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ビジネス部門とIT部門の共創で顧客接点領域のデジタル化を促す「WebPerformer-NX」

キヤノンITS、“攻めのDX”向けにローコード開発新製品を発表

2022年11月28日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は2022年11月25日、クラウド型ローコード開発プラットフォームの新製品「WebPerformer-NX」を発表した。多数のUI部品(コンポーネント)を備えたWebベースのGUI開発環境でデスクトップアプリ/モバイルアプリを開発するとともに、JavaScriptによるコーディングで独自ロジックを組み込むことも可能。これにより迅速な開発やアップデートと、企業戦略に沿った機能の実現による競合差別化を図ることができるとしている。提供開始は2023年1月下旬。

クラウド型ローコード開発プラットフォーム新製品「WebPerformer-NX」の概要

デスクトップアプリ、モバイルアプリのエディタ画面

 同日行われた発表会では、この新製品の特徴や狙い、さらに既存のローコード製品「WebPerformer」とのターゲットの違いやビジネス戦略などが説明された。また、キヤノンITSとして掲げる事業ビジョン、「VISION 2025」実現に向けた2022年の取り組みや新たな事業目標についても報告された。

キヤノンITソリューションズ 代表取締役社長の金沢明氏、執行役員 デジタルビジネス統括本部長の松本一弥氏

新たな領域をターゲットとするaPaaS新製品「WebPerformer-NX」

 WebPerformer-NXは、開発環境と実行環境をパブリッククラウド上でホストするローコード開発プラットフォーム(aPaaS:アプリケーションPaaS)。開発環境はマルチテナント、実行環境はシングルテナントで提供する。

 開発環境ではWebベースのエディタが提供される。デスクトップアプリ、モバイルアプリとも多数のUIコンポーネントをあらかじめ用意しており、これらを画面上にドラッグ&ドロップすることで開発を進めていく。外部システム/サービスとはAPI経由で連携するほか、JavaScriptによる独自ロジックの開発も可能。またワークフローエディタやデータベース管理機能も備えており、複雑なアプリも迅速かつ容易に開発できるよう工夫されている。

カスタマーサービス向けのモバイル業務アプリを開発するエディタ画面(デモ動画より)

開発したアプリはすぐにテスト実行できる。またワークフローエディタも備える

 キヤノンITSでは、すでにローコード開発プラットフォームとしてWebPerformerを提供しており、累計1300社超の導入実績を持つなど国内市場で高いシェアを誇っている。一方で、今回発表されたWebPerformer-NXは、WebPerformerとはターゲット領域や機能がまったく異なる新製品となる。そのため今後もWebPerformer、WebPerformer-NXは併売していく。

 具体的には、WebPerformerが基幹システムのモダナイズを主眼としたバックオフィス向けのアプリ開発ツールであるのに対して、WebPerformer-NXは「顧客接点領域のデジタル化」を目指したアプリ開発をターゲットとしている。

 同社 執行役員 デジタルビジネス統括本部長の松本一弥氏は、WebPerformerが「守りのIT投資」であったのに対して、WebPerformer-NXは「攻めのIT投資」に当たると説明する。「NX」という名前も「New experience」、つまり「新しい顧客体験」を実現するものとして名付けたという。

従来製品のWebPerformerと、新製品のWebPerformer-NXのターゲット領域の違い

 松本氏はWebPerformer-NXの掲げるコンセプトとして「現場の直感が、DXを動かしていく」という言葉を紹介し、具体的には「クリエイティブであること、アジリティに優れていること、そしてガバナンスが効くこと」の3点を重視していると説明した。WebPerformer-NXを介して、企業のビジネス部門とIT部門が具体的なアプリのイメージを共有しながら「共創」していくことを可能にするという狙いがある。

ビジネス部門が簡単にUIを作成してイメージを伝え、IT部門がコーディングなどでその開発を支援するといった“共創”のかたちを狙う

 新製品を市場に浸透させていくための施策として、松本氏は「開発者を増やす」「カスタマーサクセスサービス」「パートナーとの協業」「キヤノンMJグループの販売チャネル活用」の4点を挙げた。無料プラン(Freeエディション)を提供して開発者がすぐに試用できる環境を用意するほか、技術面に限らずアジャイル開発体制の構築やガバナンスの実現などをサポートするカスタマーサクセスの取り組みを行いたいと述べた。

 WebPerformer-NXでは、利用目的と想定ユーザー数に応じた5つのエディションを展開する。価格は未発表(サービス提供開始時に発表)だが、上述のとおり無料プランも提供する。

市場への浸透施策と、提供する5つのエディション

「VISION 2025」で示した3つのビジネスモデルは堅調に成長

 同社 代表取締役社長の金沢明氏は、2021年に策定した長期ビジョン「VISION 2025」の目標達成に向けた2022年の取り組みと、その成果について紹介した。

 VISION 2025では、キヤノンITSが2025年にありたい姿を示し、そこに向けた変革にチャレンジしていくことを宣言したものだ。「共想共創カンパニー」というテーマのもと、従来の「システムインテグレーションモデル」だけでなく「ビジネス共創モデル」「サービス提供モデル」も事業の柱に据えて成長を図る。2025年の売上高を2021年比で1.5倍に、また社内のビジネス共創人材を5倍に拡大するという数値目標も示していた。

2021年策定の「VISION 2025」では3つの事業モデルを柱に据えて「共想共創カンパニー」を目指す方針を掲げた

 このVISION 2025実現に向けて、2022年には数多くの取り組みを実施した。システムインテグレーションモデルのビジネスでは、製造業や流通業向けの大規模基幹システム構築案件、車載システム開発、金融機関や教育機関のDX支援、独自数理技術やAIを活用したデータマネジメント基盤提供などを手がけた。

 サービス提供モデルのビジネスでは、今回発表したWebPerformer-NXのほかにも、クラウドサービス「SOLTAGE」を軸とした付加価値サービス、SOCサービス、EDI SaaSの「EDI-Master Cloud」などをリリースした。新規サービス創出のためのビジネスインキュベーションセンターも新設している。

 ビジネス共創モデルのビジネスには、顧客企業のビジョンや経営戦略を「共想」し、それをIT戦略に継承させてITグランドデザインを「共創」するという姿勢で取り組み、顧客企業のDX戦略策定を多く手がけた。

 これら3つの事業モデル実現を推進するために、2022年は新たに「サービス創造人材」「SI共創人材」の人材育成にも本格的な取り組みを開始した。

(左)「ビジネス共創モデル」で2022年に手がけたDX戦略策定案件、(右)3つの事業モデルに対応した人材育成も本格化させた

 こうした取り組みの結果として、2022年はシステムインテグレーションモデルの売上が対前年比110%、サービス提供モデルの売上が同 117%と、それぞれ堅調な成長を見せたという(いずれも2022年年間見通し、ビジネス共創モデルの売上は両者に含まれる)。

 金沢氏は「昨年の発表以後に大きな環境変化があるわけでもなく、(VISION 2025の)計画は順調に進んでいる」と述べ、「2025年に売上1.5倍」という目標数値を据え置いたうえで、その内訳として「システムインテグレーションモデル売上を1.3倍」「サービス提供モデルの売上を2.0倍」という新たな目標も示した。

2025年の売上目標は据え置いたうえで、その内訳を新たに示した

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