Core i9-13900Kに対しては平均14%向上
ではここまで観測されたデータをもとに、Ryzen 9 7950X3Dが各CPUに対し平均フレームレートをどの程度伸ばしたか、フレームレートの上昇率をまとめてみたい。ただフレームレート上限設定を失敗しGPUドライバーも最適化前だったAtomic Heart、ゲーム側のフレームレート上限が低すぎるFORSPOKENに関しては除外し、12本での幾何平均とした。
F1 22のようにCore i9-13900Kよりも30%近く伸びたゲームもあったが、反面Need for Speed Unboundのように3〜4%しか伸びないゲームもあった。さらにCore i9-13900Kが明確に強かったReturnalなどの存在も含めると、Ryzen 9 7950X3DはCore i9-13900Kに対し平均14%上の性能であるといえる。
ゲーム中のCPUの挙動を観察する
最後の最後に、ゲーム中にRyzen 9 7950X3Dがどんな感じで動いているのか観察してみよう。ゲームは「Tiny Tina's Wonderlands」を使用し、プレイ状態で15分程度放置した。画質設定などは前述のベンチマーク時と共通としている。「HWiNFO Pro」を利用し、Ryzen 9 7950X3DのAuto設定とFrequency設定時でGPU温度やクロック等がどう推移するか監視したのが次のグラフだ。
BIOSをAutoにした場合はCCD1、Frequencyにした場合はCCD0のクロックが4.2GHzあたりを上限にしてキープされ(ただし時々5GHz位まで跳ね上がる)、ゲームの処理が実行されているCCDのクロックはより高いクロックで安定する。
ポイントはAuto設定時のCCD0のクロックよりもFrequency設定時のCCD1の方が高くなっている(これは前編でもご覧頂いた)という点だ。CCD0は3D V-Cacheが載っているぶんクロックを下げる運用になっていることが分かる。
ちなみにこの時のCCD別のCPU使用率はこんんな感じとなる。Auto設定ではCCD1が、Frequency設定ではCCD0の負荷がほぼゼロになる。Provisioning File Driverやゲームモードがきっちり働いていることが示されている。
ゲーム中のCCD温度(Tdie)を見ると、Frequency設定で動かした際のTdieはAuto設定時よりっも最大10℃は上昇することがわかる。特に休眠しているCCD(グラフではオレンジとグレーのライン)の温度差が大きい点に注目。
この程度の差なら特に驚くような数値ではないが、ゲームでわざわざFrequency設定にするメリットはフレームレート、消費電力さらに温度の面からも存在しないと断言できる。
確かにRyzen 9 7950X3Dは強かったが、まだ検証が足りない
以上でRyzen 9 7950X3Dの速報レビューは終了だ。前回のベンチではパッとしなかったRyzen 9 7950X3Dが、ゲームではCore i9-13900Kを「ほぼ完封」した点は高く評価すべきではないだろうか。
3D V-Cacheのメリットを活かすためには現状Windowsしかない(Linuxでもゲームモード的な機能とリンクできれば話は別だが)という点ではマイナスだが、現状PCゲームはWindows一強であることを考えれば、うまく既存の機能を使って仕上げたCPUといえるだろう。
ただ今回の検証ではRyzen 9 7950X3Dが最強と断言するには不十分である。今回は時間の関係上画質低設定での検証(CPUパワーの差が出やすい)となったが、高設定の場合は今回と同じようなアドバンテージが得られるのか? たった14本のゲームで断言して良いのだろうか? その辺りは今回受領しなかった正式版BIOSやチップセットドライバー環境で、再検証してみたいものだ。

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