360」では、スマートフォンからサーバーまで一人の担当者がパートナーをサポートし、発注のカスタマイズなどもできるパートナー専用ポータル「Lenovo Partner Hub」を提供してきた。今年度はさらにその取り組みを深化させて、パートナーとの伴走体制を強化するという。
またサステナビリティについては、レノボの調査で日本のCIOの57%が興味を持っており、71%が取り組みの必要性を感じていたと紹介。レノボ自身(スコープ1/2)も2050年までのネットゼロ達成目標にコミットしており、同時にプロダクトやサービスを通じて顧客(スコープ3)の取り組みも支援していく方針を説明した。
そうした取り組みのひとつとして、「Lenovo CO2 オフセットサービス」が紹介された。これは、PCやサーバーといったレノボ製デバイスが5年間のライフサイクルの中で排出するCO2量を相殺する「オフセット権」を合わせて販売し、オフセット証明書を発行するサービスだ。檜山氏によると、PC 1台あたりのCO2排出量は1~1.5トンであり、そのオフセット権は10ドル程度で購入できるという。檜山氏はまずはPCからスタートし、将来的にはレノボが提供する製品すべてをカバーしていく方針だと述べた。
成長のカギを握るのは「PC以外の事業」
グローバルの業績を説明する中で、檜山氏は、PC以外の事業が売上の43%を占めるようになっていることを報告した。今年度は「特にここを法人向けの成長領域にあてていきたい」と語る。
サーバーやストレージなどのデータセンターインフラ製品を担当するレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ(LES)社長のジョン・ロボトム氏は、現在の国内法人市場においては、「IT領域の人手不足対応」「エッジコンピューティング活用」「AI活用」といったテーマにCIOの関心が高まっていると説明する。
まず人手不足対応について、レノボでは、デバイスのライフサイクル全体を包含する顧客併走/支援体制を提供している。サーバーからPCまで、また導入計画から運用、活用、廃棄までをカバーするサービスがある。「Lenovo TruScale」により、PCからサーバーまでをas-a-Serviceで利用できる点も特徴だとする。
エッジコンピューティング活用については、コンピューターシステムの歴史で繰り返されてきた「集中と分散」が再び「分散」方向に振れてきていると指摘したうえで、レノボでは「ThinkEdge」シリーズを展開していることを紹介した。ThinkEdgeは用途に応じた幅広いハードウェアスペックを持ち、「Lenovo Open Cloud Automation」を通じて導入や運用管理を支援できると説明する。
AI活用については、リアルタイム性が求められる推論処理がエッジ側のワークロードとして拡張しつつある点を指摘。具体的な事例として、英国Telitが提供するインダストリアルIoTソリューション「deviceWISE」にThinkEdgeが組み込まれていること、スペインのバルセロナ市がスマートシティ計画の中にThinkEdgeを組み込み、視覚障害者の街路歩行支援などのサービスを検証していることが紹介された。
ロボトム氏は、プロダクトのサステナビリティについても触れた。特にサーバーは大量の電力を使い、排熱量も多いデバイスだ。この点について「最近、顧客からの需要が高まってきているのが水冷技術」だと説明する。レノボではサーバー水冷技術「Neptune」の開発に注力してきた。
「(サーバー内のパイプに水を循環させてCPUなどを直接冷却する)ダイレクト水冷技術の冷却効率はとても高い。そのため、たとえ給水温度が45℃や50℃であっても冷却が可能であり、水を(データセンター内で循環させて)再利用しやすい。この部分はもっとプッシュしていき、お客様にその良さを理解いただいて、われわれの目指すサステナビリティゴールにつなげていきたい」(ロボトム氏)