RadeonでもAV1ハードウェアエンコーダーエンコード
RX 7000シリーズでは、Radeonの動画再生およびエンコードを支援するRadeon Media Engineも大幅強化された。Radeon Media Engine自体がデュアル構成となったことで、H.264/H.265であればエンコードとデコードの同時実行が可能になった。
さらにAV1のエンコードは8K 60fpsでのキャプチャーにも対応するほか、XILINXのAI技術を取り入れることでエンコード結果の画質向上を計っている。AMDによれば、このAIはAV1のために用意されたものでH.264等では利用できないとのことだ。
AMDは「FSR 3」でDLSS FGを追撃にかかる
4Kや8K解像度、かつレイトレーシングのように重い処理を含んだゲーミング環境を考えた場合、AMDの「FSR(AMD FidelityFX Super Resolution)」のようなアップスケーラーは必要不可欠だ。
既にAMDは単なる空間アップスケーラーであるFSR 1(AMDの発表にならい、FSRのバージョン番号における小数点以下の表記は本稿では削除している)とモーションベクターを利用し「DLSS SR(Super Resolution)」に近い処理系になった「FSR 2」へ進化している。そしてFSRは現行Radeonはもとより、旧世代GPUや他社製GPUでも恩恵を受けられるエコシステムである点が強みだ。
そして今回発表された「FSR 3」は、AMDが“Fluid Motion Tech”と呼ぶ技術が要となる技術であり、FSR 2の2倍のパフォーマンスを発揮するという。何をどうした結果2倍なのか、という核心部分についてはライブストリーム後のプレス向けQAセッションでも明らかにされなかったが、Fluid Motionという語感、そしてフレームレートが倍という点から、NVIDIAの「DLSS FG(Frame Generation)」に相当する技術であると推察されている(NDAに配慮した最大限の表現である)。
処理内容についてもAMDは明らかにしていないが、NVIDIAのDLSS FGはGPU内に「オプティカルフローアクセラレーター」を必要としているのに対し、FSR 3ではこうした専用回路への縛りはないとされている。これらの推察が全て正しいならAMDはハード固有の機能に依存しない実装で、固有技術を利用する実装に追い付いたと言える。
さらにFSR 3のシステム要件や、RX 7000シリーズ以外でも動くとか、RX 7000シリーズだと特別なメリットがあるかというトピックについても明らかにされていない。QAセッションではRDNA 3にのみ存在するAIアクセラレーターとFSR 3の関連についての質問も出たが、AMDはFSR 3には機械学習は使われていないと断言した。
つまりRX 7000シリーズより前のGPUやGeForce環境でも動作する可能性が高い。来年投入されるであろうRadeon Softwareの大型アップデートの目玉機能ではないかと筆者は予想している。楽しみに待ちたい。
便利機能をワンクリックで呼び出す「AMD HYPR-RX」
FSR 3以外にももうひとつ、AMDはRadeon Softwareに実装される予定の機能「AMD HYPR-RX」も紹介した(HYPRの発音は“ハイパー”)。これはシステムレイテンシーを短縮する「AMD Anti-Lag」、レンダリング密度を画面内で変えることでフレームレートを稼ぐ「Radeon Boost」、FSR 1相当のアップスケーラーである「Radeon Super Resolution(RSR)」を1クリックで全部有効化できる機能となる。
Radeonのドライバーには様々な付加機能があるが、細分化されすぎていて分かりづらいし、利用するか否かのインターフェースもまちまちだ。なのでゲーム体験を向上させる便利機能を3つまとめてしまえ! というのがAMD HYPR-RXなのである。
AMD HYPR-RXは2023年の前半に登場する。その頃にはRX 7000シリーズの下位モデルも登場し、AMD HYPR-RXの活躍するシーンも増えることだろう。
ちなみにQAセッションにおいて、AMD HYPR-RXはRageモード(Radeonの簡易オーバークロック機能の1つ)は有効化できないのかという質問が出たが、AMDの担当者は「Rageモードって何?」的な反応をしていた。“中の人”であっても、Radeon Softwareの機能の全てを網羅するのは難しいようだ。