まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第79回
〈後編〉アニメの門DUO 数土直志さん(新潟国際アニメーション映画祭プログラムディレクター)に聞く
ガンダムの富野監督が海外だと功労賞ばかり獲る理由
2022年11月22日 15時00分更新
世界での知名度が10年後のビジネスにつながっていく
まつもと その事情はいくつか聞いています。まずお金がかかる。エントリーに際してのフォーマットを揃えるためにも結構な手間が必要。そして何よりも人ですかね。海外の映画祭でアニメをノミネートしていくことのノウハウ、そして人脈が必要。それを持っている人ってじつは数えるほどしかいないのでは。
数土 そうですね。でも目指せないわけじゃないし、そんなに海外アワードを獲ることが偉いのか、という言い分もあることはわかっています。
けれど、細田守監督とスタジオ地図は明らかに海外のアワードを最初から戦略的に獲りに行っているんですよ。それで実際にアカデミー賞にノミネートされたり、カンヌで上映されたりすることによって世界での知名度を上げている。たぶんそれは今後5年10年のビジネスにつながっていくことを考えるとすごいなと思います。
まつもと この配信の時代に、監督とスタジオのブランド・認知度を上げて価値を高めておくというのはビジネス的にとても大きなことではありますよね。
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数土 というか、日本のアニメは海外で半分以上、ひょっとすると8~9割のファンは海外にいるのではという時代に入っているので、海外で認知度を上げる、評価を得るということは非常に重要ですが、日本の映画人にとって、賞はこちらから獲りに行くものではなく、いただくものなので。
まつもと ああ、たしかに。
数土 謙虚なところが僕も好きな日本の文化なんですけれども、そこは積極的に獲りに行かなければいけないし、行けば行っただけの見返りは僕はあると思います。
まつもと たとえ受賞しなかったとしても、そのプロセスにおいて当然、向こうのキュレーターの目には止まるわけです。
数土 良いものを作っているんだから、もっともっと広く広げようよ、と単純にそういうことですよね。黙っていても広がるものではないと僕は思っているので、自信を持って「こんなすごいものを作ったんだ!」と言うのがいいんじゃないかな。
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