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「VISION2025」に基づくキヤノンITS自身のビジネスモデル変革の方向性、取り組みを説明

キヤノンITS、2025年に向けて“共想共創カンパニー”目指す

2021年10月21日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は2021年10月13日、2025年に向けた長期ビジョン「VISION2025」と、その実現に向けた取り組みについての記者説明会を開催した。同社 代表取締役社長の金澤明氏は、キヤノンITSが2025年にありたい姿として「先進ICTと元気な社員で未来を拓く“共想共創カンパニー”」という言葉を掲げ、従来のSIビジネスモデルやサービス提供モデルだけでなく、技術と人材の強みを生かしながら新たな「ビジネス共創モデル」にも挑戦していく方針を示した。

顧客とのエンゲージメントを強め、「顧客の想い」を起点として3つの事業モデルを展開すると説明

キヤノンITソリューションズ 代表取締役社長の金澤明氏

2025年のありたい姿、“共想共創カンパニー”とは何か

 2008年のリーマンショック以後、継続的な構造改革を通じて「筋肉質な事業k構造」への転換を図ってきたキヤノンITSだが、金澤氏は「ここ数年は、ビジネス規模の成長面では物足りなさを否定できない状況にある」と語る。

 その背景には市場環境の大きな変化がある。近年では、顧客企業がDXを通じたビジネスモデル変革に生き残りをかけるようになっており、ITベンダーに対しても「DXに向けたスキルシフト」「ビジネスモデルの転換」が期待されている。「従来の人月ビジネスに依存してきた会社にとっては、ビジネスモデルを転換し、お客さまとの新しい関係を構築する必要性が出てきている」(金澤氏)。

 顧客企業のITシステム投資も、従来のSoR=非競争領域に対する投資から、SoE=競争領域、そしてDX=事業変革/事業創出領域へと投資領域が変化している。その結果として、ITベンダーに求められるものも「システムを仕様どおり正確に作り上げること」から「顧客のビジネス意識して柔軟性やスピード感を持つシステムの提案/実現」へと変化している。

顧客のITシステム投資領域にも変化が起きており、ITベンダーに期待するものも大きく変わりつつある

 2018年以降「顧客のデジタルビジネスを支援する」という事業方針を掲げてきたキヤノンITSだが、こうした大きな市場変化に対応するために、あらためて「私たち自身が変わらなければならないことを社員と共有」する必要があった。そこで策定したのが、キヤノンITSとして2025年のありたい姿、2025年の事業モデルを“羅針盤”として示すVISION2025だったと、金澤氏は説明する。

 2025年に向けた方向性をめぐる議論においては、キヤノンITSが持つ個性、コアバリュー=「3つのDNA」と、ミッションステートメント=「大切にしている7つのこと」がまとめられた。

 「私たちの“個性の源”とも言えるDNAというものが3種類、これは私自身も以前から意識してきたものだ。まずは『お客様に寄り添う心』、製造業のシステムユーザとして持ち合わせていたもの。そして『先進技術への挑戦魂』、精密機器メーカーと一緒に新製品を開発する過程で育まれたもの。3つめは『最後までやりきる胆力』、独立系Sierとして生きるために必要だったもの」(金澤氏)

キヤノンITSが考える「3つのDNA」と「7つの大切にしていること」

 そうした議論から生まれたのがVISION2025であり、「先進ICTと元気な社員で未来を拓く“共想共創カンパニー”」というメッセージだという。

 この“共想共創カンパニー”では、顧客とのエンゲージメント、社員とのエンゲージメントで形作られる「エンゲージメント経営」を基盤として、「ビジネス共創モデル」「システムインテグレーションモデル」「サービス提供モデル」という3つの事業モデルを展開していく。

 「共創」は近年多くのITベンダーが掲げるキーワードだが、もう1つの「共想」についてはあまり類例を見ない。この「共に想うという共想は、社会の未来や顧客のビジョンに対する共感が起点。強い共感は共想共創というエンジンの燃料と言っても良い」と、金澤氏はその重要さを説明する。3つの事業モデルについても、まずは社会課題や顧客のビジョン、経営戦略、そして顧客のゴールを「共に想う」ことから始まると位置づけている。

「共想/共創」と3つの事業モデル

 金澤氏は、こうしたビジョンを実現していくためには「私たち自身が変革を進めることが必要」だと述べ、新しい事業モデルへの転換に挑戦するための経営リソースのシフト、サービス提供モデルにおける事業への先行投資、顧客とのエンゲージメントを強化する社員の行動、社員と会社との絆の強化といった点における変革を進めると説明した。

「ビジネス共創モデル」の人材数を現在の5倍に

 具体的な事業戦略として金澤氏は「強みとする領域を拡大していく」と述べ、「企業のデジタライゼーション」「デジタルデータ利活用」「開発革新」の3つを新たな注力領域として挙げた。これら3領域において人材、研究開発、エコシステム構築に投資していくという。

 注力するソリューションの例として、企業のデジタライゼーションではスマートSCMやエンジニアリングDX、開発革新ではUX/UIを重視した金融リテール向けアプリ開発、ローコード開発環境、車載開発(CASE領域)を、デジタルデータの利活用ではデータセンターサービスや数理/AI技術を活用した製造/流通小売向けソリューションなどを挙げるとともに、各領域における現在の活動も紹介した。

2025年に向けて新たに注力していく事業領域と具体的ソリューション

ロジスティクス業務のデジタル化、ローコードアプリ開発環境のソリューション例

 また既存事業で得た原資を拡大したい事業モデルに投資する「成長への投資サイクル」が必要であるとしたうえで、先進IT技術、革新的サービス/商品の開発、社員やパートナーに向けた投資を強化していく方針を示した。特に人材(人財)投資においては具体的な目標数値も示しており、ビジネス共創モデルにおいて、2025年には人数比で現在の5倍となる体制を作り上げる予定だとしている。「『共想共創塾』という仕組みを作りビジネス共創人財の育成活動を始めている」(金澤氏)。

事業モデル変革のために積極的な人材投資も行うとした

 さらに2025年の経営目標として、2021年比で全社売上を1.5倍に、サービス提供モデル売上を2倍に拡大し、「将来への投資を潤沢に行う盤石な収益基盤体質の確立を目指す」(金澤氏)とまとめた。

2025年の経営目標。将来への投資を潤沢にできる収益基盤の確立を目指す

ユーザー企業とITベンダーのもたれあい構造、“低位安定”を打破する

 キヤノンITS デジタルイノベーション事業部門担当 上席執行役員の村松昇氏は、同社が考える「共想共創型デジタル事業」について説明した。

 村松氏はまず国内企業におけるDXの取り組みについて、米国と比較して「守りのDX(既存ビジネス起点の改善)」を目的とする企業が多い、積極的なDX投資を行っている企業の株価パフォーマンスが高い、経済産業省が定めるDX推進指標の上位企業(先行企業)ではIT視点よりも経営視点が重視されている、といったデータを示す。「最も大きな問題は、DX推進指標を自己診断した結果の平均点が(5点満点で)1.6点とかなり低いこと。DXが停滞している」(村松氏)。

 国内企業でDXが停滞している背景については、経営層/事業部門/IT部門それぞれの「多忙と迷走」、「ビジョンが不明瞭」なままで施策実行に着手し経営リソースが分散していること、ベンダー依存するIT部門と高度なデジタル提案ができないITベンダーという「ユーザー企業とIT企業の関係」の3つを理由に挙げる。特に3つめについてはキヤノンITS自身にも関わる問題であり、村松氏は次のように反省を語る。

 「これは日本固有の問題だと思うが、両者(ユーザー企業/ITベンダー)のもたれあい構造によって“低位安定”に陥り、DXが停滞しているのではないか。そういう意味ではわれわれもIT企業として、そういう役割を担ってきてしまった責任を感じている。DX時代のユーザー企業とIT企業には、新しい関係が必要になっている」(村松氏)

キヤノンITS デジタルイノベーション事業部門担当 上席執行役員の村松昇氏

 そうした顧客との「新しい関係」を志向し、DXの停滞を解消していくのが共想共創アプローチだという。従来の業務委託者/受託者という関係ではなく「共想し知的バトルできる良きパートナー」「言いたいことを言う」関係となり、DX停滞の諸課題を一緒に解決していくアプローチだと説明する。

「DXの停滞」を解消するために共想共創アプローチで取り組む

 キヤノンITSとして取り組むデジタル戦略については、まず「SoRがしっかりできるSoE集団」としての強みを生かしていく。DXでは基幹システムとの連携や、既存基幹システムの整理整頓が必要となるため「その両方ができる点が強みとなる」と述べた。具体的な事業展開については「D軸(Digital)」と「X軸(Transformation)」のマトリクスを示し、デジタル技術の活用度、ビジネス変革度の高い方へとビジネスをシフトさせていくと語る。

現在AにあるデジタルビジネスをB、C、そしてDへと引き上げていく

 図中のA、Bは、既存の強みを生かして顕在化した課題に対するソリューションを提供するビジネスとなる。Aはこれまで実績を積んできたSoRを中心とする成熟技術手法で、BはAI、映像処理などの先進的な技術手法でソリューションを提供していく。

 そしてC、Dが今後注力していく「共想共創」領域となり、顧客のビジネス変革を共に実現するビジネスに当たる。「顧客の想い」の部分から伴走し、一緒にビジネスをデザインしていくものだと村松氏は説明した。最終的に2025年に目指す姿はこのDだとする。

注力領域であるC、Dの実績も一部紹介された

 質疑応答の中で金澤氏は、キヤノンITSに対しては「ものづくりをしっかりやるSIer」というイメージは強い一方で、顧客企業がDXを考える際のパートナーとしてすぐに名前が挙がる存在ではないという現状は「正直あると思う」と述べた。

 「ただし、DXは基幹システムであるSoRの部分がしっかりわかっていないとできないものと考えている。もちろんわれわれ自身もスキルを変えていくことが必要だが、これまでの(SoRでの)経験を生かしてDXに貢献し、実績を積んでいきたい。その実績をオープンにすることで、キヤノンITSが『DXのパートナー』として捉えられるようになりたいと考えている」(金澤氏)

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