BostanをPCIeカードにしたTURBOCARD3
KarlayはこのBostanを単にチップで提供するだけでなく、カードの形でも提供していた。TURBOCARDと呼ばれるのがそれで、TURBOCARD2はAndeyベースだがTURBOCARD3はBostanベースとなる。Hot Chips 2015では実物の展示が間に合わなかったが、同年9月に開催されたTERATEC 2015ではサンプルボードも展示されている。
もともとBostanのNoCは二重の2Dトーラス構造になっているが、チップ間接続にも利用可能になっており、TURBOCARD 2/3ではチップ同士をPCIeとNoCの両方でつなぐ構造になっている。
気になる性能だが、画像認識、モンテカルロ法を利用した金融シミュレーション、暗号化の処理性能、GZIPでのファイル圧縮、それとAI学習のベンチマークも示されている。いずれの結果もそう悪くないというか、結構有望そうなことがわかるだろう。
なお冒頭でも書いたが、少なくとも2015年までは日本にも拠点(Kalray Japan)が存在していた。2013年7月にはこのKalray Japanがアーキテクチャーの説明や信号処理/画像処理のデモ、OpenCLを利用してのプログラミングなどを5時間かけて紹介するセミナーも開催されている。
残念ながら日本では目立ったデザインを獲得できたとは言えなかったようだ。ただヨーロッパではそれなりにデザインウィンを獲得できたようで、この後本格的にテコ入れが始まる。ロードマップではBostanの後継となるCoolidgeが2016年中に開発される予定だったが、これは2018年に延びた。
その代わり、2017年に同じTSMCの28HPを利用し、基本構成は変わらないながらもメモリーコントローラーやPCIe/イーサネットを改良し、NVMe SSDのサポートを追加したBostan 2がリリースされている。
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