今回のひとこと
「VAIOは、いつまでもプレミアムニッチに留まったままでいいのか。このままで生き残っていけるのか。そうしたことを考えたとき、VAIOはWindows PCの『定番』を作ることに決めた。これは新しいVAIOの幕開けである」
再始動したVAIOは日本最小のPCメーカーだった
VAIOが新たな事業フェーズに入った。
2023年3月29日に開催した「VAIO F」シリーズの新製品発表会で、VAIOの山野正樹社長は「新しいVAIOの幕開けを宣言する」とコメント。「ソニーからの独立後、初めて違った路線の商品を世に出すことにした」と切り出した。
ソニーから2014年7月に独立し、PC事業を再スタートしたVAIO。ソニー時代には年間870万台もの出荷規模を誇る世界有数のPCメーカーだったが、再スタート時は数十万台の出荷規模に留まる「日本一小さなPCメーカー」だった。
その規模に応じて、まずは、製品ラインアップを法人向けPCに絞り込み、事業をスタート。徐々に事業を拡大しながら、開発投資を増加し、製品ラインアップを拡大してきた。
この間も「VAIOらしい」と称されるモノづくりは健在で、その象徴となるフラッグシップのVAIO Zは、2015年2月に新生VAIO Zを投入し、その後、2016年2月には新モデルに刷新。2021年3月には、さらに進化を遂げている。
VAIOの山野社長は、「お客様のもとに出向いて感じるのは、VAIOが持つ商品力の強さである。安曇野本社にすべてのモノづくり機能が集まり、高い設計品質と製造品質で、こだわり抜いたモノづくりを続けてきたからこそ、他社では真似できないPCを提供してきた。お客様に商品をお見せして、一端を説明しただけで、価値を感じてもらっている。VAIOのエンジニアは、よくこんなことまで考えたなと言われるPCを投入してきた」と胸を張る。
だが、今回の新製品群はこれまでのモノづくりとは異なる側面を持ったものになる。
「VAIOの課題はPCに高い付加価値を求めるプロフェッショナル領域にユーザー層が固まっている点にある。プレミアムな商品ではあるが、対象は極めて限定しており、ニッチになっている。いくら商品が良くても、より多くの方にお届けすることができなければ、その価値を体感してもらうことはできない。ボリュームを売ることができなければ、商品のコストも下げられない。VAIOは、いつまでもプレミアムニッチに留まったままでいいのか。このままで生き残っていけるのか。そうしたことを考えたとき、今回の商品コンセプトに行きついた」と語る。そして、「これは、VAIOが成長していくために必要な取り組みであり、最初の一歩になる」とする。
この連載の記事
-
第606回
ビジネス
テプラは販売減、でもチャンスはピンチの中にこそある、キングジム新社長 -
第605回
ビジネス
10周年を迎えたVAIO、この数年に直面した「負のスパイラル」とは? -
第604回
ビジネス
秋葉原の専門店からBTO業界の雄に、サードウェーブこの先の伸びしろは? -
第603回
ビジネス
日本マイクロソフトが掲げた3大目標、そして隠されたもう一つの目標とは? -
第602回
ビジネス
ボッシュに全株式売却後の日立「白くまくん」 -
第601回
ビジネス
シャープらしい経営とは何か、そしてそれは成果につながるものなのか -
第600回
ビジネス
個人主義/利益偏重の時代だから問う「正直者の人生」、日立創業者・小平浪平氏のことば -
第599回
ビジネス
リコーと東芝テックによる合弁会社“エトリア”始動、複合機市場の将来は? -
第598回
ビジネス
GPT-4超え性能を実現した国内スタートアップELYZA、投資額の多寡ではなくチャレンジする姿勢こそ大事 -
第597回
ビジネス
危機感のなさを嘆くパナソニック楠見グループCEO、典型的な大企業病なのか? -
第596回
ビジネス
孫正義が“超AI”に言及、NVIDIAやOpen AIは逃した魚、しかし「準備運動は整った」 - この連載の一覧へ