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業務を変えるkintoneユーザー事例 第167回

kintone hiveの地区代表が登壇するkintone AWARD 2022も中盤

嫌いだったkintoneでガッツリ時短したアイホン 抱腹絶倒のミヨシテック劇場再び

2023年01月18日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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 2022年11月10日、幕張メッセで開催された「Cybozu Days 2022」で、恒例「kintone AWARD 2022」の発表が行なわれた。全国各地で開催されたユーザー事例を共有するイベント「kintone hive」のファイナリストが集結し、再度プレゼン。グランプリを決定する。

 kintone hiveは2015年から開催され、今年は東京・大阪・名古屋・福岡・仙台・札幌でリアルとオンラインのハイブリッド開催となった。今年も6社の登壇となり、レベルの高いプレゼンが行なわれた。今回は、3番手アイホンと4番手ミヨシテックのレポートを紹介する。

「kintone AWARD 2022」のグランプリの行方はいかに?

最初は反発だらけだったkintoneを社内500ユーザーに浸透させた

 3番目にオンラインで登壇したアイホンの鈴浦直樹氏は「大嫌いなkintoneが大好きなkintoneへ」というテーマでプレゼンしてくれた。

 アイホンは創業74年目のインターホン専門メーカーだ。国内では業界シェア50%以上で、世界70ヵ国以上に展開。住宅やオフィス向けにはインターフォン、病院や高齢者施設にはナースコールを提供している。

アイホン 鈴浦直樹氏

 kintoneは鈴浦氏が移動してくるより前に導入されていたそう。その時の課題は情報共有だった。営業担当者は日々営業活動をしているが、上司は部下の活動を把握しきれていなかった。担当者の活動履歴は手帳や頭の中にあるだけで、当然、部署間でも連携できていなかったのだ。

 そこで、アイホンではkintoneを導入し、アプリの開発を外注。2017年4月、販売先別にマンション用、病院用、高齢者施設用の管理アプリをリリースした。このタイミングで鈴浦氏は営業管理部に異動し、kintoneアプリを全社員500人に浸透させることを命じられることになった。

 当初、社内ではkintoneなら何でもできると言われており、鈴浦氏も大いに期待していた。しかし、大多数のユーザーからは、情報が多すぎる、画面が見づらい、といった不満が寄せられたという。

「やっぱりExcelがいい、とほぼ500対1で言われ続けて、kintoneのことを嫌いになりました。私はこのアプリの開発には携わっていないのに、それでも使ってください、と言うしかありません。自分のミッションから逃げるわけにはいかないので、なんとかkintoneを使ってもらえるようなツールを探しました」(鈴浦氏)

鈴浦氏が作ったわけでもないのに多くのクレームが寄せられた

 まずは脱Excelのために、2019年3月、kintoneをExcelのように表示できる「krewSheet」(グレープシティ)を導入した。これが大好評で、鈴浦氏もkintoneを少し好きになれたとのこと。Excelの代わりになるのならとkintoneを利用する人が少しずつ現れ始めた。

 コロナ禍で在宅勤務が増えてくると「連絡書」というアイホン独自のExcelファイルの申請書が遅滞しはじめた。そのタイミングで、上司から「kintoneでハンコレスはできるか?」と聞かれ、鈴浦氏は「できます」と即答した。

 しかし、「連絡書」の承認フローは、申請者がメールに申請書を添付して承認者に送付し、それをアシスタント社員が受け付けて、印刷し、決裁者が捺印したものをファイリングし、メールでフィードバックするという独特な流れだったので、kintoneのプロセス管理機能は利用できなかった。

 そこで導入したのがkintoneを細かくカスタマイズできる「gusuku Customine」(アールスリーインスティテュート)。面倒な業務を1つでも削減すること、マニュアル不要なわかりやすいUIにすること、クリックを最小減すること、という3つのコンセプトを掲げて、「連絡所」アプリを作成した。自称ITど素人の鈴浦氏でも、簡単にkintoneを開発できたという。

「gusuku Customine」を使ってアプリ開発にチャレンジ

「2ヵ月かけてアプリを作りました。申請画面を立ち上げると、部署名と氏名が自動でセットされます。プロセス管理でできなかった自由な承認ルートは、申請者や承認者が自分で次に回したい人をセットします」(鈴浦氏)

 承認者から、どこを編集すればいいのか、という問い合わせが来ることは想定済みだったので、該当箇所をあらかじめ黄色く目立たせるという工夫も凝らした。最終的に「連絡書」アプリだけで1000個以上のカスタマイズを行なったという。

 「連絡書」の見た目もExcel帳票とほぼ同じにするため、「プリントクリエイター」(トヨクモ)も導入。物理的なハンコが押された紙の帳票と同じようなアウトプットを提供した。

「効果はすぐに出て、面倒な作業がすべてなくなりました。年間1000件以上の申請があるので、年間320時間以上の時間を削減できました」(鈴浦氏)

年間320時間以上の時短を実現した

 さらに、承認者が記載するコメントも充実したという。これまでのExcel申請書はセルのサイズのせいでコメントが非常に淡泊だった。しかし、枠のサイズを気にしなくてもいいkintoneになると、コメントの文字量が大幅に増えたのだ。社内では、承認された理由を後から振り返ることができると高評価を得られたそう。さらに、「連絡書」アプリは、当初営業本部だけで利用する予定だったが、リリースから2ヵ月後には一気に全社に広まった。

kintoneを絶対に押し付けないでください

 kintoneへの抵抗がなくなったところで、再度SFAの構築にチャレンジ。その際、前回の教訓を活かして、販売別のアプリを統合すること、基幹システムとの連携を強化すること、項目を簡素化すること、という3つのコンセプトを掲げた。

 さらに、失敗を繰り返さないため、困りごとの再ヒアリングを行なったり、すべてのレコードの必要性を目視で再確認した。2020年10月から半年以上を費やして完成した「建物」アプリは、分かれていた販売先を統一。「krewSheet」で画面の上部に案件一覧、下部に活動履歴一覧を表示する、見やすいデザインになっていた。

 営業担当者は情報を共有したい人をセットするだけで、自動でメール通知を発信し、メールを受け取った担当者は、すぐに次のアクションを起こせるようになった。これまでは、会議や個別に確認をした時しかできてなかった情報共有がリアルタイムに行なえるようになったのだ。

 鈴浦氏の努力の甲斐あり、「この前のアプリがすごい好評だよ」「営業担当者も使いやすいって言ってるよ!」といった声が寄せられるようになり、開発者冥利に尽きるとのこと。5年かけて、やっとkintoneのことを大好きになることができたという。

「kintoneの導入に苦しんでいる人へメッセージです。kintoneを絶対に押し付けないでください。人は自分が使っているツールを否定されたくありません。まずは困ってることを見つけて、「kintoneで解決できますよ」と言うだけでOKです。そして、内製アプリの評価をしてください。ユーザーの期待に応えることができていれば、新たな依頼が来ます。依頼が続くと開発者のスキルや提案力がアップします。それが、ユーザーの満足度アップにつながり、皆さんがハッピーになるのです。今では、アイホンのみんなもkintoneが大好きになりました」と鈴浦氏は締めた。

kintoneを導入する人へ、4つのアドバイス

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