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業務を変えるkintoneユーザー事例 第168回

「kintone AWARD 2022」レポート後編 グランプリに輝いた企業は!?

いよいよラスト!多重入力をなくした奥羽興産、残業時間をなくした會澤高圧コンクリート

2023年01月24日 08時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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各自の隙間時間に自由に仕事を取っていける「お仕事ビュッフェ」で業務改善

 ラストは北海道地区代表の會澤高圧コンクリート 畑野奈美氏のプレゼン。會澤高圧コンクリートは北海道の苫小牧市に本社を構える総合コンクリートメーカーで、今年で創業88年目を迎えます。近年では、既存のコンクリート事業の他に、バクテリアの力でコンクリートに入ったヒビ割れを埋める技術やコンクリートの3Dプリンターの開発など、多岐に渡って研究開発を行なっている。

 中でも、畑野氏が携わっているのがプレキャスト住宅基礎プロジェクトだ。住宅の下の部分を支えているコンクリート部分を基礎と呼び、木枠を組んで、柔らかいコンクリートを流し込んで固めて作成するのが一般的だ。しかし、天候や職人の腕によって品質や工期にばらつきがでるのがネックだった。プレキャスト住宅基礎とは、この基礎を工場で作成し、現場に運んで組み立てるのが特徴。高品質な上、工期が短くなるというメリットがある。

「2012年にスタートしたプレキャスト住宅基礎プロジェクトですが、当初は管理するシステムもなければ人もいません。一連の業務を私ひとりで残業しながらこなす日々が続いていました。そんな時に、上司がkintoneっていう面白そうなのがあるよ、と言いました。私はエクセルも得意ではないのですが、どうにかこの状況を変えなければ、という一心で、とりあえずkintoneの無料お試しを申し込みました」(畑野氏)

會澤高圧コンクリート 畑野奈美氏

 当時使っていたExcelファイルをkintoneに読ませてみると、即アプリが作成できてしまい、歓喜感動したそう。味を占めた畑野氏は業務で使っているExcelファイルをどんどんkintone化していった。

「以前はシンプルなExcelで必要な情報を担当者レベルで共有していたのですが、なぜか壊れていきます。どうしたら、こんなにぐちゃぐちゃになるんだ、ということが多々あったのですが、kintoneアプリの運用を開始すると、そのようなこともなくなり、みんなが安心して使える、業務の中心アプリに成長しました」(畑野氏)

Excelファイルをkintone読み込ませるだけで一瞬でアプリが完成

 工程管理をkintone化するに当たってはカレンダー機能が必須。以前は標準機能を使っていたが、より見やすく使いやすい「カレンダーPlus」(ラジカルブリッジ)を導入。どの地域の物件が混んでいるのかを色分けして、一目でわかるようにしたという。

 帳票の出力もkintone化した。業務では大量の帳票を扱っており、特定の帳票を出力するためだけにあったExcelファイルも山ほどあったそう。しかし、今ではCADで作成した図面情報をkintoneで吸い上げ、そこの情報をもとに「プリントクリエイター」(トヨクモ)を使って帳票出力している。

 以前は限られたメンバーしか帳票を出力できなかったが、kintone化することで、いつでも誰でも欲しい帳票を出せるようになった。このように、業務をどんどんkintone化して、今では約30個のアプリに集約できた。しかし、同時に顧客も増え、業務量が増大するという嬉しい悲鳴が上がった。

連携サービスで帳票出力をkintone化した

「業務集約されて大成功したと思ったのですが、ありがたいことに物件数が年々増え、やっぱり1人では厳しい状況になってきました」(畑野氏)

 社内でリクルーティング活動をするものの、「私、時間ありますなんて自分から言う人いないよ」とか「もちろんこっちの仕事も手伝ってくれるんだよね」と言われてしまった。それでも、少しでもいいから業務を手伝ってもらう方法はないだろうか考え、「隙間時間私にください大作戦」を考え付いた。

物件数が増加し、一人では対応できなくなった

「たとえば、営業事務の方だと、営業さんが出かける前と戻ってきた後はすごく忙しいけれども、出かけている間の日中の時間は割と落ち着いているのです。経理の方だと、月末月初は忙しいけれど、月中は落ち着いてる。その落ち着いた時間に、できる分だけでもいいから、業務をお願いすることはできないか、と呼びかけました」(畑野氏)

 隙間時間を提供してくれるメンバーが出てきたものの、メンバーが増えてくると課題が浮かび上がってきた。畑野氏が指示を出していたのだが、お互いが遠距離で働いているためみんなの状況が見えず、指示をする時間も指示を待つ時間ももったいないという状況になってしまったのだ。

 そこで考えたのが「お仕事ビュッフェ」だ。すべての仕事をすべて細分化してkintoneに登録してしまい、メンバー各自はその時にできる仕事、得意な仕事を自由に持っていってもらう方法に変えたのだ。この仕組みであれば、指示を待つ時間が不要になる。業務を細分化して共有することで、ブラックボックスも発生しにくくなる。

「メンバーからは、朝これだけあった仕事が夕方にはきれいになくなってるとっても気持ちいい、とか、自分がこれだけ頑張ったということが目に見えるので達成感がある、という感想をいただいています」(畑野氏)

好きな仕事を自由にピックアップできるようにした「お仕事ビュッフェ」

 このような取り組みを続けたことで、なんと8年間、離職率ゼロ。そして、育休後の復帰率は100%だという。物件数は10倍に増え、メンバーの残業時間はほぼゼロになった。

「私はkintoneに出会い、拠点や部署の壁を超えて、たくさんの仲間に出会いました。みんなの得意や好き、やってみたいをほんの少しずつでも集めることができれば、会社を支える大きな力になります。今1人で頑張っている方、これからチームを作りたいと思っている方、働きかたを変えたいと思ってる方が一歩踏み出すヒントになれればうれしいです」と畑野氏は締めた。

kintoneの活用を推進し、大きな導入効果を得られた

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