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連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第56回

IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 2022年11月5日~11月11日

プライベートクラウドの市場成長と新トレンド、労働生産性が2年ぶり回復、銀行アプリ利用率、ほか

2022年11月14日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。

 今回(2022年11月5日~11月11日)は、プライベートクラウド市場の成長率とトレンド変化、回復に転じる日本の労働生産性、リモートワーカーのバックアップ保護、銀行アプリ(バンキングアプリ)の利用実態、RPAの今後についてのデータを紹介します。

■[クラウド]プライベートクラウド市場は2021年に1.2兆円へ、前年比32%増(IDC Japan、11月9日)
・国内プライベートクラウド市場、2021年は前年比32%増の1兆2163億円
・2021年~26年の年間平均成長率(CAGR)は20%
・「サイロ型導入」だったプライベートクラウドが「マルチクラウドの一部」へ

 2021年の国内プライベートクラウド市場調査。同市場は前年比32.3%増で成長、背景にはコロナにより遅延となっていたシステム刷新や新規プロジェクトの再開があるという。市場は2021年~26年まで20.4%の年間平均成長率(CAGR)で成長し、2026年には2021年比2.5倍の3兆711億円になると予想する。トレンドとして、これまでサイロ型で導入されていたのが、マルチクラウドを構成する1つの配備モデルとして検討されることが多いという。市場の成長要因はクラウドマイグレーションとDXだとしている。

国内プライベートクラウド市場は2026年までCAGR20%で成長する予想(出典:IDC Japan)

■[生産性]日本の労働生産性動向、2021年度の時間当たり名目労働生産性は4950円、2年ぶりに上昇(日本生産性本部、11月8日)
・2021年度の日本の時間あたりの名目労働生産性は4950円、1995年以来最高に
・実質ベースの上昇率は前年度比1.2%プラス、2年ぶりのプラスへ
・一人当たり名目労働生産性は808万円、3年連続低下から回復

 2021年度の「日本の労働生産性の動向」調査より。就業1時間当たりの付加価値額である「時間当たり名目労働生産性」は4950円。コロナ前の水準を上回り、1995年度以降で最も高いという。物価上昇を織り込んだ実質ベースの労働生産性上昇率は前年度比1.2%増。一人当たりで見た名目労働生産性は808万円で2.2%増、3年連続の低下から回復に転じた。実質ベースの一人当たり労働生産性上昇率は前年度比2.2%増で、前年度から5.9%ポイント改善した。3.7%マイナスだった2020年度からの反動という側面も大きいが、1996年度以降でみると最大の改善幅とのこと。

就業者1人あたり名目労働生産性の推移 1995~2021年度(出典:日本生産性本部

就業者1人当たり実質労働生産性上昇率(折れ線)と、その要因別寄与率(緑:実質経済成長率、黄:就業者増減率率、赤:平均労働時間増減率)(出典:日本生産性本部

■[バックアップ]リモートワーカー向けにバックアップ・リカバリがない企業は23%(Arcserve、11月9日)
・「リモートワーカー全員にバックアップ・リカバリを導入している」は35%
・リモートワーカー向けに「導入していない」は23%
・ハイブリッドワークとマルチクラウドにより82%が「複雑性と脆弱性が高まった」

 日本を含む11カ国の中小企業のIT意思決定者1121人を対象に、リモートワーカーのバックアップ・リカバリについて実態を調べた。「リモートワーカー全員にバックアップシステムを導入している」は35%、「一部に導入」は39%、「全く導入していない」は23%。82%が、ハイブリッドワークとマルチクラウドによりデータフローの複雑性と脆弱性が高まったと回答するなど、管理・保護の複雑性が増していることもわかった。

リモートワーカー向けのバックアップ・リカバリの導入比率(出典:Arcserve)

オンサイトとリモートで、バックアップ・リカバリの差をつけているかも尋ねた(出典:Arcserve)

■[生活][DX]銀行アプリのダウンロード経験は6割以上、不便さトップは「本人確認」(Backbase Japan、11月9日)
・62%が銀行アプリのダウンロード経験あり
・不便さを感じる点は「本人確認手続き」「ログイン認証」「他のアプリと連携がない」
・銀行アプリに金融ワンストップサービスを求める

 国内18~60歳以上の男女1000人のスマートフォン保有者に、銀行アプリの利用状況を尋ねた。銀行アプリのダウンロード経験は若い世代ほど多く、18~29歳は73%に及んだ。きっかけは「店舗に行かずにすむ」が7割で最多。今後の利用意向については、5割が「とても思う」「ある程度思う」と回答。「満足している」「やや満足している」が5割を占めたものの、不便さについては「本人確認手続き」(34%)など多数挙がった。期待を聞いたところ、「銀行の枠を超えた新サービスの提供」(16.6%)「金融業界の他社サービスとの連携」(14.9%)など、金融のワンストップサービスを求めていることが伺える結果となった。

スマートフォン保有者の62%が銀行アプリのダウンロード経験がある(出典:Backbase Japan)

銀行アプリで不便さを感じる点(出典:Backbase Japan)

■[RPA]5社中3社が2025年までに高度RPAを導入、RPA全社展開の課題はスキル・人材不足(UiPath、11月8日)
・今後3年間でRPAの進化版「IPA(インテリジェントプロセスオートメーション)」を導入する企業は61%
・92%の日本企業が、RPAの重要性を認識するが全社規模で展開していない
・自動化をスケールアップする課題は「スキルと人材不足」(54%)

 自動化についてのアジア太平洋日本地域の調査「IDC APJ Automation Survey 2022」より。自動化への支出を増加させた企業は76%で、「経営効率の改善」(60%)「事業継続性と回復力確保」(58%)などが理由に挙がった。包括的なプロセス自動化となるIPAへのシフトも見られ、日本企業の61%が今後3年で部分的にIPAを使用すると回答した。

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