あのクルマに乗りたい! 話題のクルマ試乗レポ第304回

日産の電動4WD「e-4ORCE」を女神湖氷上で試す! 前後のモーター駆動は何が良い?

文●鈴木ケンイチ 編集●ASCII

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女神湖の氷上に集まった日産車たち

 1月下旬、日産が開催する「NISSAN Intelligent Winter Drive」に参加してきました。これは氷結した湖面に試乗コースを作り、そこで日産の電動4WD技術「e-4ORCE(イーフォース)」を試すというメディア向けのイベントです。会場となったのは長野県の女神湖。毎年、冬になると氷上走行イベントが数多く開催される小さな湖です。

 寒い中、わざわざ長野県の山奥に行くのには理由があります。目的は、氷でできたコース。ツルツルの氷上を走ることで、クルマの性能が見えてくるのです。そもそも、クルマの走行性能はタイヤのグリップ力に大きく影響されています。そのためタイヤのグリップ力の性能内で走行していると、クルマ本来の特性がタイヤの性能で覆い隠されることがあります。そこで、タイヤのグリップ力が非常に低下する氷上のコースを走ると、そのクルマの持つトラクション性能や4WD制御といった、クルマ本来の特性が見えてくるのです。

 では、そこまでやって見たいものとは何か。それが電動4WD技術です。電動4WDとは、モーター駆動を使った4WD技術です。

 従来、クルマの4WDシステムは、エンジンのパワーを前後のタイヤに伝えるのに、ギヤとプロペラシャフトを使っていました。一方、電動4WDはプロペラシャフトを使わずに、モーターで直接駆動します。最初に普及したのは、FF(前輪駆動)のエンジン車に後輪駆動モーターを追加した4WDでした。

 その後、FFのハイブリッド車を4WD化するために、後輪用モーターを使うことが定番化します。FFのハイブリッド車のうち、シリーズ式ハイブリッドの場合、エンジンは発電に専念するため、前輪の駆動はモーターが担います。つまり、FFのシリーズ式ハイブリッドに後輪用モーターで4WDにすると、前後輪ともモーター駆動となります。これが電動4WDの仕組みです。

 そして、その電動4WDを積極的に採用しているのが日産なのです。

電気自動車からスポーツカーまでが
氷の上を走って電動4WDを知る

 日産のハイブリッド技術「e-POWER」は、シリーズ式となります。コンパクトカーの「ノート」、コンパクトSUVの「キックス」、そしてミッドサイズSUVの「エクストレイル」は、すべてがハイブリッドであり、その方式はすべてがシリーズ式です。そして「ノート」「キックス」「エクストレイル」の4WDは、すべてが後輪をモーター駆動する4WD。つまりは「ノート」「キックス」「エクストレイル」という、現在の日産の売れ筋モデルの4WDは、すべてが電動4WDとなっているのです。また、EVである「ARIYA(アリア)」も同じように、前後輪に個別のモーターを使う電動4WDです。

 こうした日産の電動4WDの実力を試すために、氷上の試乗会が開催されたというわけです。

 また、日産の電動4WD技術は2つあります。第1段階となるのがハイブリッドの「e-POWER」に後輪駆動モーターを加えた「e-POWER 4WD」です。プロペラシャフトを使って制御していた先代「エクストレイル」と比べると、制御規模は約3倍。より緻密に制御が可能となりました。モーターを使うことで、前後の駆動力を自在に、しかもよりクイックにコントロールできるため、あらゆる路面での安定した走行を実現します。これは「ノート」と「キックス」に採用されています。

 その技術をさらに進化させ、前後の駆動力だけでなく、4輪の個別のブレーキ制御もまとめて制御するようにしたのが「e-4ORECE」です。制御規模は、「e-POWER 4WD」のさらに約1.5倍。スムーズで力強い加速と減速、意のままのコーナーリング、安定したフラットな車体姿勢を実現する技術となります。この技術を搭載するのが新型「エクストレイル」と「ARIYA」の4WDモデルなのです。

 こうした最新技術を体験すべく、凍った女神湖に用意されたのは、パイロンを並べたスラローム、真ん中に1本のパイロンを置いた定常円、そしてウネウネとしたコーナーの続く外周路でした。

 ここをFFの「サクラ」と「ノート NISMO」、e-POWER 4WDの「ノート」「キックス」、そしてe-4ORCEの「エクストレイル」と「ARIYA」、さらにはFRの「フェアレディZ」とメカニカル4WDの「GT-R」を走らせます。ちなみに、すべてのクルマに横滑り防止装置が備わっています。試乗は、オンオフを交えながら行ないました。

 まず、FR(後輪駆動)の「フェアレディZ」から。パワフルで、しかも後輪駆動の「フェアレディZ」は、今回の試乗車の中で、最も氷上に向いていないクルマです。横滑り防止装置を効かせていても、スピンせずにコースをなぞるだけでひと苦労。もはや、ドライビング・レッスンという名の修行です。それに対して「GT-R」は、スポーツカーでも4WDなので、ぐっと簡単です。ただし、パワーが有り余っていますから、調子に乗って速度を高めるとコースアウトしてしまいます。自由自在に操るのは、やはりそれなりの高いスキルが求められます。

フェアレディZ

GT-R

 そしてFFの「サクラ」と「ノート NISMO」。これらのクルマは、スポーツカーに比べればぐっと運転が簡単になります。スタッドレスタイヤのグリップをうかがいながらハンドルを切れば、すっと向きを変えてくれます。ただし、曲がっているときに、さらにアクセルを踏み込むなどの変な操作をすれば、すぐに狙ったラインよりも外にズルズルと大回り。いわゆるアンダーステアになります。とはいえ、基本通りの素直な動きで、これはこれで扱いやすいと言えるでしょう。

サクラ

ノート NISMO

 続いて、「e-POWER 4WD」の「ノート」で走ってみると、さらに扱いやすさがアップ。少々、雑にハンドルを切ったり、曲がっている最中に変なアクセル操作をしても、クルマは希望する方向に向かってゆくのです。なんて、イージーなんでしょうか。「キックス」も同じような動きをしますが、重量の軽い「ノート」の方が扱いやすさは上。万人に使いやすい、安心感の高い4WD制御となっていました。これは好印象です。

 そして、最後に「e-4ORCE」。これが、さらに好印象。扱いやすいだけでなく、楽しく走らせることができるのです。

 特に「エクストレイル」は、この日の中で一番良かったですね。狙ったとおりの走行ラインをキープするだけでなく、アクセルで積極的に曲がってゆくこともできます。「エクストレイル」の後輪モーターは最高出力が100kW(136PS)・195Nmもあって、50kW(68PS)・100Nmの「ノート」や「キックス」よりもパワフル。コーナーも意のままに曲がることができます。まるでスポーツカーのよう。「ARIYA」の4WDも基本は同じ動きをしますが、330㎏ほど「エクストレイル」より重いためか、“意のまま度”はひとつ落ちる印象です。

エクストレイル

ARIYA

 ただし、そんな「ARIYA」でも、スタートダッシュは「エクストレイル」と遜色ありません。ちなみに「ARIYA」のドライブモードを「SPORT」にすると、アクセル操作にあわせて効果音を発するようになります。スピードが乗ってくると、独特の効果音が車内に響き渡るのです。その音は、文字では説明しづらいのですが、まるでSFの宇宙船のような不思議な音。未来の乗り物という演出なのでしょう。もしも、「ARIYA」の「e-4ORCE」に乗る機会があれば、ぜひとも「SPORT」モードでの加速を試してください。これはこれで話のネタになること間違いなし。

 リアルなカーライフで、氷上を走ることはめったにないはず。それでも積雪時のアイスバーンでは、氷上に近い状況に陥ることもあるでしょう。そんなとき電動4WDがあれば、ずいぶんと安心感が高いのは間違いありません。普通の走行では見えませんが、そうした性能を秘めているというのが日産の4WDの魅力のひとつなのです。そんな実感を得た試乗会となりました。

筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 

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