業界人の《ことば》から 第491回
貴重な対面の時間をつまらない会議でつぶすのは悲劇
Evernote創業者によるビデオコミュニケーションツール「mmhmm」
2022年06月27日 09時00分更新
いまやオフィスの必要性も感じなくなっている
mmhmmは、現在、全世界で100人の社員が在籍しているが、オフィスがないのが特徴であり、日本法人の社員は、日本各地に点在するだけでなく、米国に住みながら勤務をしているケースもある。
リービンCEOも、シリコンバレーから引っ越し、いまはアーカンソー州の北西部のロジャースに住んでいるという。
「2020年末にアーカンソー州に引っ越したのは、もはやスタートアップ企業はシリコンバレーにいる必要がないと考えたからである」とし、「EvernoteのCEOだったときには、多額の資金を投じて、素晴らしいオフィスを作った。ただ、社員は毎日2~3時間かけて通勤し、渋滞に巻き込まれたクルマのなかで多くの時間を過ごしていた。オフィスでは、周りの人に邪魔されないように、ヘッドフォンをして、仕事をしていた。オフィスを作ることは、利便性が悪く、無意味であることに、いまになって気がついた。mmhmmには、正確にいえば、集まれるスペースはあるが、いままでのようなオフィスはない。完全な分散型組織とし、世界のあらゆるところから、ベストな人材を雇用している。そして、社員が住みたいと思うところに住んでいる」という。
対面の意味は大きい、だからこそ無意味な時間は悲劇だ
mmhmmのリービンCEOは、「コミュニケーションヒエラルキー」を示してみせる。
3階層で示されたコミュニケーションヒエラルキーでは、最上位が対面、次の階層がライブによるビデオ会議、そして最下層が録画されたビデオである。
リービンCEOは、「対面は最高の状態であり、いまでは貴重な機会である。だが、対面の状態を作り出すには、同じ場所に、同時にいることが前提となる。この貴重な時間に、つまらない会議をするのは悲劇でしかない。誰かと一緒にいるならば、会議室でスライドを見ている場合じゃない。一緒においしいものを食べたり、信頼を築いたり、人脈を広げた、お互いを理解したりといったように、実際に会わないとできないことに時間を使うべきである」と語る。
そして、「もし、日本に行ったら、会議は最小限しかやらない。その分、多くの人に会って、毎晩会食に行く。日本に行くのは、人とのつながりのためである」とも語る。
対面を補完する役割を果たしているのが、ライブビデオである。同期型のビデオ会議によるコミュニケーションはビジネスシーンでも一般化してきている。
リービンCEOは、「Zoomなどを使ったライブ会議は、参加者が同時刻に集合しなくてはならないという点では貴重な体験である。だが、それは、全員が発言し、インタラクティブな会議になってこそ意味がある。一部の人が発言するだけで、他の人は聞いているだけという状態では、同じ時間に集まっている意味がない」とする。
そして、mmhmmのような分散型組織は場合、デジタル環境であっても、同じ時間に集まる際には、時差も考えながら、スケジュールを調整する必要もある。それも同期型のビデオ会議の課題のひとつだと指摘する。
そこで、リービンCEOが訴求するのが、最下位の階層にある録画されたビデオや、非同期のビデオによるコミュニケーションの積極的な活用である。
「報告会や情報共有会といったように、報告や共有を目的にするのであれば、ビデオ録画が最適である。スライドを表示し、楽しい映像効果を加えてビデオを作る方が、ライブでやるよりも、ずっと簡単に行え、失敗したら撮りなおすこともできる。また、見る側も、好きな時間に、好きな再生スピードで視聴できる」とする。
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